こんにちは。
今回は、前回に続き、腰乃先生のデビューコミック『隣りの』をご紹介します。
名前は聞いたことのあった腰乃先生。BL史を勉強するにおいて、やはり目を通しておこうと最初から決めていた先生です。やっと読みました。なぜ先生が人気が高いのかは明白で、とにかくデビュー作から強烈なキャラたちがイキイキと楽しませてくれました。
記事が長くなりましたため、２回にわけておしゃべりしています。今回は2/2。
作品データ
隣りの In Next Door
腰乃 Koshino
刊行年月：2008年8月15日
出版社：東京漫画社（MARBLE COMIC）
どんな作品？
2008年にリリースされた、腰乃先生のデビューコミックス。短編集。
東京漫画社からの作品で、描き下ろしを含めた９話が収録されています。2007年5月から2008年6月までに掲載された作品が１冊にまとまった、１巻完結もの。
クセのあるカップルが多く、この後東京漫画社からリリースされた『幸せになってみませんか？』に世界観がどんどんとつながっていきます。
腰乃先生のお名前は、少し前のBL解説本などを読むと必ず見かけたので、読むべき先生なのだと思って、手に取りましたが、2024年に読んでもなぜこの先生が話題になったのかがわかるほど、個性の強い作品です。BLの歴史をさらっと追うのに、改めて読んでおくべき先生だなと思いました。
初期の作品ですので、絵柄など少し時代は感じますが（そりゃ仕方がない）物語やキャラの描写がとにかく面白く、考察のし甲斐があります。
この作品は、いわゆる「癒し」ではありません。しっかり読んで、しっかり笑う。考える（……でも深く考えるようなものではない）。w そんな作品。
前回はストーリー４までご紹介したので、今日はストーリー５からご紹介します。
腰乃先生『隣りの』ネタバレ！？感想・レビュー
ストーリー５：よく考えよう
カップリング
攻め：高橋
受け：十重田（とえだ）主任
あらすじ
超金欠の２７歳、十重田（とえだ）主任。残金千円と、差し迫った生活からなんとか生き延びるため、身を売ることにした。w 偶然にも、十重田に想いを寄せていた高橋にとっては絶好のチャンスで、３０万円で買ってくれたのだ。そんな二人の物語・・・というか、会話です。w
感想
『リーマンカタログ』(2008.05)掲載。
おかしなことになっちゃってるけど、この主任の性格がよく描けているというか。流されやすく、自分をコントロールできない人ですね。前の２話に比べると、可愛さは感じないのだけど、やはり憎めない二人でした。
ストーリー６：隣りの
ストーリー７：隣りの２
カップリング
攻め：東大寺
受け：沢田
あらすじ
アパートのお隣同士である沢田と東大寺。意地悪だと思っていたゲイの隣人・東大寺が実はちょっといい人で、沢田を朝起こしてくれたり、ご飯作ってくれたり、雨の日は洗濯物を室内にしまってくれたり、沢田の生活を助けてくれる。なのに、とっかえひっかえ見知らぬ男を引き摺り込んで楽しんでいるクセはなおらない。
沢田は「なぜ自分はその対象にならないんだろう。そんなに自分には魅力がないのだろうか。」と疑問に思い始め、自分も東大寺に近づきたくなる。
感想
雑誌『BGM』 vol. 4 (2008.02) と vol. 5 (2008.04) に掲載されたタイトル作。
……こういう気持ちを描けるところが、腰乃先生の魅力なんだな、と唸りました。
仲間に入りたいと、思いませんよ普通。w かまってもらうためなら、俺も今ゲイになるとさえ言ってしまう沢田のメンタル。
この気持ちは決してただエッチしたいという気持ちからではなく、好意と承認欲求があります。
だから、実際にえちシーンになっても、それは単なる行為だけではなく、愛情のようなものはある。ただ、エロいのだけどエロス（愛情の先の美とか、そういうもの）はまだありません。少なくても私には感じられない。w そして、それがリアル。
ストーリー８：幸せなら手をつなごう
カップリング
攻め：涌井課長
受け：小西
あらすじ
『隣りの』の沢田にちょっかいをかけて怒られた同僚の小西が再登場。上司の涌井課長と出張に出かけた小西。出張先のホテルで、筋肉痛だという部長をマッサージしていると、妙な方向へ。
自分がゲイだということも伝えてしまった小西は、妙に部長のことが気になり始める。会社で構ってくれた時など、もしかして自分のことを気にかけてくれるのか、などと勘違いな想いがどんどんと大きくなっていく。
感想
『BGM』vol. 6 (2008.06) 掲載作品。
キャラとしてはこの二人が一番の私のお気に入り！
調子に乗った課長は、小西をからかいすぎて、ついに小西はギブ。どうやら課長に落ちてしまったようなのだ。涙ポロポロしながら告白する小西、そしてそんな小西を捕まえてしまった課長の豹変ぶりが笑えます。
課長は豹変し、くんずほぐれつがんばるんですが、コトが終わると力尽きてぐったり。設定的には何歳くらいなのかはわかりませんが（アラフォー？）、力尽きた感がもう５０代後半のなのが笑えます。今時５０代後半の初老でももう少し元気あるのでは！？w
課長の豹変ぶりも笑えますが、実は小西の涙、シンパシーを感じます。
小西は若いながらもゲイという環境にフラストレーションを感じているのか、好きな人にただただ想って欲しいだけなのに、そんな相手を見つけることさえできず、自分が哀れに感じて涙が溢れてくるシーンがあります。
課長を好きになりつつも（流されるヤツだな w）構ってもらえない現実に悲しくなってきた様子。
このお話ではゲイだから、という設定が効いているのかもしれませんが、現代の社会そのものがそうじゃないですか？人間、愛がなくちゃ、生きていけない。
日本人の若者からお年寄りまで、孤独な人が多くないですか？もし周りに大切な人がいたら、行動でも、言葉でも、できる限り愛を伝えてください。愛が十分に足りていれば、今のような恐ろしい世界情勢にはなり得ないと信じています。
ストーリー９：隣りで
描き下ろし。
涌井課長 x 小西、そして 東大寺 x 沢田 が登場します。
課長がまたやらかして、魂抜けてますね。w
腰乃先生の作品を読んで、会話は非常に面白いのですが、絡みシーンは妙にリアルな描写。最後の描き下ろしもAVのような描写になっていて、好みも分かれるかもしれません。ただ、下手に美化されておらず、誇張はされつつもリアルな親密性があるのかな、と感じました。
以上、盛り沢山の１冊でした。
腰乃先生の『隣りの』を今すぐ読む方法
腰乃先生の『隣りの』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「
Renta！レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア：クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
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まとめ
今回は、腰乃先生のデビューコミックス『隣りの』をご紹介しました。少し古い作品ではありますが、繊細な心理描写をコミカルに描写しているリアルなBL作品かなと思います。
おバカキャラは多いですが、男の子のおバカは可愛いんです。ここに登場するキャラたちはとにかく濃く、この１巻完結の１冊で十分楽しめます。
個人的には続きを読みたいとは思わない。w もっともっとユーモアあふれるキャラを、腰乃先生には描き続けてほしいです。
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