こんにちは。
今日は、草間さかえ先生の『やぎさん郵便』を感想を交えてご紹介します。
さかえ先生の作品はどれも素敵で、ゆっくり過去作を読んできましたが、1巻完結ものがほとんどの中、この作品はさかえ先生にはめずらしく全4巻の作品となっております。
作品データ
やぎさん郵便
草間さかえ Sakae Kusama
刊行年月:2012.09.01
出版社:リブレ(CITRON COMICS)
どんな作品?
草間さかえ先生の代表作の一つ。タイトル作である『やぎさん郵便』の1話から8話までは、コミックス『マッチ売り』に収録されているため、シリーズとしては2巻目になっています。
2010年9月に雑誌で発表された『やぎさん郵便』9話から17話、そして番外編などが1冊に纏まっております。
花城と廣瀬のカップリングは、安定した関係性ではあるのだけど、徐々に二人の見えなかった背景が描かれていきます。これがまた面白い!
そして、澤と有原の関係性も少しずつかわっていきます。状況的に抵抗できず、なすがままだった有原が、少しずつ澤の事情を知っていきます。
そして有原を巡り、澤の嫉妬心も湧いてきて、4人の人間模様がより色鮮やかに揺れ動いていきます。
やぎさん郵便シリーズの順番
やぎさん郵便シリーズを読む場合は、以下の順番でお読みください。
- マッチ売り
- やぎさん郵便
- やぎさん郵便2
- やぎさん郵便3
『マッチ売り』に、やぎさん郵便の1話〜8話が収録されているため、実質、『マッチ売り』が1巻となっております。
カップリング1
攻め:廣瀬清高(ひろせきよたか:…巻末の番外編、必読。w)
受け:花城青司(はなしろせいじ:彼の性癖は、非常に複雑ですね。)
カップリング2
攻め:澤陣一郎(さわじんいちろう:もう個人的に応援しちゃってる。)
受け:有原岑生(ありはらみねお:ほんと、この巻では悲惨だな… 汗)
1巻のあらすじ
有原は、廣瀬へ向けて書いた恋文の1ページ目を探していた。そして、その1ページの恋文は、澤が持っている。
澤は、自分が恋文の1ページ目を持っていること、そして廣瀬は澤の出版社の社長のお気に入りだ、と有原に伝える。そんな状況下、有原は、ゆっくりと澤の背景を知っていきます。
一方、花城は廣瀬との順調な関係を楽しみつつ、自分がトンネルで行ってきたことが廣瀬にバレてしまったら、関係は終わってしまうだろう、と感じ、なんとか廣瀬をつなぎとめようと考える。
そんな時、廣瀬の祖父の家に、絵を取りに向かうことになります。祖父と花城の不思議な関係、そして祖父から花城に渡された絵の箱にも、心がもやもやする廣瀬。
そして、澤のいたずらで出版社に向かわされた有原は、ついに廣瀬と再会することにーー?!
草間さかえ先生『やぎさん郵便』1巻のみどころ
この作品は、全体を通してたくさんのみどころがありますが、ここでは1巻(実質2巻)のみどころを考えてみました。
作品の魅力1:キャラたちの色鮮やかな背景
とにかく、どのキャラも魅力的です。
さかえ先生の作品は、どの作品も、読むたびにキャラの個性、背景がユニーク。普通にそこら辺にいそうな人物でも、しっかりと細かなキャラ設定がされていて、そこからくる性格の描写が本当に面白いんです。
1巻の花城。『マッチ売り』で彼が廣瀬との距離を縮めていく過程が、なんとも自然で開放的。ある意味ロマンチックにも感じました。
そしてこの巻においても、性に奔放な花城が、廣瀬と体を重ねていくのですが、そのプロセスや心の揺れが見ていて面白かったです。
さらっと関係を楽しんでいそうな花城なのだけど、トンネルで自分がしていたことを廣瀬に知られると、自分のもとから去っていくだろうと思いながら、なんとか彼をつなぎとめたいのですが、自分の心が今までと違う方向に変化していることに気づきます。
廣瀬は、花城との時間を楽しんでいるだけ…のように見えるのだけど、祖父から花城に渡された絵の箱の中には何が入っているか教えてくれなかったり、二人の間にある不思議なケミストリーを感じた廣瀬は、自分の祖父と花城が何らかの関係があったのでは?と、心をモヤモヤさせます。
そしてふと、自分は以前、花城に会ったことがあるのだと気づきます。
花城に自分を好きになってもらいたい。そして好きになってもらう理由がほしい。廣瀬はどうやら花城にすっかり恋したようです。w
有原は、連れ込み宿の女将さんから、澤の幼少時代のお話を聞きます。澤が世話好きな理由ーーそれは彼の家庭環境にも関わっています。
有原は、澤が好きなのは社長ということを知っている。自分はただ利用されながらも世話好きの澤の心を燻っているのだろう。複雑な心境。
そんな中、ひょんなことから有原は、澤が原因で事件に巻き込まれていきます。
澤は、有原と関係を持ち始めてから、少しずつ彼のことを考えるようになる。そして、社長との関係のせいで廣瀬に腹を立てていた澤が、有原との関係で廣瀬に嫉妬する羽目に。
そんな4人の背景、現在の消化不良の気持ち、そして人間関係が徐々により複雑に交差していく。1巻では少しわかりにくい描写がいくつかあるのだけど、それは次巻を読み進めていくと、様々は謎がとけていく。いわば、伏線回収されていく見事なまでのさかえ先生の技。
4人の他にも、連れ込み宿の女将さんや、大学教授など、全ての人物が、なんらかの形で皆つながっていくのがなんとも愉快で見事です。ただ、その繋がりがはっきりと見えてくるのは、全巻読んだあとなんですねどね。❤️
作品の魅力2:澤という人物
それぞれのキャラがとてもユニークな設定だということはお話しました。
