草間さかえ先生『夢見る星座』:ホクロから始まる恋とは

草間さかえ
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こんにちは。

今回は、草間さかえ先生の『夢見る星座』を拝読しましたので、ご紹介します。

短編集ですが、タイトル作は観点がとてもロマンチックで素敵な短編でした。個人的にはどの短編もうなりどころがあり、寝る前の癒し・・・のはずが、カップルのその後を妄想してしまい、なかなか眠れなくなった1冊であります。w

作品データ

夢見る星座

草間さかえ

The constellation shine in the sky by Sakae Kusama

刊行年月:2008.08.15

出版社:新書館(ディアプラスコミックス)

どんな作品?

草間さかえ先生の2007年にリリースされた初期作品。5つの短編が収録されています。短編なので、1つ1つのお話はすぐに終わってしまうのですが、この先生の作品はそれがいいし、味です。

セリフですべて説明されることの多い最近の作風よりも、コマや描写で微妙な心の描写を読み取っていくものが多く、軽くも読めるし本気読みもできる作風なので、読者としては挑戦的ともいえるでしょう。

草間先生が切り取る心の描写やコマの絵などはやはりオリジナリティがあり、先生の感性が光ります。またアナログで描かれたものですので、ペン使いも躍動的です。この頃から、背景に植物や動物などの自然もしっかりと描き込まれていて、フィクションをより現実的に、身近に感じられるものになっています。

BL雑誌『MAGAZINE BExBOY』2005年1月号から2007年1月号まで不定期に掲載された短編をまとめた1冊。それぞれの「恋の始まり」が集められたオムニバスです。

そういえば、以前ヨネダコウ先生も好きな草間本として、この作品を挙げていたのを思い出しました。☺️

草間さかえ先生『夢見る星座』ネタバレ!?感想・レビュー

ストーリー1:夢見る星座

入社試験に遅れそうになった久世(くぜ)がたまたま出会った会社の上司・柳沼。そんな柳沼に密かに思いを寄せる。何も知らない上司の柳沼は、ある日、ふと久世の首筋に黒子(ほくろ)を見つける。白い肌に、わかりにくいところに見え隠れするいくつかの黒子。その黒子をつなげると、星座になるのだろうか・・・と変な妄想をする柳沼。そんな二人の恋物語です。

30ページほどの短編なので、お話はあっという間に終わってしまう感じはあります。ファンタジーのような雰囲気です。でもそれはショートストーリーだから。これは時代背景もあります。最近のショートストーリーは日常の一部を切り取り、しっかりとした落ちのないお話もショートストーリーにできますが、当時(00年代やそれ以前)ははっきりとした起承転結で短編を描かれる方が多かった。そんな時代背景も見え隠れする作品です。

久世が柳沼を想っているのはわかるのだけど、柳沼の感情はわかりにくい。ホクロの星座の節はユニークな妄想設定なんだけど、たまたま久世にそういう妄想が働いたのか、実は柳沼の方がもともと男性好きだったのか・・・。読者の妄想もいろいろと膨らみますね。

とにかく、あっという間の30ページです。

ストーリー2:白昼白夜

しっかり者の高校生・西野。どうやら母親が亡くなって、子供達、父親も自分が面倒をみなければ、という責任感に追われている様子。結婚したはずの姉も、旦那さんと喧嘩して実家に戻ってきて、姉さんの赤ん坊の夜泣き、家事に追われ、うかうかトイレにも行けやしない。そんなストレスと睡眠不足でフラフラ状態。

そんな西野がたまたま立ち寄った学校の保健室で出会った先輩。なぜか先輩が横にいるとほっとする。愚痴を聞いてくれたり、餅を焼いてくれたりと世話をしてくれる。

でも、そんな安らぎも束の間、西野のストレスは限界に達してしまいますーーーー。

40ページ弱のお話ですが、この短編からも、草間先生らしい描写がいろいろと見られます。

舞台になっている高校も、どこか田舎っぽい場所。木造の校舎、旧館に保健室がるということで、一時期は人口も増えたエリアでしょうか。保健室にはストーブがあって、そこで餅を焼いて食べたりします。

2005年1月号に収録されたお話ですが、2023年の今となっては、きっとこの学校も生徒が半分以下になってそうですね。もしかしたら廃校になってるかも・・・!?なんて考えながら読んでました。w

また、西野の家庭環境や性格も、冒頭4、5ページですべて説明しています。物語そのものも面白いのだけど、漫画の構成も勉強になる作品です。

責任感の高い西野の描写と、少し複雑な家庭環境、そしてそこにBL要素が加わった賑やかなお話。西野の友達たちものんびりした描写ですが、西野を労っているところなども、平和な日々。こういった何気ない平和な日々は、昨今の悲しいニュースで疲れ切った私たちの心のサプリになること間違いなし。w

BL描写は少ししかありませんが、ラストはやはりこの先輩と西野の間にやんわりとした色恋らしき関係がほのめかされています。

ストーリー3:されど美しき日々

この1冊の中で、個人的にも1番好きな作品です。おそらくこの作品を読んで涙したのは、世の中で自分だけかもしれない。w

主人公の男の子・山口。彼の小学生時代の回想から始まります。

この山口くんは、小学生のある日、突然クラスメイトからいじめられるようになります。山口くん本人にも理由はわかりませんが、あっという間に広がったこのいじめの風習に、「委員長」だけは自分に話しかけて、手を引いてくれた。しかし、そんな委員長も小学校を卒業してから急に何も言わずに引越ししてしまいます。

