絵津鼓先生『メロンの味』下巻:時間は変化なり

絵津鼓
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こんにちは。

今回は、絵津鼓先生の代表作『メロンの味』下巻を読み終わりましたので、ご紹介と、自分の感想を少しだけおしゃべりしようと思います。

絵津鼓先生の作品はどれも素敵ですが、この『メロンの味』は間違いなくBLの歴史に刻まれる作品ですし、BLの歴史を追う上で必ず読んでおくべき先生の一人だと思います。下巻でどんな結論になるのでしょうか。

作品データ

メロンの味 下巻

絵津鼓

刊行年月:2021.10.15

出版社:大洋図書

どんな作品?

絵津鼓先生が、以前からの絵柄を変化させて描かれた2021年作品。

以前は可愛らしい絵柄を描かれていましたが、この作品からは少し大人っぽいキャラになっています。

ゆっくりと進む日常で、愛を求める中城と、自分の内側から創造することができなくなったアーティストの木内のお話。二人の人間の関係が変化していく過程が丁寧に描かれています。

下巻で木内の病のお話が出てくるため、少し重い内容にはなっていますが、そんな中でも描かれているユーモアあふれる日々の情景のコントラストがなんとも言えません。

カップリング

攻め:木内昌汰(きうち しょうた:やりたいことが出来なくなった人)

受け:中城親(なかじょう ちかし:愛されたい人に愛してもらえない人)

絵津鼓先生の『メロンの味 下巻』のあらすじ

同居を始め、一つのベッドで人肌を感じながら眠るようになった二人。何度かキスもした。

ゲイの中城は、ノンケのはずの木内の人懐こさにまどわされ、微妙な関係に少しイライラを感じる。

二人の距離はさらに近づいていくのだけど、そんな中、中城は木内の病のことを知ります。

中城の家庭の状況にも変化があり、二人の関係も徐々に変わっていきます。

絵津鼓先生の『メロンの味 下巻』の見どころ

上巻もとてもいい作品でしたが、下巻はもう少し木内にフォーカスした内容になっています。彼のミステリアスな闇の部分。掘り下げて描かれています。

作品の魅力1:間接的な木内の病の描き方

上巻から少し登場していた木内の心の闇。

足元が暗くなったりと、想像はしておりましたが、闇の部分である病について、少し掘り下げて描かれています。が、直接的なものはなく、会話を通して読み取っていくスタイルです。これもやはり、現代社会のエレメントの一つ、ですよね。

症状の大きいもの、小さいもの、気付いている人、そうでない人…。若い人も、歳をとった人も、気づかぬうちにこういう状況に陥ることはあると思います。

目に見えないものを周りが汲み取るのは難しいし、自分も気づかない。そしてそれを受け入れたくない自分もいる。

病のことははっきりとは書かれていないのだけど、物語のラストで木内が打ち明ける言葉が胸に刺さります。

絵津鼓先生自身も心を患ったことがあるようで、大変な時期があったのだと思います。思うようにことが進まない不安、止まってしまった時間、闇・・・。そのような、先生も感じたことがある世界を描写しています。

作品の魅力2:エンディング

読者の好みもあるかもしれませんが、この物語のエンディングははっきりとしたものではなく、物語の始まりと同じく、穏やかな日常の中で終わっていきます。もちろん、二人の関係性は見えるのだけど、こういう終わり方もいいですよね。

起承転結のはっきりしたお話ではありませんが、それが逆に、よりリアリティがあるというか…。彼ら二人の人生の一部を切り取った形で終わらせてくれました。

描き下ろしのその後もあります。それが見たかったかどうか… この物語に限っては、正直どちらでもよかったかもしれない。

でも、こういう二人の選んだ人生も面白いし、1億人以上いる日本人の人生は、型にはまらない、またはハマれない人もいることを再確認させてくれます。

歳を取るにつれて、それを実感し、自身も経験した私には本当に響くエンディングでした。

作品の魅力3:恋愛の行方

この作品には恋は描かれておりません。

愛情、それも欲情の向こうにある人と人との心のつながり。

上巻に書かれていましたが、ゲイの中城は自分たちの「母数」が少ないから(つまり、もともと少ないゲイの中で、恋愛の相手を見つけるのは非常に困難である)、と恋愛に関して悲観的な考えを持っています。

