こんにちは。
今日は、草間さかえ先生の『イロメ』をご紹介します。
学校を舞台に行われる色恋の駆け引きが1冊にまとまったオムニバス。
学校ってどうしてドキドキするんでしょうね…。💜
作品データ
イロメ
草間さかえ
刊行年月:2008.08.15
出版社:新書館(ディアプラスコミックス)
どんな作品?
BL雑誌『Dear+』2005年10月号から不定期に連載された、学校を舞台とした短編がまとめられた短編集です。
物語そのものは短編なんですが、キャラがそれぞれのエピを行き来しているので、同じ街のお話でしょうか、1冊を通して統一感があります。5つのお話、そして描き下ろしが収録されています。
1巻完結となっておりますが、同じCPたちのその後が描かれたもう1冊のオムニバス『ヌレル(イロメ2)』もリリースされております。1巻だけでもたっぷり楽しめますが、CPのその後が気になる方は2巻も要チェック。
草間さかえ先生はたくさん単行本を出しており、私のように2023年に草間先生の作品にハマった方は、初期の作品まで遡るのは少し大変ではありますが、どれもこれも面白く、癒されますので、ぜひゆっくりと過去作もチェックされることをオススメします。
細かな日常描写も巧みで、セリフも面白い。日常を切り取りながらも、ユニークに表現しています。漫画を描かれる方にも勉強になるかと思います。また、非BL作品も描かれていて、そちらも要チェックです。
草間さかえ先生の魅力
この先生の魅力は、日常の世界に溶け込んでいる小さな恋物語。
複雑なストーリーはありません。田舎のどこかで知り合った人と、すぐに恋に落ちちゃうような男の子たち。でも、その描写こそが、どんな読者にも響くんです。
その理由は、先生の日常描写にあります。ど田舎に出没する男の子たち。平和な田んぼ、じいちゃんばあちゃん、草木や動物たち。登場するクラスメイトや街の人たちも、クセがあり、また私たちが見慣れた日常。
だからこそ、ファンタジーな色恋に忙しく試行錯誤するキャラたちのリアリティがすごいです。そして、切なさ、悲しさはあっても、決して痛く、残酷には終わらない。ユーモアな描写でほのかな希望を残した終わり方も特徴です。
短編集をたくさん出されていて、どれも魅力的で続きを読みたくなるカップリングばかり。この『イロメ』は2巻もあるので、想いが通じた後の二人をもう少し覗くこともできます。
草間さかえ先生『イロメ』のネタバレ!?感想・レビュー
この作品は短編集なので、感想を添えて、個別にご紹介したいと思います。
ストーリー01:イロメ
攻め:桃山(高校生。先生からの視線がやたらと気になり…)
受け:野田(高校教師。日本史担当。)
桃山は日本史のが得意だ。こまめに行われる小テストもいつもいい点数を取れる。なぜなら、テストに出るところは野田先生と目が合うから。ふと合う目線は、テストの合図なのか、それとも・・・。
15ページであっという間に終わってしまう短編ですが、この二人は後に再登場します。短編のすぐ後に、描き下ろしのコマ漫画とさかえ先生のコメントがあり、それによると桃は、学校創立以来のアホという設定、とのこと。w 小テストを提出し忘れるというアホさぶりが可愛らしい。
野田先生が一生懸命シてくれるシーン。桃は野田先生の不器用ぶりに萌えるのだが、アホなはずの桃もそれなりに女の子との経験があるという背景設定に私は笑えてきました。そして、そんな桃はなぜ野田先生に落ちるのか… w
面白ポイント:高校生の桃と友達がスナックを食べながらおしゃべりしてるんですが、そのスナックがミックスナッツなんです。ポテチとか、あめちゃんとかでなく。成長まっさかりの高校生がミックスナッツ。渋いなぁ〜。w
こういう描写に私はいつも釘付けです。
ストーリー02:花いちもんめ
攻め:小野崇(高校1年。偶然知り合った森崎の寂しさと人柄に惹かれる。)
受け:森崎(高校2年だが、年はもっと上。寂しがりやでお節介。)
入学式に遅れてしまった新入生の小野。中庭でたばこを吸っていた2年の森崎に出会う。どうやら理由があって休学していたようだ。クラスに馴染めないのか、どこか寂しそうな森崎と、それに惹かれる小野。
あっという間に恋が始まります。まさに草間先生の作品らしい。w
それぞれの人物像に魅力があり、どこか切なくて、惹かれるのがわかる。でも日数として考えると、会ってからあっという間のお話。森崎は男の子が好きというのはわかるのだけど、小野にはその兆候があるのかは不明で、まぁ惹かれたんで・・・というノリです。でも、恋に落ちる瞬間そのものって、意外と深い理由はない。かっこいい顔を見たとか、助けられたとか、ごく当たり前の表情や行動から人を好きになりますね。そんな人間の心理が表現されていると思います。
あっという間に恋には落ちるけど、それは短編だから。草間先生の短編では、日常の生活の中にある瞬間を切り取る作品が多いです。作風でもあり、それが短編。だから、実際のところ一日で恋が成立してもいいんですよ。ポイントはそこじゃない。何もない日々を切り取ってもよし。魅了する瞬間を切り取ってもよし。自由に魅せるのが、短編。
面白ポイント:留美ちゃんのセーター。
ストーリー03:うらはら
攻め:ナオシ(頼り甲斐がある・・・感じはする。)
受け:光彦(モテるのだけど、)