そして現在。山口は中学でもいじめられ、結局知り合いのいない隣町の高校に通っています。いじめられない代わりに友達もいない。そんな彼が駅を歩いていると、たまたま昔の同級生に見つかり、また「委員長」と再会します。しかし、とある理由で委員長は自分のことを覚えていないと知り、思わず涙が伝います。

しかし、お話はそこから想像していなかった方向へ進んでいき、意外な性癖の話で終わる、ユニークな作品。もう、なんでそんな展開になるんだよーっ!w 描写も草間先生らしく、コミカルに描かれています。

では、私はどこで泣いたか。

それは、冒頭です。w

小学生の山口は、学校帰り、無邪気に(たぶん)エノコログサ(あのイネ!?みたいな雑草)を片手に歩いている描写。この一コマで撃沈しました。このセンス、一般漫画でもなかなか目にしないですよ。

こんな些細な一コマから、一気に作品に引き込まれます。だからこそ、冒頭、山口が急に虐められる瞬間がすごくリアルで、残酷なんです。平和な一コマから急に地獄へと落ちる山口の描写がかなりショッキングでした。

子供の時のいじめがいかに馬鹿げているか、皮肉も込められているのでしょうか。

偶然再会した山口と委員長。委員長は、事故に会い、小学校時の記憶を失ったようで、山口のことが思い出せない。それを知った山口は、急に涙してしまいます。委員長との特別な関係、感情が、山口にとってどれだけ大切なものだったか。

この物語のオチは本当に面白く、意外だったので、ぜひ読んでほしいです。
ちなみにもの物語の続編が描かれており、いずれご紹介する単行本『幸せの条件』に収録されております。❤️

ストーリー4:夏のみちしるべ

主人公の稔(みのる)は、大学の受験勉強に集中するため、しばらく借り手がいなかった持ち家に住むことに。その家には、稔が子供の頃、祖父と交わしたある約束が潜んでいる。

おじいちゃんの秘密、そして自分の秘密。

足を運んでいると、誰もいないはずの家に、とあるイケメンが。どうやら探偵さんのようだ。最初は、稔のおばあちゃんが送った刺客かと思っていたが、実はそうではないらしい。どうやらおじいちゃんのことを調べているようだ。でもなぜ!?

このお話は、どこかモヤッとしていてはっきりした描写がなく、物語を読むにつれてわかってくる事柄が多いため、少しわかりにくく、考えて読まなければいけません。蓋を開けてみると「秘密」もそれほど大きなものではないのだけど、子供の時のおじいちゃんとの約束、自分のアイデンティティの秘密なるものは、家族であっても打ち明けられないものもありますね。そんなセンシティブな部分が描かれた作品だと思います。

ストーリー5:恋愛恐怖症

20ページ強の少し短めのお話。急いだ感はありますが、やっぱり、いい。

主人公の坂本。どうやら以前、好きになった相手に「重い」と言われてフラれたらしい。そんな経験もあってか、何度か体を重ねた相手には絶対に恋に落ちないようにしていた。学校で思わず電話ごしの会話で自分がゲイだとばれそうになった時、どこからともなく現れてその場を和めたのが天野。二人が知り合ったのは、そんな感じ。

自分が昔言われて傷ついた言葉を、今は相手に繰り返しすことで、罪悪感を感じながらも自分を戒めようとしており、またその罪悪感を感じることで、どこか自分が救われようとしている感じもする。そんな複雑な坂本の心情描写が興味深い。

さらっと登場する天野は、彼なりの考えの持ち主で、ゆっくり坂本をなだめるのだけど、さりげないクセのあるキャラ描写を持ってくるところや、やはり草間先生らしいです。

また、大学のキャンパスが舞台なのだけど、生茂る自然がさりげなく描かれています。

緑がある大学って、実はすごく貴重です。自分が通った学校も緑が結構あって、今となっては本当に感謝しているし、そういう学校が多い日本に生まれてよかったなと思うこの頃。

草間さかえ先生『夢見る星座』を今すぐ読む方法

草間さかえ先生『夢見る星座』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

サンプルを今すぐチェックすることができます。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。

どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。

コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。

Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。

 

 

草間さかえ先生『夢見る星座』:ドラマCD

この作品は短編ですが、ドラマCDがリリースされています。

「夢見る星座」「されど美しき日々」「夏のみちしるべ」の3つのお話がオーディオドラマになっています。短編ですので、オーディオドラマでも楽しめるとは思いますが、やはり草間先生の作品は、絵や描写が魅力なので、まずは作品を読んでから、オーディオを楽しむのがいいかと思います。

私も、先生の作品をチェックし終わったら、ドラマCDも聞いてみようと思っています。

まとめ

今回は、草間さかえ先生の短編集『夢見る星座』をご紹介しました。

作風や絵柄には好き嫌いがあるのは否めません。ですので、まずはこの先生の作品を1冊手に取って、読んでみて欲しいです。

もし、面白いと感じたら、先生の作品、全てチェックしてほしい。どの作品もシチュエーションや雰囲気が美容に違っていて、笑えます。1巻完結ものも多いので、読みやすいのもうれしいです。週末の楽しみ、また寝る前の癒しにもちょうどいいです。

どのお話もキャラの細かな設定がユニークで、続きが読みたいのだけど、そこを描かないのも先生のご自分のポリシーがあるのでしょうか。とあるインタビューで「飽きるから」とおっしゃってました。ご自分の創作活動のリズムや、描きたいネタのバランスを保ちながら、読者のニーズも盛り込んで行ってくれているのかなと思います。

アナログならではのペン運び、そして短編ならではの余韻のあるお話など、魅力ある作風です。あなたのお好みに合うと、私もうれしいです。

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