でも下巻を読むと、ゲイかどうか、彼氏彼女のお話は薄い言葉でしか出てきません。より深いところでの人間の関係性が描かれています。

ふと二人の人間が出会って、つながっていく過程。百人十色の愛情。そして、そこに絵津鼓先生の魅力的な絵柄と雰囲気で、エロス(色気)さえ感じる。なんとも言えない読後感を味わえます。

好き合っている二人、一緒になって欲しい・・・などという感覚は、私の中には生じませんでした。ただ、愛や理解、エンパシーを求める二人の人間のつながりの物語として、読みました。

絵津鼓先生『メロンの味』のネタバレ!?感想・レビュー

上下巻を読み終わった感想です。

月並みな言葉で申し訳ありませんが、とても、とても素敵な作品でした。カテゴリーとしてはBLになりますが、普通の漫画として読んでも、よかったな〜。

普通のカテゴリーになると、二人の関係性はもちろんのこと、他のキャラやディテールももっと細かく描かねばならないという固定概念に迫られるかもしれないのだけど、しっかりと二人の関係性を丁寧に描いた作品って、最近の作品ではあるのかな…。

ユニークな登場人物たちがラブコメを展開するのも面白いけど、時々頭がキャパオーバーになることも多々あるんですよ。いや、これは歳のせいか!?w

セリフも、生活も、等身大のもの。リアルなもの。そういう作品がもっとあってもいいと思います。

だから自分がBLを好きなのは、そこが理由なのかもしれない。メインのCPの関係性がしっかりと描かれている作品が好きなんですよね。

作品のあとがきに、絵津鼓先生ご自身も患ったことが記されていました。それでも創作活動を続けていらっしゃり、本当によかった。先生ご自身の経験もあるから、下巻の最後で木内が自分の心の内を打ち明けるシーン、妙にリアリティがあったのかな。もしかすると私自身も共感できるところがあるからかもしれませんし。

心の病は目に見えないものなのだし、自分でもわかりにくいですよね。でも、なんらかの溝、歪み、ギャップが生じたところにはエネルギーが生じる。そのエネルギーは、年月を重ねるとどんどんと大きくなっていく。どんなエネルギーも発散せねばならない。急かしない現代社会の日常で誰もが経験する気持ちを描くことで、作品としての魅力もあるし、リアリティを感じる。そしてエロスさえ感じました。

そしてもう一つ、「時間」の概念についても考えさせられました。

木内の中で、時間は過ぎているようで過ぎていないんです。概念的には10年とか過ぎているんですが、時間を実感するには「変化」が必要。木内はその「変化」を感じているんでしょうか。周りの変化を見ることで「自分は取り残されている」と感じているのだけど、彼自身の心の中で、時の流れを感じられるだけの変化はあったのか。数字だけではない、木内自身の時間の捉え方がすごく気になりました。

若い頃から漫画を読んできて、日常を切り取ったタイプの作品は、どこか狙ってる感じがあり、個人的に毛嫌いしてしまうことも多々あるのですが、絵津鼓先生の作品は、そのような私個人の勝手な嫌悪感も全く感じることなく、むしろ自然体の先生の物語を受け入れることができました。おそらく、読者それぞれにひっかかる要素がたくさんあるだろうと思います。

ぜひ多くの人に読んでほしい作品だなと思います。

絵津鼓先生の『メロンの味 下巻』を今すぐ読む方法

絵津鼓先生の『メロンの味 下巻』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

今すぐ、サンプルページをご確認できます。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。

コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。

Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。

こちらの本は、電子書籍でも十分に楽しめますが、表紙の紙質もよく、秀作なので、紙本でご購入されてもいいかと思います。

まとめ

今回は、絵津鼓先生の『メロンの味 下巻』をご紹介しました。BLに限らず、漫画が好きな方にはどなたにもオススメしたい作品です。

少しゆっくりと時が流れるので、勢いのある作品ではありませんが、テーマ、そして先生の表現力と雰囲気、とても素敵でした。少し重い内容なので、心に余裕のある時に読むことをオススメします。

どんな人にも、居場所があるよね。

あって、いいんです。

私は、そう信じています。

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