その中でも、当初それほど気になるとと思っていなかった澤のお話を読めば読むほど、魅力的な設定のキャラに見えてきます。ふわふわした有原というキャラと関係を持つ澤の心が、徐々に動いているのが見られます。
複雑な澤の幼少時代ですが、これだけではありません。彼がなぜ、どのように社長と知り合い、関係を持ったのか。好意を持ったのか。
澤は世話好き。怪我をした有原を心配し、家に連れて帰るのだけど、その原因は澤の過去と関係があることを知らない。
当初はキャラ的に立ち位置がわかりにくかった有原も、実は人が見えないところもしっかりと見えている奴だった。それなのに、澤のことはよく見えていないのも面白い。
この澤と有原のチグハグなカップリングが意外と面白く、応援してしまうのです。そして2巻では、有原のチグハグな部分がより描かれております。
作品の魅力3:ミステリアスなストーリー展開
ミステリアスといっても、サスペンスなわけではありません。
さかえ先生の作品は、細かな事柄の詳細が説明なしに描かれることが多いんです。なぜそんなことが起こったのか、なぜそういう行動に出たのか、淡々と進むお話の中で、少し謎な部分が多いんです。
しかし、読み進めていくと、その理由や意味がゆっくり説明されていく。そういった意味で、ミステリアスなんです。
そして、大まかな伏線回収(この言葉はあまり好きではないのですが)はしてくれるのですが、やはりどこか余白のある描写。そこを読み手がいろいろと考察していく。その面白さがあります。
決してわかりにくい作品ではありませんが、やはりゆっくり何度か読んで意味を汲み取っていく味のある作品です。だからこそ読み応えがあるし、時代に流されない作品。
たとえ今あなたにしっくり来なかったとしても、数年後に読んだら波長があうかもしれない。そんな作品です。
作品の魅力4:主人公は恋文
4人のキャラクターが登場してはいますが、あくまでキーとなるのは恋文です。この恋文の存在が4人の人生にどうかかわっていくのか、そして4人がどうつながっていくのか、恋の矢印の方向がふらふらとしながら、最終的に誰につながっていくのかがみどころになっています。
作品の魅力5:表紙カバーと表紙
紙本にしろ、デジタルにしろ、表紙カバーの絵と、本体の表紙を必ずチェック。同じスタイルではあるのだけど、本編の内容が反映されていて、そしてさかえ先生のユーモアあふれる描写がアートです。
言うまでもなく、時代背景に合ったファッションの描写、当時の生活の様子や細かな小物など、当然ながらリサーチされた上で描かれているのも素晴らしいです。
特にビジネスマンである花城や澤はスーツ(洋服)を着ているのに対し、学生の有原や廣瀬は昭和初期の学生服や和服を着ているなど、私たちはドラマやたくさんの漫画で馴染みがある描写ではありますが、改めて作品の中でしっかりとその時代が描写されていることも頼もしいです。
草間さかえ先生『やぎさん郵便』を今すぐ読む方法
草間さかえ先生『やぎさん郵便』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)
どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアはクーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!は、レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入することもできます。お好きな先生の情報をチェック。
コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!
草間さかえ先生『やぎさん郵便』をもっと楽しむ方法
もっと楽しむ方法1:ドラマCD
残念ながら、どうやら『やぎさん郵便』はドラマCDになっていいないようです。
しかし『マッチ売り』はドラマCDで楽しめます。
草間さかえ先生の『マッチ売り』、うれしいことにドラマCDがリリースされています。
ポケドラからオーディオDLができます。エピソードごとの購入も可能なので便利。
CDメディアは、新品での購入は非常に難しいですが、中古では見つけることができるかと思います。ネットオフさんで、BLCDの中古もいろいろ見つけることができますので、探してみてください。
もっと楽しむ方法2:英語版『Lost Letter』
もう一つの楽しみ方は、英語版を読んでみることです。
語学勉強を大好きなBL作品でしてみるのはいかがでしょうか?
洋書の電子は「楽天ブックス」で取り扱っているのでオススメです。
私は最近まで英語版の漫画は読んだことがありませんでしたが、座裏屋先生の作品で初めて多言語の本を手に取りました。これが意外と勉強になるんです。
すでに作品を読まれた方も、ストーリーはもう知っているので、単語の確認やフレーズの使い方など、勉強できます。
紙本で購入すれば、お部屋のインテリアやコレクションにもなって、なお可。
きっかけはなんであれ、この作品が多くの方に広がればいいなと思っています。
まとめ
今日は、『やぎさん郵便』1巻をご紹介しました。表面上は1巻となっておりますが、実際には2巻ですのでご注意ください。草間さかえ先生の作品は、登場人物が表情豊かで面白いのですが、今回もメインの4人はもちろん、すべての脇キャラが魅力的に描かれております。
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