こんにちは。
今日は、草間さかえ先生の2011年作品『王様のベッド』を感想とともにご紹介します。読み切りのオムニバスですが、テーマは「田舎」・・・でしょうか w
どんな田舎でもBoys Loveが展開されるさかえ先生作品。楽しかったです。
作品データ
王様のベッド
草間さかえ
刊行年月:2011.06.10
出版社:リブレ(BExBOY Comics)
どんな作品?
2011年リリースの、草間さかえ先生のコミック。2007年、2008年あたりの作品が1冊にまとまったものです。短編集だからというのも理由かもしれませんが、コミックになるまでかなり時間がかかったようです。
今なら世の中の物事の変化が早いため、あまり時間を置いてしまうと、読者層やニーズの変化への対応が難しそうです。
3つのお話(プラス描き下ろし)が収録された1巻完結コミックです。
この先生のお話は、どれもシチュエーションや方向性が違い、個々人の性格や設定も違うため、どれをどこから読んでも楽しめるのが魅力的な先生です。
ただ、短編集のため、カプがくっついて、イチャついて……という展開ではなく、短いお話の中でどんな展開を繰り広げてくれるか、というのがみどころです。
草間さかえ先生『王様のベッド』のネタバレ!?感想・レビュー
草間さかえ先生の魅力は、なんといっても、今も、昔も、個性豊かなキャラたちです。
どんなに似たような絵柄でも、設定でも、どのキャラも魅力的で、そして色褪せない。
決してトレンドを汲み取っていないわけではないのだけど、いつの時代に読んでも楽しめる作品がほとんどです。
今回のこの1冊も、一番古いエピソードは2007年に書かれていますが、男性の特徴をとらえた絵柄ですし、お話は、どこか懐かしい日本の風景があります。
田舎を舞台にした3つのお話ということですが、私のような非都会人が読むと、どこか懐かしい感じがするんです。あの昔の情景は、今はなくなってしまった。日本人の生活がそのまま表現されているため、迷信だとか、妖怪だとか、そういう言葉が出てくるところも、「日本の漫画」としての魅力があるんです。
海外でも漫画ブームがあり、またアジアでいろんな漫画が読まれ、描かれるようになってきた今日こそ、こういう日本の情景が描かれた作品は興味深いし、ぜひ世界の漫画ファンにも読んでほしいです。まぁ、しっかりBLしてるんですけど。w
この1冊には、片田舎を舞台にした3つのお話が収録されていますので、それぞれ感想を含めてご紹介したいと思います。
ストーリー01:王様のベッド
カップリング
古賀(電気屋のエンジニア)
遠野(片田舎に住む彫刻家)
あらすじ
仕事で山奥にやってきた電気エンジニアの古賀。修理のため上がり込んだ家にいたのは、色白の芸術家、遠野。修理が遅れ、さらに吹雪に見舞われたため、遠野の家に閉じ込められた古賀。何もない一夜を共にし、徐々に遠野の背景を知ることになります。
感想
BL雑誌『MAGAZINE BExBOY』に、2010年12月から3回に渡って連載された作品。
いい作品に共通するのは、最初の数ページでその世界へ入り込めること。
この作品も、冒頭から一気にど田舎へと引きずり込まれます w
こんな山奥でどんなBL話になるのやら、と興味津々で読んでいたら、あれよあれよとミステリアスな遠野と、まともに見える古賀の魅力にヤラれます。
遠野は、気難しい芸術家のように見えるのだけど、話を進めていくと、彼の心の奥にはアーティストとしての好奇心、個人のトラウマ、そして気難しい性格などしっかりと存在しています。
対する古賀も、とりあえずまともな人物に見えるのだけど、なぜか色白の遠野が妖怪じゃないかと思うところが、クセモノというか、さかえ先生らしいというか。w
物語は比較的あっさり描かれているのだけど、そこを読者のお好みのペースで余白を探して、自分の想像力で隙間を埋めていく。そんな読み方をすると、物語がより深みを増してきます。
また、草間先生の漫画は、キャラたちの会話はもちろん、動物や自然の描写、食べ物など、日常の描写があることで、物語を身近に、リアルに感じることができます。
そして、シリアスながらも必ずユーモアがあり、笑わせてくれる。
古賀の妖怪発言、そして遠野の弟(あんたの方が弟かい!って突っ込みたくなるキャラですね)なども登場し、いつでも続きを読めるような終わりになっています。というか、きっと日本のどこか山奥に本当にいそうな二人です。
ストーリー02:さくらんぼ
カップリング
上野:生徒会の仕事に忙しい
玉川:クラスメイトの男の子
あらすじ
