作品データ
カラーレシピ 上下巻
はらだ
刊行年月:2018.05.15(新装版)
出版社:新書館
どんな作品?
はらだ先生の作品の中でも人気が高い作品です。
美容院で働く社交的なイケメン美容師、福介(ふくすけ)と、人間関係が苦手だが真面目な笑吉(しょうきち)の異常な執着のお話。
もともとは1巻だけだったようですが、後に2巻が登場して、今は新装版、上下巻でリリースされております。上巻だけでも十分楽しめますが、下巻になるとテイストが少し変わり、賛否両論わかれるかも!?
はらだ先生の作品の中では、ダークなものだと『にいちゃん』の人気が非常に高いですが、私はこの作品の方が心理がよく分析されている作品だと思います。
カップリング
攻め:福介(社交的でイケメン。仕事もできるが、執着がすごい)
受け:笑吉(無愛想で、人付き合いが苦手。頑固。)
はらだ先生『カラーレシピ 』のあらすじ
技術はあるが、無愛想でなかなか指名客がつかない美容師の笑吉。
尊敬する美容師、ミカドさんのところで悩みながら仕事を続けていたところ、イケメンで社交的なスタイリスト2年目の福介がやってきた。
タイプの違う二人が衝突しながらも距離を縮めていくのだけど、笑吉の周りで不可解なことが起こり始めますーーー。
はらだ先生『カラーレシピ 』のみどころ
作品の魅力1:狂気ともいえる福介の執着
この作品のみどころは、なんといっても福介の狂気。手に入れたいものは、何かを踏み台にしてでも必ず手に入れる。彼の執着がとにかくすごい。
執着心の強い人は結構いると思います。はらだ先生自体も執着心があるのだろうか。w 少なくても性的な要素も絡めて狂気とまで言える執着心を見事に描いています。もちろん、好き嫌いはあるでしょうが、はらだ先生の観察眼が興味深い。
笑吉にすっかり惚れ込み、手に入れたい福介。働き場所を調べ、ミカドさんに近づき、相手の近くに擦り寄る。そして、相手の性格を細かく分析。暴力で手に入れるよりも、細かな心理戦略で着実に笑吉に近づいていく。
狂気のように描かれていますが、実際私たちが普段していることで、さらにもっといえば、営業ではよくやる方法ですね。私たちの周りに蔓延るセールストークと嘘の数々。w
この作品でも、同僚の りく が見抜いておりますが、うそは必ずバレます。わかっていて、あえてひっかかる場合もありますが。観察すれば、必ずどこかに綻びがでている。その綻びも少しずつ物語で表現されているのも面白いです。
作品の魅力2:笑吉から見る、もろい人間心理
一方、笑吉のほうは、愛想がない。美容師としての技術もあるのだけど、寡黙。そのため、商売としてなりたたせるのが難しい。
「職人」あるある問題です。w 技術だけがあってもダメだし、外面がいいだけでも技術がなければやってけない。バランス、そして人と協力することで成り立っていくわけで。
それはビジネスだけでなく、人間関係もそうですね。自分がない部分を相手に求めるし、相手ができないことを自分がしてあげられたら、喜びを感じる人もいるかと思います。一人じゃ、生きていけない。だから人は、人との繋がりを模索するんじゃないでしょうか。
上巻冒頭の笑吉は、スキルをあげるよう、悩みつつも日々猛進していますが、不可解なことがいくつか彼の周りで起き始めます。彼の中で、自信や確信、正しいと思っている概念が少しずつ崩れていく。福介の策略もあり、数少ない笑吉の指名客に不安を抱くようになっていく。
この策略の描写、はらだ先生、見事に描いてくれました。上巻の笑吉の気持ちの揺れも、先生の愛着ある絵柄で不気味な雰囲気を残しながらもどこか温かみがあるんです。笑吉は、ですが。w
人との関係性、心理というものが非常にもろく、いろいろな外的要因による影響が強いことが見受けられます。
ちなみに笑吉の恋愛もはっきりと定義されていないのも面白い。
押しの強い福介と関係を持つのだけど、自ら心を開いてはおらず、少し客観的に自らの関係性を見ている感じがします。笑吉から福介に手を出す行動が一切ない。ただし、まったく福介の一方通行という感じでもない。
微妙な心の状態を、Rシーンを通して読み取ることができるのも面白い。
BLならでは、ですね。体は正直です。w
はらだ先生『カラーレシピ 』ネタバレ注意!?感想・レビュー
上巻には2015年から2016年1月の雑誌収録分が収録されており、単巻でリリースされていたようです。その後、2017年からまた連載が始まり、そちらをまとめて、新装版として上下巻がリリースされました。
