こんにちは。
今日は、草間さかえ先生の過去作をご紹介しようと思います。
草間さかえ先生は、短編から長編、エッセイまで描かれる多彩な先生ですが、私がこの先生に惹かれる理由は、「自然」です。風景などの自然描写そのもの、そして、等身大の、でもどこかクセのある自然体のキャラたち。舞台は日本のちょい田舎のそこら辺。そしてちゃんとBLもしてる。癒しにもなるし、学びにもなる。またソローのような哲学にもつながる作品だと思っています。
いつか、違うアプローチで草間先生の作品をおしゃべりしたいですが、今日は作品紹介で。w
作品データ
肉食獣のテーブルマナー
草間さかえ
Carnivorous Animal’s Table Manners by Sakae Kusama
刊行年月:2007.05.09
出版社:コアマガジン(drap コミックス)
どんな作品?
4つのお話が収録された、草間先生の短編集。
タイトルから、いい。アナログ感のあるペンタッチや色付けが魅力的な作品です。かっこいいシチュエーションも、珍しいプロットもありません。普通の、そこら辺にありそうな、そこら辺にいそうなメンズラブを、草間さかえ先生がユニークな切り口で描いている作品です。1巻完結なのもうれしいです。
BL雑誌『drap(ドラ)』2005年4月号から2007年2月号に不定期で収録されたお話を収録した1冊。前後編も2つ収録されています。
相変わらず、短編ながらもしっかりと描き込まれている背景や人間描写などが面白いです。最近の作風である群像劇のようなものはありませんが、やはり周囲のワキキャラにもほどよい存在感があります。
やはり漫画の質は群を抜いて高く、BLに限らずお話の作り方や心情描写は素晴らしいです。草間先生の作品を読んでみたいなと思っている方は、正直どの作品を手に取ってもいいと思います。どちらかというと、作品よりも作家読みをすると楽しめるのが、この先生の作品です。
草間さかえ先生『肉食獣のテーブルマナー』ネタバレ!?感想・レビュー
あらすじを交えながら、少し感想をおしゃべりします。
ストーリー1:キス、シロップ 前後編
2006年8、9月号に収録されたお話。
アパートの上の階から聞こえてくる騒音に悩まされる岸田。どうやら上の階に住んでいるのは兄弟のようで、兄の亮司と出会う。兄弟喧嘩なのか、顔に傷を作った亮司を見て、家へ招き入れる岸田。
どこか子供っぽく、自分になついてくる亮司と、たまにご飯を食べたりかき氷を食べたり・・・。そんな交流を楽しんでいた岸田は、ある日アパートの階段で不思議な光景を見ます。大人びた亮司が男の人とキスしてるーーー!?どうやらそれは、亮司の弟・サトシは双子の弟で・・・。
亮司とサトシが双子という設定は面白いんですが、性格も正反対に描かれているのが面白いです。
亮司の方が子供っぽいのだけど、だからこそたまに見せる表情がぐっと色気がでてくる。サトシは男性が好きなのだけど、亮司は自分は違うと思っている。しかし実際には自分もその気があるのか、岸田に惹かれる。岸田への気持ちの変化に葛藤する姿が描かれています。
亮司のことを子供っぽくて愛らしいと感じている岸田の癖(へき)はわかりにくいですが、彼もやはり亮司に惹かれている。自分に懐いてきて、子供っぽく、まるで弟のような存在にさえ思っていた亮司は、ある日を境に今までと違う表情を見せます。岸田の中で、感情がシフトした瞬間。さりげない変化が、岸田にも現れているのもドキドキします。
ストーリー2:肉食獣のテーブルマナー
『キス、シロップ』で登場した亮司の弟・サトシのお話。キス・・・では、サトシはかなり肉食な感じで描かれていましたが、このお話もそうでした。w
しかし・・・
冒頭から、まさかのサトシの告白があります。
大学のゼミの後輩・安藤。ゼミの飲み会で肉を食べに行き、その帰り、部屋にお持ち帰りされた安藤。次の日起きて、双子の兄・亮司に会うのだけど、ここでサトシが今まで肉を食べなかった理由を安藤に話します。
むむ・・・。そう、来ましたか・・・。
サトシの性格上、この方向性で来るとは思わなかった展開にちょっと胸がキュッとなってしまいました。(ぜひ本編をご確認ください。)
無事にお付き合いが続いている亮司と岸田が登場し、サトシに巻き込まれた安藤など、切ないながらもユニークなエンディングで、草間先生の作品は読後かならず心に温かさが残ります。
ちなみに、サトシの部屋にたくさん観葉植物があったところも興味深いです。結構イケイケな性格のように見えて、意外と繊細なのかな。
このお話はもう少し続きが読みたかった。