生徒会の仕事に忙しい上野くん。なかなかクラスメイトを覚えられないのだけど、玉川はすぐに覚えた。さくらんぼのアメをくれるクラスメイト。でも、いつも自分のことを「上野君」と、君付けで他人行儀。それなのに、いつも自分の好きなさくらんぼのアメをくれる人。そんな二人の可愛らしいちょっとした交流を描いた作品です。
感想
2008年9月号、BL雑誌『MAGAZINE BExBOY』に掲載。
高校生、いや、中学生だろうか。かわいい。
さかえ先生が描く男性は、どれも可愛らしさがありますね。どんなにツンケンしたキャラも、必ず可愛いらしさがある。
優等生!?の上野と、クラスメイトの玉川。ちょっとした交流があるのだけど、そこにある恋心が、言葉で直接的に表現する部分と、間接的に心の緊張感で表現するバランスが絶妙でした。
忙しさから、少し気が立っている上野と、優しい顔を見せる玉川との対比も面白いです。
ふと上野にアメをくわえさせる玉川の手から男らしさが読み取れ、おそらく高校1年くらいの、成長真っ盛りの男の子じゃないかなぁ、と妄想する自分。w
とても短い短編ですが、余韻の残る短編。
ストーリー03:花
カップリング
攻め:九門(くもん)
受け:小津(おづ)
あらすじ
片田舎の高校。ある日、妊娠した女の子が亡くなるところからお話が始まります。そしてその背景に、家柄のいざこざに巻き込まれた小津が関係しているらしいと聞きつけた久門は、小津に真相を聞こうと彼に問いただします。
小津の話に好奇心を掻き立てられ、九門は小津と不思議な契約を結び、二人が会うたびにことの真相を聞くことになるのですが、話が進行するにつれ、小津と久門の関係も進行していきます。
感想
2007年9月号、BL雑誌『MAGAZINE BExBOY』に掲載。
あれ・・・これ、高校2年生のお話のようですが、一気に男っぽく描かれてますね。ということは、もしかして『さくらんぼ』は中学生のお話?などと思いながら、冒頭から物語に惹かれます。
ストーリー的にはこのお話が一番興味深かったです。シナリオそのものも面白いですが、さかえ先生の作品らしく、まわりに登場する家族の会話、そして桔梗(ききょう)などの植物が絡み、どこか切ない作品になっている。
はっきりしたハッピーエンドではないのだけど、エンディングは心に優しさの残るもの。これも、私がさかえ先生の作品の好きなところです。
先生の作品からは、豊富なストーリー(カップリング)を楽しむだけでなく、お話の作り方、描き方も勉強になると思います。
ストーリー04:王様のおまけ・・・とあとがき
王様の二人のおまけ漫画が巻末についています。と、その前にちらっとあとがきがあるのだけど、あとがきによると、この1冊は「受けが怪我をするのが共通点」と描かれていました。最後の『花』以外は、正直攻め・受けがよくわからなかったのだけど、これではっきりしました。w
攻めと受けって、絡みだけの話じゃないんですね。
気になった点
BLに限らず短編集は大好きですが、ことBLに限っていうと、いや、ことさかえ先生の作品に限っていうと、キャラの個性が強いため、短編だけだと正直物足りないです〜!
この先生の短編は、「切ない……。いいお話だった〜」という短編ではない。
「この二人のあれこれ、もっともっと続き見たい〜」というお話ばかりなんです。
今でこそ、1冊まるまる1カプについて描いてくれていますが、昔のさかえ先生の作品は本当に短編ばかりで、素敵なカプが山のように存在します。今でも続きを読みたいくらいです。
でも、先生は多分過去は振り返らない w
2024年、今も素敵なカプをたくさん生み出してくれているので、新しいカプたちのお話を楽しみに待っている次第です。
草間さかえ先生『王様のベッド』を今すぐ読む方法
草間さかえ先生『王様のベッド』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。
コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!
まとめ
今回は草間さかえ先生の短編集『王様のベッド』をご紹介しました。
草間先生の作品は、どの作品を読んでも味があり、やさしさのあるものです。大きな事件はないですが(ど田舎だしw)、何もない日常の生活からこれだけスパイスの効いたお話が書けるのはすごいなと思うし、そしてそんなフィクションを読みつつ、私たち読者の生活をカラフルにしてくれる。多分、こういう作品は年齢を重ねれば重ねるほど心に響き、楽しめると思います。
まだ先生の作品を読んだことがない方がいらっしゃいましたら、ぜひ初期の作品も含め、チェックしてみてください。
コメント