こんにちは。
今回は、草間さかえ先生の少女コミックス『タケヤブヤケタ』をご紹介します。
フラワーコミックス(小学館)からのリリースで、タイトルからは内容がなかなか想像できませんが、大正時代の消防員たちのお話です。
草間先生らしい作品で、迫力ある火消したちの仕事の様子や仄かに描写される恋心、そして主人公のミステリアスな過去のお話も登場します。
作品データ
タケヤブヤケタ
草間さかえ Sakae Kusama
刊行年月:2013年4月15日
出版社:小学館(FCアルファ)
どんな作品?
草間さかえ先生の非BL作品。
草間先生のBL作品も面白いですが、草間先生が創り出す世界観やストーリーが好きな方は、こちらの作品も楽しめると思います。
大正時代の火消したちのお話が中心に描かれています。帯には「大正時代の火消し恋愛ロマン!」と謳われていますが w、それほど強い時代描写はなく、メインの物語は、主人公の火消しの日々についてのお話になっています。
仄かな恋心を含ませながら、「火」の特性、迫力ある描写、そしてキャラの謎がゆっくりと解明されていくミステリー的なストーリーもあり、草間先生らしい展開です。
セリフや描写はいつもよりわかりやすい。
火消し仲間たちの面々も特徴的で、群像劇に展開することも可能な作品だったと思います。
雑誌『flowers』2010年7月号〜2013年3月号まで不定期掲載された8話とボーナスショートが収録された1冊です。
私は草間先生が大好きで、この作品を見つけることができましたが、タイトルと表紙の絵からは決して「恋愛ロマン」には感じませんね w
高校生の女の子が登場するのだけど(平成時代の)、ボーイッシュなキャラ。雑誌『flowers』の読者層は分かりませんが、少女漫画とも青年漫画とも言えない、草間ワールドの作品となっています。
老若男女どなたでも楽しめます。
あらすじ
ある日、高校生の智宏は、曾祖父のお葬式で学校の同級生女子・伊勢克美を見かける。どうやら遠い親戚らしいのだ。
二人の共通は高祖父母。智宏と伊勢の高祖父は大正時代に火消しをしていたらしい。
その血筋もあり、智宏は火に詳しく、高校で起こっていた謎の放火事件も解決してしまう始末。
そして伊勢は、高祖父の日記を頼りに、大正時代の火消したちの日々を語り始めるーーー。
草間さかえ先生『タケヤブヤケタ』ネタバレ!?感想・レビュー
作品の魅力1:ミステリーとユーモア
草間先生の作品は短編も長編も拝読しましたが、個人的に一番好きなのは、1巻完結の作品です。この作品も1巻完結で、オチまでの描き方や、描き下ろしショートのユーモアまで、楽しめました。
大正時代のお話のみを描くのではなく、(平成に生きる)玄孫にあたる智宏や克美の出会いから物語がスタートする構成も面白いです。
火消しの血を引き継いだ智宏の描写は、それほど多くはないのだけど、やはり印象に残ります。
大正時代のお話がメインになっています。が、強い時代描写なく、服装や建物の描写くらいでしょうか。日々の生活からはそれほど時代背景は感じず、火消しとしての描写が色濃くでています。
また、草間先生の独特なペンタッチで描かれる迫力あるシーンもみどころですの一つです。
モブたちの描写も生き生きしているのも草間作品の特徴で、今回もそれが活かされています。
大正時代のお話では、メインキャラは松岡仁(ひとし:智宏のひいひいじいちゃん)、そして伊勢辰巳(克美のひいひいじいちゃん)。消防署の臨時署長だった辰巳のもとにやってきた新人の仁の日々の奮闘ぶりが描かれています。
仄かに描かれる恋心、日々の生活、辰巳や他のメンバーたちとの関係性……。
そして、なぜ仁が火消しになったのか、なぜ仁がこの部署にきたのか、ミステリアスに描かれていきます。
ところで、モブたちは相変わらず特徴的な顔立ちで描かれていますが、そのうちの一人が水木しげる先生を彷彿させるイラストでしたが、草間先生は水木先生が好きなんでしょうか!?w
作品の魅力2:火というもの
テーマは、火。
以前、草間先生の別作品で「火」に魅了されるキャラを描かれていたことがあったけれど、それを思い起こさせられた、興味深いテーマです。
腐敗も酸化も通り越して完全に燃えたものだけが灰という美しいものになる
引用:草間さかえ 『タケヤブヤケタ』, 2013
仁が火に魅せられた様子が窺えるセリフです。
実は、仁が火消しになった本来の理由には、深い過去のトラウマが隠れているのであって、火の虜になったからではありません。
でも、大正と平成時代のどちらも描写されていることで、仁の火消しとしての感性?が変化していった様子が垣間見られて興味深いです。
作品の魅力3:迫力あるシーン
BL作品では、ワンコキャラがよく登場する草間作品ですが、この作品では、火消しに奮闘する緊迫シーンがいくつか登場します。いつもとは少し違った迫力あるシーンが魅力的です。
迫力はあるのだけど、草間先生のユニークな画とペンタッチはそのままなので、可愛らしささえあります。
また、先生の作品によく登場する動物たちも健在です。
自然と共存する人間たち、そして動物たち。
決して人間が世界の中心として描かれているのではなく、すべてが共存しているような世界観。
見えるもの、見えないものーーー。
この作品で、草間先生は「火」を使って空気の流れ、気の流れのようなものを描かれたのではないかな、と。
見えないものを見えるように描く。まさに、水木しげる先生にも通ずるものがあるのではないか、と感じました。
草間さかえ先生『タケヤブヤケタ』を今すぐ読む方法
草間さかえ先生『タケヤブヤケタ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。
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まとめ
今回は、草間さかえ先生の『タケヤブヤケタ』をご紹介しました。大正時代の消防員たちのお話を、ユーモラスかつミステリアスに描いた良作。1巻完結で読みやすいので、未読の方はぜひ読んでみてください。この作品を読んで、「火」について少し調べてみようと思いました。
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