上巻がリリースされた段階で続編を考えていたかどうかはわかりませんが、上巻のまとまりはとてもよかった。狂気がありつつも、二人の関係性と心理描写が丁寧に描かれています。
個人的にはらだ先生の作品は、少しダウナーでネガティブな作品が先生のオリジナリティがでていると思うし、特にこの作品は、キャラの心理が事細かく分析されている。
しかしながら、下巻で雰囲気が変わります。より二人をほりさげていくのだけど、相変わらず笑吉の性格はあまり変わらず、前へ進まない。その一方福介はそれに嫌気がさしてきて、欲が出てきた。もっと笑吉を独占したい。自分が笑吉の中で一番になりたい。そんな気持ちから、相手を壊してしまう行動に出てしまう。
はらだ先生の作品は、たまに少し暴力的な描写がありますが、そこで賛否が分かれてしまいます。
この作品は心理的な暴力があり、そこをどう読者として噛み砕いていくか、考えどころ。作品としての価値は十分にある。ただ、今のご時世。多くの読者は結局ハピエン、ラブコメ系を求めてるっていうのは否めないです。こういうエッジの効いた作品って意外と少ない。
だから貴重だし、鬼才と評価されることが多いのですが、少し長く漫画に接してきた人なら、それほど珍しい作品でないと思うかもしれませんね。昔話はしたくありませんが、10、20年の単位で漫画を読んでみると、昔は結構どぎつい内容のものが…普通だったりします。w
はらだ先生『カラーレシピ 』を今すぐ読む方法
はらだ先生の『カラーレシピ 』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
最初の数ページをサンプルで今すぐ読むことができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアは頻繁にクーポン割引あり。
Renta!は、レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。
はらだ先生の『カラーレシピ』をもっと楽しむ方法
はらだ先生の『カラーレシピ』を漫画以外で楽しむ方法がいくつかあります。
ドラマCD
マリン・エンタテイメントのオフィシャルドラマCD
『カラーレシピ』のドラマCDは、2枚出ているようです。(vol.1とvol.2)
残念ながら、vol.1は販売終了ということで、少しプレミアがついているようですね。
vol.2はまだ新品で購入できます。
プレミア価格は「ちょっと聞いてみようかな」という方には少しハードルが高いですが、ファンの方やコレクターの方はぜひご検討ください。
オーディオDLも、見当たりません。残念ですね。
ディアプラス2019年6月号付録CD
はらだ先生が描くキャラは、どのお話も魅力的で、一度読んだら忘れることのできないキャラ。どうやらこの作品、ディアプラス2019年6月号付録CDがあるようです。
CDが付録なんて、豪華〜。
インフレとなった今は、もうBL雑誌の付録はないのでしょうか… 。
はらだグッズ
はらだ先生の作品は、なんといっても魅力的なキャラが多いですよね。ということで、グッズもいろいろとあるようです。初回特典のグッズなどはもちろん、先生の個展でもグッズ販売しております。クリアファイルやバッジ、そしてイラストも見たことがあるけど、素敵ですね。
ファンの方もそうでない方も、覗いてみると、先生のイラストの魅力にハマるかもしれません。☺️
まとめ
はらだ先生の作品に欠かせないRシーン。今回は意外と少なかったです。その分、この作品はもっと心の奥にある心理描写に集中していました。
描写はすごく興味深く、また先生の分析も特有性がある。
はらだ先生の世界観は、私が読んで感じるのは、いつもどのキャラも愛らしいけれど、共感ができない、ということ。まぁキャラがぶっとんでるからかもしれません。w でも、受けにも攻めにも「共感」は出来ない。だからこそ、作品を読む際に第三者として考察や分析ができるのだと思います。(あくまで、私の個人的な感想です。)
はらだ先生に魅力を感じます。描く作品ごとにテーマもカラーも違う。しかしどれも完成度が高い。ぜひこの作品、未読の方は読んでみてください。貴方がどう感じたか、コメントでシェアしていただけるとうれしいです。
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