彼女が出来ては別れ、お付き合いが長続きしない光彦。そんな彼は、子供の頃にナオシからもらったカエルのストラップがお気に入りだ。光彦に彼女ができるたびに、どこか嫌な気持ちになりイライラするナオシ。そんな二人の、始まり。
16ページのショート。蛙がつなげる幼なじみの二人。w
草間先生の作品によく出てくるのが、子供の頃のエピソードとか、迷信とか。ちょっとした小話で二人の関係性が表現されることが多いです。このお話も、幼少時代の小話からスタートします。
初めて触る蛙に興奮する光彦。家にもってかえろうと提案するが、それを自分勝手な行動だと言うナオシ。ナオシを失いたくない光彦と、わがままな(!?)光彦を説得しようとするナオシの関係が、何も変わらず高校でも繰り返されているのが愛らしい。
面白ポイント:幼少時代の思い出。そして萌えポイントは、さりげなくナオシの肩をさわる光彦と、なだめるように触れ返すナオシとのスキンシップ。
ストーリー04:あつくてつめたい
ナオシと光彦のお話のつづき。
前話で少しだけ近づいた二人。心のうちを明かした光彦だけど、ナオシは光彦の気持ちにどう応えていいのかわからず。普通を装うのだけど、どこかぎこちなく、今まで通りに対応できない。
「友達じゃ、だめなの?」
しっかりもののナオシは、ああだこうだと考えて、熱が出てしまうくらい。でも、熱く感じるのはそれだけ?
光彦は、自分の気持ちを伝えたことで、ナオシが離れていくのが怖い。友情がなくなってしまうのが怖く、ビクビクしている。その心情が、幼少時代におばけを怖がっていた光彦の描写とともに表現しているところが興味深いです。
短編でも、ナオシのじいちゃんが出てきたり、光彦の母親は仕事をしていたり、直接物語とは関係ない情報のように見えるのだけど、そういった情景が短編をより奥深くしてくれます。
面白ポイント:ナオシのじいちゃん。ナオシとじいちゃんの関係からも、ナオシの家庭環境が読み取れてきます。そして、光彦のバイト先のコンビニにさりげなく登場する小野崇。w
ストーリー05:カオス(前後編)
攻め:壬生谷(みぶや:高校の卒業生)
受け:白川(母校で教鞭を取る物理教師。1話登場の野田先生の1つ後輩)
母校で教鞭をとる白川。教師。(第1話に出てきた)同僚の野田は、白川の1つ先輩で、剣道部の顧問だった。そんな野田を訪れてやってきたのが、卒業生の壬生谷(みぶや)。壬生谷は野田の生徒であり、剣道部でもあった。そしてそこに居合わせた白川との再会。実は以前、生徒だった壬生谷は白川と事情があり・・・。しっかりと成長した壬生谷と白川のお話が始まっていきます。
2年ほど前までは男子校だったこの高校。白川も野田も、この高校の卒業生であり、今はそこで教鞭をとっている設定です。この二人の過去はのちに語られるとして、白川の変化、そして壬生谷との過去がゆっくりと語られます。
前後編と、少し長めに語られていることもあり、いいお話でした。
白川自身の学生時代の葛藤と、壬生谷への好奇心、壬生谷からの想いが交差していきます。そして壬生谷の恩師としてフィーチャーされる野田の性癖に気付いていないウヴな壬生谷が可愛らしい。でもって、壬生谷は攻めだというのも感慨深い。w
白川と壬生谷のお話は、前後編ではあるのだけど、まだまだ続きが読みたくて、読者おのおので考察・妄想しなければいけません。w 草間先生の短編は、どれも瞬間を切り取ったものが多いため、余白は読み手の妄想で埋めることができます。
それぞれのエピの後にあった先生のコメントも参考にしながら、カプの過去など考察するのも、なかなか楽しい。
しかも、キャラの繋がりはあるものの、お話はきっちり完結しているので、寝る前の癒しとしてちょこっと読んでいくのもいいですね。
草間さかえ先生『イロメ』を今すぐ読む方法
草間さかえ先生『イロメ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
サンプルを今すぐチェックすることができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)
どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。
Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。
草間さかえ先生『イロメ』:ドラマCD
草間さかえ先生の作品は、この『イロメ』を含めて幾つかの作品がドラマCDになっています。私にとって、さかえ先生の魅力は絵柄やコマの描写なので、オーディオドラマの良さはきっと違うところにあると思いますが、この作品は大好きなので、いずれ聞いてみようと思っています。
ドラマCD(BLCD)に興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
いかがでしたか。ベテランの作家さんのため、多くのBLファンは既に読んだことがあるかもしれません。が、もしまだ未読でしたら、ぜひ読んでいただきたいです。イマドキの絵柄ではないのだけど、色あせず、しっかりと男性の魅力ある画力。そして、なんといっても漫画作りがすばらしい。心に残るお話、癒しなどを求めている人、はたまた漫画を読み込んでいる人も満足できるストーリーだと思います。先生の作品は、どの作品も楽しめます。
コメント