絵津鼓先生『JOY』:癒されない孤独感の対象法

絵津鼓
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こんにちは。

今日は、絵津鼓先生の『JOY』をご紹介します。

この物語は全2巻ですが、この1巻だけでも1巻完結として十分に楽しめる作品です。絵津鼓先生らしく、ポジティブで、読み手を鼓舞してくれるようなお話です。

作品データ

JOY

絵津鼓

刊行年月:2018年1月11日

出版社:講談社(Honey Milk Comics)

どんな作品?

絵津鼓先生の2018年作品。メッセージはしっかりとありますが、重すぎず、全体的に明るめの作品です。

シリーズとしては2作でていますが、この1巻だけでも楽しめる作りです。表紙カバーのデザインも素敵で、1巻完結のハッピータイムを過ごせます。

BLオンライン雑誌『ハニーミルク』vol.1 (2016年6月3日)からvol.18 (2017年11月3日)に連載された作品をまとめた1冊。

冒頭からにぎやかにスタートするのにホッとします。絵津鼓先生の作品は少しテーマが重いものが多いですが、それでも明るい雰囲気で描いてくれるのがありがたい。

理不尽なことや人生に起こる大小の困難も、時間が必ず解決してくれる。そう信じて突き進むしかないよ、とキャラを応援したくなり、また逆に読み手の背中も押してくれるようです。

少女漫画家の豪と、自ら漫画家として活動しつつ、豪のアシスタントもする阿久根の恋物語。恋心はメインで描かれていますが、お互いの過去と、そこからなかなか抜け出せない葛藤が描かれており、さらっとしたコメディに見えて、しっかりと奥行きのある作品です。

双方の背後につくサポーター強豪キャラたちとのにぎやかなぶつかり合いも楽しいですよ ❤️

カップリング

攻め:阿久根(漫画家。豪のアシスタントもしている。)

受け:豪(少女漫画家。人を好きになることができない。)

あらすじ

少女漫画家の男・豪(ごう)は、阿久根のアシスタントに助けられながら仕事をこなす日々に忙しい。阿久根のアパートで仕事をし、仕事が終わると二人で銭湯へ行く。

そんな関係の中、デビュー10周年にBLを描いてみないかと担当に提案された豪。そして偶然、阿久根がゲイだということも知ってしまい、急に阿久根を意識・観察し始めてしまう。

阿久根と一緒にいた響という男性の存在を気にしたり、阿久根の過去を知らない自分にショックを受けたり。そして、作品のためにも豪は、疑似片思いをしてみようと阿久根を想うフリをしてみたりーーー。

でも、あれ…… 擬似片思いをやめようと思っても、以前の自分がどう対応していたか、思い出せない。妙にドキドキ、もやもや。

自分は人を好きになることはできないと思っている豪は、この不思議な気持ちに振り回されることになる。

絵津鼓先生『JOY』のみどころ

作品の魅力1:Positive Energy

シリアスな作品もありますが、絵津鼓先生の作品は基本的にポジティブです。

この作品も、冒頭からにぎやかにスタートします。面白い作品のほとんどは、冒頭で心を掴まれますが、この作品もその一つです。

豪の視点で描かれるこの物語は、二人の人物像がはっきりと描かれています。

Boys Loveなので色恋はメインですが、絵津鼓先生の作品はいつもそれ以上の人間描写が巧妙です。

人間の性格は幼少時の影響が大きいですね。豪の性格、葛藤もそこから来ています。

豪は、子供の頃から友達が少なかったこともあってか、自分はいつも独りで、誰も自分をわかってくれない。そして人に対してもそれほど執着(興味)がないのだ、と感じている。

豪の家族の描写がないため、家族からの愛情はどれだけあったのかがわかりにくいですが、豪は、人の愛し方を知りません。恋心もそうですが、愛情の注ぎ方がわからないのではないでしょうか。

そしてそこから来る孤独感。幼なじみの女の子・智文(ちふみ)がよく遊びに来てくれているものの、孤独感は払拭されない。でも、阿久根が自分の横で自分の話を聞いてくれたことに恥ずかしながらも安堵感と心地よさを感じます。

孤独。現代の社会問題。人とのコミュニケーションが希薄になり、心に感じる空虚感。若者だけでなく多くの大人たちも感じている。スキンシップの少ない日本では、顕著にそれが感じられます。

もしパートナーでも友達でも、落ち込んでいる時があれば、隣にいてあげてほしい。ただ話を聞いてあげてほしい。できれば、手でも握ってほしい。もしかするとそれが相手の助けになるかもしれませんね。

