草間さかえ先生『うつつのほとり』: 自然や人間の普遍性と条理

草間さかえ
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今日は、草間さかえ先生の非BL左右品『うつつのほとり』をご紹介します。

豊富なストーリーと愉快なキャラクターたちが毎回楽しみなさかえ先生ですが、非BL作品もいくつか描かれています。

先生が描く作品がとにかく好きなので、さっそくBL以外の作品も拝見しました。シリアスな作品も淡々と描かれるさかえ先生の作品は、考察の余地があり、またいろいろと考えさせられものでした。

作品データ

うつつのほとり

草間さかえ
Sakae Kusama

刊行年月:2013.09.10

出版社:リブレ(クロフネ comics)

どんな作品?

草間さかえ先生の非BL作品

雑誌『クロフネZERO』2008年Sunmerから2013年7月号までに掲載されたショートを1冊にまとめた作品です。

事情により、東京から山田舎に引っ越してきた敬ちゃんと、村のものからは天狗と言われ、避けられている弥七(やしち)との交流、そして田舎ならではの迷信や風習が描かれた良作です。

普段BL作品を描かれている先生なので、もしかすると一般漫画ファンにはあまり知られていない作品かもしれないのがもったいない。(私の偏見でしょうか?)

この作品は非BLであり、誰でも楽しめる作品。

天狗礫(てんぐつぶて)など迷信のお話かと思いきや、山村での生活、そして田舎ならではの人々の描写がとてもユニーク。そして、主人公である敬と弥七、また敬と母さまの関係などもセンシティブに描かれています。

草間先生の作品は、日本の懐かしい田舎の情景が描かれることが多いのですが、先生は奈良のご出身だとか。奈良には私も何度か足を運んだことありますが、歴史のある神社やお寺と、現代のモダンライフが併存した町で、大好きです。

さかえ先生の作品を読むときに、いつもあの奈良の情景が頭をよぎるため、より先生の作品が楽しめます。

あらすじ

病弱な母さまと一緒に療養のために東京から山田舎へやってきた敬(たかし)。村の子供たちとも友達になってきた時にふと出会ったのが、弥七という男の子。村のみんなは彼のことを天狗とか、きつねというけど、弥七は人間なのになぜ!?

弥七を介して、山の動物や植物を知っていったり、毒のある花や、栗の取り方など、いろんなものを見て、学んでいきます。

また、山村の人たちはなぜ弥七を嫌うのか。本当は弥七が人間なのに、なぜいじわるをするのか、理不尽な社会も経験していく。

東京にいる父さまからは一向に手紙も来ずーーー。

自然の尊さ、大人たちの不都合なしがらみなどをゆっくりと経験し、成長していく敬のお話です。

草間さかえ先生『うつつのほとり』:ネタバレ!?感想・レビュー

作品の魅力1:人間の営み

この作品は、子供を主人公にはしているのだけど、ただかわいらしいという作品にとどまるのではなく、ゆっくりと人間の営みを描写しているところに魅力を感じる。

まずは、自然。

さかえ先生ご本人も植物が好きなようですが、山の実や花木、また山ネズミやオコジョ、そして山鯨など・・・。何が食べられて、何が毒なのか。都会の生活からはわからない描写、もしくは忘れかけていた懐かしい描写がたくさんあります。

自分が子供の頃は、道に咲いていた花の蜜を吸ったり、庭に咲いていた木の実を食べたことがあるけれど、それもあって、この物語を読むと、自分の幼少期の情景が浮かんできます。

迷信。天狗礫(てんぐつぶて)など、いわゆる迷信とされる事柄もちらほらと出てきます。

子供たちは弥七を化七といっていじめます。大人たちも弥七を天狗だのきつねだのと悪くいいます。

友達になった敬は、頑なに弥七を守ろうとしますが、お手伝いの美春さんやハツさんさえも弥七を悪くいうことに戸惑う敬ちゃんは、理不尽な村八分を目の当たりにします。

ところで、弥七はなぜ天狗と呼ばれているのか。実は、弥七は色白で、目が緑色をしているからなのです。

面白いのは、敬ちゃんの視点からは、その描写は語られることがなかった。無垢な敬ちゃんには、それが他の人と違うと認識せず、「同じ人間」として見えていたのを、さかえ先生はこう表現したのでしょう。

迷信と同様、この山に小さなお寺があるところも、奈良ご出身のさかえ先生らしい描写。奈良には小さなお寺もいくつかあるのでしょうか。お寺という存在が人々の生活に併存している風景。

お寺から聞こえる鐘の音、山の実を食べる習慣、そんな日々が、ゆっくりと敬ちゃんを成長させていきます。

母さまは体調が芳しくなく、外に出ることができない。父さまは東京で、手紙もよこさない。敬ちゃんは、そんな状況をうっすらと感じながら、理不尽な大人の世界を感じ取っているところも興味深いです。

作品の魅力2:自然

上記でも少しお話しましたが、さかえ先生の魅力の一つは、自然の描写です。

イラストだけの一コマ描写ではなく、もっと具体的なもの。たとえば「茱萸(ぐみ)」。赤いさくらんぼみたいな木の実ですが、スーパーなどでは見たこともなく、一部の人しか知らないのではないでしょうか。

東京からやってきた敬ちゃんも初めて見る赤い実に興味津々。

ススキを顔に見立てた、ススキの狸も出てきます。私が子供の頃は川沿いに生えていたススキを取って遊んでいたのをふと思い出しましたが、今は残念ながらススキも見なくなりましたね。

「あけび」も登場します。あけびは初めて聞いたので調べてみましたが、私が住んでいる地域にはないだろうと思っていたら、ありました。ちなみにあけびは英語で「five-leaf chocolate vine」と言うそうです。かわいいね。

自分の地域ではほとんど見たことがない山の実や植物が登場するのも面白く、山の情景に想像力を刺激されます。

実は、先生の作品を読んでから、道端に咲いている花や庭にやってくる鳥などに目が行くようになりました。

今まで鳥なんてスズメしかわからなかったのだけど、実はいろんな鳥が家の庭に遊びに来ていることに気づいたり・・・。そんな気づきも、さかえ先生の作品を読むようになってからです。

作品の魅力3:Storytelling

細かな描写ももちろんのこと、話の展開も相変わらず面白いです。

BLではありませんが、6ページほどのショートも収録されており、漫画の描き方なども勉強になります。まさかの母さまの展開、そして弥七の正体!?など、あまり想像していなかった方向へお話が展開していくのも、さかえ先生の魅力です。

先生のストーリーの描き方は昔も今もかわらず、人と人との繋がり、人と自然との繋がりがユーモアと共に描かれているだけです。

そこにはフィクションを盛り上げるドラマチックな展開や大きな葛藤などはありません。たとえ辛い状況でも、淡々と描かれており、決していいことばかり、楽しいことばかりではない社会や人生も、情理として記されています。

草間さかえ先生『うつつのほとり』を今すぐ読む方法

草間さかえ先生『うつつのほとり』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

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まとめ

いかがでしたか。今回は、草間さかえ先生の非BL作品『うつつのほとり』をご紹介しました。このブログにはBL作品中心に記していましたが、さかえ先生のこの良作はどこかに明記しておかねば、と思い、ご紹介しました。

草間さかえ先生の作品は1年かけて全て拝読しました。オリジナリティある絵柄にストーリー、キャラクター設定と、魅力的な先生です。まだまだ作品がありますので、ゆっくりとご紹介しようと思います。

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