絵津鼓先生『SUPER NATURAL / JAM』大地の暴走の行方

絵津鼓
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こんにちは。

今回は、大好きな絵津鼓先生の『SUPER NATURAL / JAM』をご紹介します。

『SUPER NATURAL』シリーズの第2巻になり、こちらで完結です(全2巻)。

1巻では学生だった二人が、東京に上京して4年たった頃のお話。あの二人は仲良くやっているでしょうか!?☺️

作品データ

SUPER NATURAL / JAM

絵津鼓

刊行年月:2017年07月10日

出版社:プランタン出版(Canna Comics)

どんな作品?

絵津鼓先生のCannaからのコミックス『SUPER NATURAL』の続編。

1巻では学生だった暢(のぶる)と大地が、上京して同居生活を始めて4年たったところから物語が始まります。あんな仲が良さそうな二人がいったいどんなすれ違いになっていくのか、みどころの2巻。

BL雑誌『Canna』vol. 45 (2015/12) から vol. 52 (2017/2) まで掲載されたお話がまとまっています。1巻は学生編でしたが、こちらの続編は社会人編になります。

1巻の学生編では、暢がどうやって大地にアプローチしていくか、彼の考え方がメインの1冊だったと思います。

2巻は大地メインのお話です。二人の関係はラブラブで続いていたはずなのに、少しずつ大地の心に違和感が感じていきます。また、今までに感じたことのない不安。負の感情が空回りし、タイミングも相まって二人の関係は窮地へ……。

カップリング

攻め:暢(のぶる:アパレル店員。モデルもたまにお店に来るらしい。)

受け:大地(美容師。同期もいて、仕事は順調。相変わらず一人で考えちゃうタイプです。)

あらすじ

アパレル店員として働く暢(のぶる)と美容師の大地。

二人が上京して一緒に住み始めてから4年がたったころ。

相変わらずラブラブの二人のはずだったが、大地は少しずつ違和感を感じる。自分の体に変化を感じたり、暢と女の子の同僚との関係が気になったり……。暢からの愛情をしっかり感じているはずなのに、不安になっていく大地。

大地の態度が変わり始め、暢のまわりでも心の揺れが起こり、暢も何か違和感を感じ始める。微妙に二人の信頼が窮地にーーー。

絵津鼓先生『SUPER NATURAL/JAM』のみどころ

作品の魅力1:クオリティ

1巻の連載終了後からすぐに2巻目の連載がはじまってはいるはずなんですが、明らかにクオリティがアップしています。

コマの描写にそれが見受けられます。1巻を読んで感じたコマの空白部分。あれがなくなりました。背景もしっかり描かれているし、アングルなどにもバリエーションが増えて、よりリアリティが出ています。

前巻の学生編ではクラスメイトとの交流がありましたが、社会人編は、暢と大地それぞれの同僚とのやりとりがあるため、登場人物も増えました。

女性の同僚とのやりとりが増えているところもリアルですね。BL作品だと女性がほとんど出てこない作品が多いのだけど、絵津鼓先生の作品は、性別に限らずメイン・サブキャラどちらもしっかりと描かれているのが魅力です。

そこに、リアルな日常が見えてくるし、作品の奥行きがでてきます。

作品の魅力2:それぞれの葛藤

葛藤……まではいきませんが、関係がギクシャクしだした原因は、大地の不安が大きかったからかもしれません。

大地は無事に美容師になり、仲のいい同期もいて、月に1度はご飯を会話を楽しむ仲間がいます。仕事は順調なようです。暢との関係も順調……すぎるように見えますね。

設定では同棲を始めて4年ということですが、いまだに肌を重ねるのに恥じらいを感じている大地 w すごいね。健康的な男子、24歳が、4年目でも恥じらいを感じている。

冒頭から、相変わらず大地は自分の思っていること、感じていることを言葉にして暢に伝えていないんだなと読み取れます。この二人の問題、それはコミュニケーションです。

大地は、仕事場で「ゲイなんですか?」と聞かれます。暢との関係がバレてしまうという恐怖感を感じるのではなく、周りの人に男として見られていないのではないか、と不安に感じています。

また、体に変化も生じています。受けの立場で、以前よりも体が敏感になったことに、やはり不安を感じている。

暢の同僚に女性の影が見えると、またどきっとする。

自分自身の変化、そして自分が知らない暢の仕事環境からくる不安などが、次々と大地に襲いかかります。

一方暢の方はというと、実は以前の学生時代とそんなに変わっていません。思ったことは言葉に出すし、大地を大切に思っている気持ちは昔と変わらず。いや、感情をコントロールできるようになったので、暢はかなり成長したといえます。w

