こんにちは。
今日は、イイモ先生の『添い寝ラヴァーズ』をご紹介します。
作品データ
添い寝ラヴァーズ
イイモ
刊行年月:2017年09月09日
出版社:竹書房(BAMBOO comics)
どんな作品?
『イノセント』『パーフェクトプラネット』に続く、イイモ先生の3作目の商業コミックス。短編集です。
『イノセント』に比べると、ずいぶんと読みやすくなりました。w
相変わらずイイモ先生の癖(くせ)はでておりますが、程よいクセで、それがイイモ先生の魅力でもあります。
BL雑誌『麗人』に2016年から掲載された短編たちがまとまった、1巻完結もの。
タイトル作は比較的ライトでコメディチックなお話ですが、他の作品はSFもの、少ししっかりしたテーマのあるものも収録されており、作品も面白いですし、イイモ先生の漫画家としての技量も堪能できる作品です。
短編集なので、少し感想を交えながら、お話をご紹介します。
イイモ先生『添い寝ラヴァーズ』ネタバレ!?感想・レビュー
ストーリー1:添い寝ラヴァーズ
カップリング
攻め:いちごちゃん(CD特典のイベント当選者で、ユッキーに添い寝してもらう。)
受け:ユッキー(アイドル7年目。CD売り上げ貢献のために妙なイベントをこなす羽目に。)
あらすじ
ユッキーはアイドル7年目。なんとかCD売り上げに貢献しようと、CD特典のために、ファンに添い寝をするイベントのため、イベント当選者の家に訪れる。
当選者であるいちごちゃんは、実はユッキーファン(そこはしっかりファンw)の男だった。
撮影が終わり、帰ろうと思いきや、イベントの流れでユッキーはいちごちゃんの家に一泊することにーーー。
感想・レビュー
老舗のBL雑誌『麗人』2017年3月号に掲載された短編。
この1冊の中で一番明るめの作品です。短編なので、深い心理描写というよりもコメディ調ではあります。
イイモ先生のメッセージ性のある作品はどちらかというと重いテーマのものが多いので、陽な作品は、深いことは考えず単純に楽しめばいいのかなと思います。この作品もその一つです。
ただ、アイドルなるものへのironicな描写や、いちごちゃんが何の仕事をしているのかはわからないのだけど、ピアスしているおしゃれ男子だったりと、細かな描写を拾っては妄想を広げることはできるかなと思います。
創作活動は、いつ誰にどんな影響を与えるかは、わからないですね。
ストーリー2:アンチヒーローエゴイスト
カップリング
攻め:泉原(黒田の中学生時代の同級生。お金持ちの息子で、お金で物事を解決しようとする)
受け:黒田(蒸発した父親の借金の取り立てにやられてる)
あらすじ
黒田は、蒸発した父親の借金のせいで毎日ヤミ金から届く監促状や脅しに悩まされていた。そんな時、黒田の目の前に現れたのが、中学時代のクラスメイトの泉原。
泉原は突拍子もない提案を黒田にする。1週間ほど泉原の「お願い」を聞けば、お金をくれるというのだ。殴られれば10万円、買い物の荷物持ちや女装など……。
しかし、なぜ泉原は黒田の前に現れたのか。黒田は少しずつ昔の記憶を辿ることにーー。
感想・レビュー
『麗人』2016年9月号掲載。
これは橘オレコ先生の『プロミス・シンデレラ』の元ネタですか!?とさえ感じるストーリーw
泉原の嫌がらせを、お金のためにこなしてく黒田がなんとも健気ではあるのだけど、全体的な物語としては、泉原の心情がほんのり描かれています。
裕福な家庭に生まれた泉原は、昔からイエスマンしか周りにいない日々。学生時代の同級生もお金(無料のお菓子などでつっていた)目当てだった中、とある事件で黒田と揉めたことで、今まで見てきた人間とは違った人間性を黒田に感じる。
そこから、黒田への執着のようなものが生まれます。
泉原は感情の表現方法がわからず、借金に苦しんでいた黒田の隙につけこみ、お金で黒田にちょっかいを出す権利を買う。好きな人をいじめたくなる体質もあるのでしょうか。
そんな不器用な泉原が急に素直になると、黒田も急に豹変します。
人の好意。歪(いびつ)な形であっても、やはり相手に伝わるものですね。黒田ははっきりと言葉で表現させるよう促すのだけど、そこは彼のけじめなのか、それとも確認のようなものなのか……。
短編なので、展開が早いですが、そんな中でもキャラの描写はしっかりとあり、安定した画力とストーリーで、最後まで一気に物語に引き込まれます。