それを優しさというかはわかりませんが、その行為は、自分がそれを必要な時に、どこからともなくやってくるかもしれません。不思議な宇宙の摂理。

作品の魅力2:Support 強豪の脇キャラ

この作品には、当て馬的なキャラとして、阿久根のセフレ!?の響が登場。そして、豪の幼なじみの智文(ちふみ)も存在感あり。どちらも強豪です w

響は、冒頭から阿久根の横に寝そべって登場します。しかも豪にしっかりと、「阿久根を好きになるなよ」と釘をさす。

しかしながら、豪を毛嫌いするのではなく、どちらかというと隙があれば観察している感じでしょうか。

豪の気持ちの変化もいち早く察知。昔から阿久根のことを知っている響は、彼なりに阿久根を応援したいんですが、豪に嫉妬?八つ当たり?してしまう時がありますね。しかし、基本的にはいいやつです。(絵津鼓先生の作品に登場するキャラは、大抵いい人たち。)

豪の幼なじみの智文の描写は少ないものの、昔から彼女なりに豪を支えてきました。豪は、自分は独りぼっちだと感じていますが、智文は結婚しながらも、時間をみつけては豪の家に遊びに来て豪を支えてきました。

豪は、自分にそういう友達がいることに気づいているのか、いないのか……。孤独感というのは、たとえ物理的に大勢の人に囲まれても払拭しないものだから、厄介ですよね。

この作品は、『JOY Second』(2巻)もリリースされていますが、そこで響についての描写があるようです。続きが気になる方は、ぜひチェックを。

作品の魅力3:Attention

豪が欲しかったもの。愛情

それも博愛ではなく、はっきりと、阿久根の「特別な人」になりたい、という恋心。

自分はずっと一人だと感じている豪ですが、それは誰かから愛されたいという気持ちです。

愛されたことがないと思っているので、愛し方もわかりません。

阿久根に「男だから……」と断られた時にすぐに一時的な拒絶を受け入れてしまうところなども、受け身な豪の性格が表れています。

対する阿久根は、実は当初から豪に興味は持っていたものの、仕事的にも雇われの身なわけで、行動を起こすわけにもいかず。

豪の阿久根に対する態度が少しずつ変化していく中、阿久根も対処に困っていきます。w

阿久根にとっても、豪は実は阿久根を気持ち的にも救ったところがあり、その旨をはっきり豪に伝えるのは、阿久根の性格がはっきりと描写されている印象的なシーンです。

にぎやかコメディで物語は進んでいるように見えるのだけど、些細な描写やセリフを読み込んでいくと、やはり細かなキャラ設定がしっかりと反映されており、漫画として巧妙に(でもわかりやすく)作り込まれた、みどころ満載の作品です。

絵津鼓先生『JOY』を今すぐ読む方法

絵津鼓先生『JOY』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。

Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。

ところで・・・

絵津鼓先生の商業BLのその後や小ネタを集めた同人誌が、電子書籍でも読むことができます。これはうれしい!残念ながらJOYの二人はまだありませんが、他の既刊のキャラたちのその後が楽しめます。まだ未読の方はぜひ!(下記のレンタ!から、サンプルがチェックできます。)

さらに・・・

絵津鼓先生が最近創作されている新作『IRUKA』のPrologueが、コミックシーモアさんで読むことができます!

絵津鼓先生の個人レーベル「forbit」発の作品。

BLではありませんが、絵津鼓先生が得意とする人間模様が描かれる作品になるのだと思います。印刷やデザインなど、ご自身がイメージしたものを作り上げていく、クリエイターとしての先生の一面を見ることができるかなと楽しみにしております。

電子でも読むことはできますが、形になったら、紙本として手に取りたいなと思っている作品です。(下記からサンプルチェックできます。)

 

まとめ

今回は、絵津鼓先生のコメディ『JOY』をご紹介しました。

絵津鼓先生の作品はどれも素敵ですが、この作品が好きな方はかなり多いと思います。

物語のまとまり方もよく、全編に拡がるポジティブな雰囲気が心地いいです。
本気読みしていろいろと考察することもできるのですが、きっとこの先生の作品は、癒しでいいと思います。

人生、山あり谷あり。自分で選択したことを、自分にできる範囲で続けていけば、後悔の少ない人生になる。恋愛ものなのに、いつも人生について考えてしまうのが、絵津鼓先生の作品なんですよね。

コミックシーモアでサンプルチェック

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