唯一、同僚の女性から少しアプローチを受ける場面はありますが、心はひと時とも揺れ動くこともありません。もちろん、読者にはわかり切っていることなんですが。

ですので、結局最後まで読んで、大地の不安が度を超えていき、なぜか二人を窮地に追い込んだといって過言ではなりません。

ただ、不安が募っていく理由の一つは、コミュニケーションの問題。大地は自分が思っている不安や考えをうまく言葉に表すことができないし、なんとか自分の中で処理しようという性格の持ち主です。

頭の中でぐるぐる考えても、解決はできません。そもそも「問題」というものは、解決できないものが多いですから。w しかも、考えているだけでは全く意味を持ちません。それをどうにかしたいのなら、まずは言語化して、解決方法を見つけ出していくしかないのです。

絵津鼓先生『SUPER NATURAL/JAM』ネタバレ!?感想・レビュー

1巻よりもパワーアップ

作品の総合的な出来としては、個人的には2巻はパワーアップした感じがあります。お話も2巻の方が好きです。前記しましたが、コマの描写が前にも増してよくなりました。

ただ、物語だけを取り出してみると、2巻は少しまとまりに欠けていると感じました。

大地、暴走する

2巻は、大地の視点がメインでお話が進みます。

大地が、暴走します w

彼の中で、いろんな不安があれこれ生じていって、最後にそれが爆発する、という…… w (

念のため誤解のないように、この作品、私は大好きだという前提で、おしゃべりしています。)

大地の不安が募っていく感じはわかるのだけど、その度に暢がなんとか対応します。大地の気持ちもおさまったようにように見えるんです。でも、また次のエピソードで違う不安が大地を襲い、同じことを繰り返していきます。

1冊を通した大きな波が感じられず、すごくもったいないです。そして、小さな不安の原因は結局のところ解決していない w

また、大地の不安のタネもちょっとわかりにくいです。

「男として見られたい」「男として扱われたい」という思いがある大地ですが、大地の定義する男性像なるものが、私には見えてきませんでした。

だから、大地が思っている男性像と現状がどれだけかけ離れているのかも私にはわからなかったし、それに近づくために解決方法を探るわけでもありません。

問題の解決方法

そしてラストに向かうのだけど、ラストで暢が出した結論が正しいんです。

二人が一緒にいる間は、大地の不安を解消することはできない。

ただ、別れようという言葉は出てきません。

不安を取り除くのは無理、というのが結論であって、決して「別れ」が解決方法ではない。

(少なくても今すぐには)解決できない問題もあるんですよ。そして、それを理解した上で、そのまま解決しなくてもいいと、私は思います。それもある意味、問題解決の方法だと思うんです。

だから、クライマックスにある大地が叫ぶシーンがあります。
このシーン、好きな読者の方も多いかもしれません。
でも、私には、あの叫びは残念ながら今一つ響かなかった。
この二人はコミュニケーションが問題だし、特に大地は自分との対話が必要だと思いました。

大地が「自分がどうありたいか」を見つめていく物語だったのなら、大地が思う理想像の定義があったほうが私には読みやすかった。理想ではなく、不安な気持ちしか伝わってこなかったので、結局なぜあのクライマックスのシーンでその不安が消え去ったのかが理解し難いのです。

しかしながら、こういった彼らの問答自体がコミュニケーションであり、人との付き合い方の難しさを教えてくれます。

あくまでこれは私の個人的感想であり、この作品自体への個人的評価は良作だと思っています。もちろん、オススメ作品です。

読まれた方は、2巻のラストをどう受け止めましたか。

教えていただけたらうれしいです。

絵津鼓先生『SUPER NATURAL/JAM』を今すぐ読む方法

絵津鼓先生『SUPER NATURAL/JAM』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。

Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。

ところで・・・

絵津鼓先生の商業BLのその後や小ネタを集めた同人誌が、電子書籍でも読むことができます。これはうれしい!SUPER NATURALの二人のその後を覗くことができます。お馴染みのメンバーもちらっと登場しますよ。まだ未読の方はぜひ!(下記のレンタ!から、サンプルがチェックできます。)

さらに・・・

絵津鼓先生が最近創作されている新作『IRUKA』のPrologueが、コミックシーモアさんで読むことができます!

絵津鼓先生の個人レーベル「forbit」発の作品

BLではありませんが、絵津鼓先生が得意とする人間模様が描かれる作品になるのだと思います。印刷やデザインなど、ご自身がイメージしたものを作り上げていく、クリエイターとしての先生の一面を見ることができるかなと楽しみにしております。

電子でも読むことはできますが、形になったら、紙本として手に取りたいなと思っている作品です。(下記からサンプルチェックできます。)

まとめ

いかがでしたか。今日は、絵津鼓先生の『SUPER NATURAL/JAM』をご紹介しました。シリーズの2巻目になります。大好きな作品です。未読の方はぜひ読まれることオススメします。ぜひ感想も教えていただけたらと思います。

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