そういえば、二人の絡みシーンに登場する泉原の口元の表現。これ、『悪癖』でも見かけたアングルですが、イイモ先生の描写で一番セクシーな描写で好きです。
ストーリー3:監禁25年生活(前編・後編)
カップリング
攻め:はじめ
受け:秋人
あらすじ
秋人は、長期の海外出張から日本に帰ってきた矢先、災難にも妻に逃げられてしまった。お酒で気分を紛らわそうとしていた矢先、ある男につかまってしまう。男の名前は、はじめ。
「25年間で君は僕を愛すようになる。」
はじめの宣言通り、そこから監禁生活が始まる。
しかし、提供される食事は徐々に質素になっていき、部屋の電気も届いていないようだ。何かがおかしい。秋人は、はじめを問いただしてみると、どうやらはじめは文字もまともに書けず、仕事もままならない状態。
自分の命の綱ははじめの生活力にかかっている。
そう感じた秋人は、はじめを調教(笑)しはじめるのだが、実ははじめの生活力のなさには、特殊な理由があったのだーーー。
感想・レビュー
『麗人』2016年11月、2017年1月に連載された作品です。
監禁というエッジのきいたトピックではあるのですが、お話を読むと、より複雑な心情が描写されています。
コメディな部分とシリアスな部分を交互に交えながら、お話は進んでいきます。
前後編と、それほど長いお話ではありませんが、はじめの過去のトラウマがも描写されています。イイモ先生の作品は、短編も面白いのだけど、中長編の方がメッセージ性があって面白いです。
人間の感情の脆さ、善悪の定義、抽象度についてなど、いろいろと考えさせられる作品となりました。イイモ先生の作品は、読むたびにいろんな驚きや思わぬ発見があるので、好きです。
心理面では考えさせられた反面、漫画的でコメディなラストも、しっかりとファンタジー感が出ています。
何を肯定するわけでも、否定するわけでもなく、あるファンタジーのお話、というこの世界観。魅力的です。
ストーリー4:天国の特等席
カップリング
攻め:ジン(セトナのことが好きなはずなのに、素っ気ない態度しかとらないのには理由がある)
受け:セトナ(オリジナルはどうやらジンと関係があったらしい……くらいしか知らない)
あらすじ
セトナが目を開けると、ジンがいた。どうやらセトナは誰かの「クローン」らしい。そして、オリジナルのセトナとジンは一緒に暮らしていたようだ。
無造作に体を重ねる二人だが、無表情のジンがたまに見せる別の顔。いったい過去に何があったのか。セトナの心の奥底に眠る記憶が、徐々に蘇っていくーーー。
感想・レビュー
『麗人』2017年5月号掲載。
全体を通して、イイモ先生のストーリーの側面は好きなんです。
しかし、個人的な見解ではありますが、絡み部分がなかなかうまくストーリーの側面と馴染まない感じがするのです。
本のあとがきに「「BLらしさ」を意識して描いてみた」とありましたが、それはストーリーの部分なのか、それとも絡みの部分なのか……。
BL初心者な自分としては、なぜクローンと絡まねばいけないのか、その必需性がわかりません。w (でもこれってBLの本質ですよね……。多分私はまだBLを理解していないのだ……)
クローン。私たちのアイデンティティ、人間としてのアイデンティティはどうなっていくのか。
テクノロジー、AIの進歩によって、すでに私たちの日常はITに支配されている。そしてバーチャルな世界でも、自分の居場所がなくなっていくのかもしれません。
もしくは、バーチャルな世界で自分のアバターが生き続けるのかも。
でも、今、目の前にある現実を楽しめているだろうか。目の前にいる大切な人にちゃんと愛情や感謝を伝えているだろうか。
生身の人間、目の前の世界、自然を享受する大切さを再認識させられました。
イイモ先生『添い寝ラヴァーズ』を今すぐ読む方法
イイモ先生『添い寝ラヴァーズ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
ebook Japan:クーポンが魅力です。無料漫画も多々あり。
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まとめ
今回は、イイモ先生の3作目のコミック『添い寝ラヴァーズ』についておしゃべりしました。1巻完結の短編集ですが、イイモ先生らしさのあるお話でした。
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