ストーリー3:ここだけの話 前後編
いや・・・真剣な恋話だと思って、一コマ一コマ丁寧に読んでいたのだけど、前編のエンディングで、我に帰ります。あ、これ、さかえ先生の作品だった!って。w
切なさはもちろんあるんですが、やっぱりコメディなんですよね。w
ゲイの大河内。女性社員にも人気がある彼が知り合ったのは三田。かっこいいのに女っ気もなく、コンパも嫌いらしい。もしかしたら、自分にもチャンスがあるのではないか・・・。そんなさりげない下心もありつつ、飲みに誘ってみた。しかし、ふとしたところから逃げるように帰られ、落ち込む大河内。
見込みがないと思っていた大河内だったが、今度は三田から飲みのお誘いが。今度こそ自分の気持ちを伝えてみようと意気込んでいた大河内だったが、飲み潰れてしまい、三田に連れられてホテルへとやってきた。
そこで発覚したのは、三田の正体。女っ気がない三田に「もしかしたら自分と同じなのでは?」と淡い期待を持っていた大河内を裏切るがごとく、三田は生粋のオタクだったーーーー。
前半、どうなるんだろうと真剣に読んでいたけど、このオタク要素登場で爆笑しました。そして、ここから後半戦どうやってもってくの?っと。後半、少し大河内が自信なさげになっていきますが、それもまた、かわいらしいというか。結局、草間先生らしい終わり方で落ち着いてます。😆
これも・・・もうちょっと続きが読みたかったです。
あれ、欲が出てきたな、私。w
ストーリー4:春の指先
幼なじみのお話。幼少期の描写から入ります。
微笑ましいお話・・・と思いきや、そんなわけがありません。草間先生だから。w
同じピアノ教室に通っていたこともある達也と真琴。真琴はピアノの先生になり、達也はピアノをやめて、今では真琴にマルチ商法の商品を売りつけに来るという、とんでもない設定です。こんなキャラ設定、草間先生らしいとしか言いようがないな・・・。w
真琴は真剣に幼なじみである達也を想っているのだけど、そんな彼の想いも瞬時にコミカルにかき乱す達也は天才的。しかも、一生懸命商品を説明する達也の顔が、見たこともなく真剣でウケます。w
そして、爆笑した後に、BLがやってきます。
短編の中で繰り広げられるこの感情のローラーコースターがなんとも面白く、爆笑したと思ったら、切なくなっての繰り返しで、あっという間にお話が終わってしまう。もちろん、このお話も続きが気になりますが、真剣な真琴がかわいそうになると思うので、このお話は短編でほどよく終わっています。w
草間さかえ先生『肉食獣のテーブルマナー』を今すぐ読む方法
草間さかえ先生『肉食獣のテーブルマナー』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
サンプルを今すぐチェックすることができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「
Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)
どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。
Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。
草間さかえ先生『肉食獣のテーブルマナー』:ドラマCD
草間さかえ先生の作品はいくつかドラマCDになっておりますが、この作品はその一つです。
物語はすごくいいのですが、視覚で楽しむ部分が多いため、ドラマCDでどこまで表現されているのか、興味があります。
残念ながら私はまだ聞いたことがありませんが、もし興味があれば探してみることをオススメします。もしかしたら、まだ新品でも入手可能かもしれません。
どなたか聞かれた方、いらっしゃいますか?
まとめ
今回は、草間さかえ先生の『肉食獣のテーブルマナー』をご紹介しました。
2つの前後編が収録されているため、いつもの短編集よりも「続きが読みたいな」と思わせてくれる作品になっています。
草間先生の初期の作品は短編が多く、少し余白ある作品なので、妄想で余白を埋めていくと面白いです。
また、漫画創作の上でも、モブの使い方や小物・日常風景の使い方なども非常に卓越していて、読み手からみても勉強することが多いです。
まだ未読の方はぜひこれを機に読んでみてはいかがでしょうか。また読まれた方、ぜひ感想教えてください。❤️
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