作品データ
犬も喰わない
彩景でりこ
刊行年月:2015.11.10
出版社:竹書房
英題「Even a dog won’t get involved in a quarrel among 3 men who aren’t satisfied.」
どんな作品?
BAMBOO COMICSからの彩景でりこ先生のコミックス。『蟷螂の檻』が話題になっていたけど、そちらを読む前にまず短編集を…と思い、こちらを見つけました。
タイトル作は、中年男性二人と若者の三角関係。そして、他の中年男性3人の想いが交差する連作が収録されています。
それにしても、ペンネームが彩景でりこ(さいけでりこ)→ psychedelicoって、そこからゾクゾクしてます〜。むふふ。
カップリング
攻め:山代(やましろ・大学教授)
受け:空木(うつぎ・調査員)
受け:奥園(おくぞの・大学教授)
『犬も喰わない』:歪んだ三角関係
物語は、大学教授の山代が、妻が浮気をしているのではないかと探偵事務所に調査を頼んだところから始まる。そして妻の浮気相手は、大学の同僚教授、奥園だと知る。しかし奥園は山代と同じ高校の後輩で、昔から山代へ執着していた。浮気調査員の空木はそんな二人の不思議な関係に気づきながら、実は偶然にも昔、奥園へ恋をしていたーーー。
作品の魅力1:彩景でりこ先生の描く三角関係
山代と奥園は、中年です。50代かな…。正直おしゃれな中年とは言い難い。w そんな中年男性がずっとお互いを探ってきた不思議な関係。奥園の執着は面白く、学生時代のそれも描かれております。難しい言葉は使われていないものの、どこか文学的に語られているところも、作品を大人の雰囲気に盛り上げてくれます。
絵柄が大人っぽい感じなので、感情が読み取りにくい場面が少しあるものの、行動で示してくれているのも面白い。
奥園と空木のシーン。奥園がひざまづいて靴を脱がせるシーンは、余裕のなさというよりも彼のそれまでの行動が表れているのか。あのがっつき感、欲情は、空木に対してなのか、空木を介しての山代に対してなのか…
作品の魅力2:ディテールのある絵
今まで読んできたBLであまり見なかったディテールがこの作品にありました。👍
すね毛、です。
絡みシーン、あと探偵事務所の上司の話に登場する男の子(この茜はてっきり女の子だと思ってたので、すごく混乱した)にすね毛がありました。違和感はないのだけど、すね毛があることで男性臭がでるかといわれてると、これまたそうでもないのだけど…。
絡みシーン。モノそのものはほぼ登場しません。また表現も激しくない。たまたまこの作品がそうだっただけかもしれませんが。見せても、見せなくても、エロティシズムは表現することはできますよね。この作品のエロスは、おそらくキャラの絵柄、そして非直接的な愛情表現から感じられるかと思います。
空木と奥園の絡みシーン。その前に空木は山代と既成事実を作ります。それを考慮しての奥園とのシーンを見てみると… 残ってますね、痕(あと)が。こういったディテールがフィクションとしての物語に息を吹き込んでいます。
作品の魅力03:絵柄の幅が広い
この作品で、探偵事務所のもう一人のお話が出てくるのだけど、その相手(茜)が女の子… だと思ったら、男性でした。w
騙された!笑
すっかり女の子かと思っていたのに、あるシーンで すね毛 がっ!
思わず、「男かーいっ!」って声に出してツッコミしちゃったけど、それって私だけじゃないですよね!?
でりこ先生が描くキャラって、女性、もしくは女性っぽい男性もいけますね。多くの作家さんは女性を描くことを避けたり、描いてもあまり魅力的じゃなかったりするんですが、でりこ先生の絵は、男女どちらもすごく魅力的です。そしてやはり「和」の雰囲気がある。やはり画力が高いと思います。
『写真』『告白』『骨』
中年ネタが続きます。こちらの連作も3人の中年のお話。1人が亡くなったところからお話がスタート。「死」から始まるこの設定自体が、もう同じ中年としては痛々しいよ。w 幼なじみだった3人のお話で、こちらも三角関係なんです。ただ矢印は3人の中で回らず。やるせない気持ち…
愛の形はいろいろあって、年月が経てば経つほど歪になるものもある。
多くの読者が「ハピエン」を望む近年の傾向。でも、本当の「ハピエン」って、誰が決める?何がその人にとって幸せなのか。その人が感じるところ、第三者が感じるところ。その価値観、結局答えはないと思います。
自分の人生を考える上で、やはり幸せは自分の中にあってほしい。自分(主人公たち)が幸せと感じられるエンディングが、ハピエンなのであって、メリバという言葉で片付けるのももったいないです。
あ、このお話でもすね毛が描かれてました。w
彩景でりこ先生の『犬も喰わない』を今すぐ読む方法
彩景でりこ先生の『犬も喰わない』を今すぐに読む方法は、電子書籍です。
1巻完結の作品ですので、1時間ほど開いた時間があれば読めてしまう作品。
サンプル立ち読みもできます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。どちらもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアはクーポンが魅力。Renta!は、レンタルやスタンプ機能などがあり。
この作品、私は紙本で持っています。電子書籍の表紙の色合いをみたのだけど、残念ながら表紙の色合いの良さが出てません。片手で持っている本のピンク、そして存在感のあるソファの深みのある緑。この色がポイントなんですよ。なぜかデジタルでは色が飛んでしまっている… (下の写真は紙書籍の色合い。)
彩景でりこ先生の『犬も喰わない』をもっと楽しむ方法
彩景でりこ先生の『犬も喰わない』を本編以外でもう少し楽しむ方法があります。
楽しむ方法1:ドラマCD
ドラマCDの威力、まだ座裏屋先生の作品しかチェックできておりませんが、最近この威力を知りました。漫画もいいですが、オーディオならではの世界観も楽しめます。
私はまだこの作品のドラマCDを聞いていませんが、もしオーディオドラマに興味があれば、聞いてみると面白いかもしれません。
※ 残念ながら、サンプルは見つけられませんでした。また、オーディオDLはないみたいです。
楽しみ方2:同人誌
彩景でりこ先生に関して、あまり詳しくはないのですが、商業BLの傍ら、同人誌活動も積極的に続けているようです。古い同人誌がたくさんあるな、と思っていたら、このお話のものや『蟷螂の檻』のものもある。それって、かなり最近ですよね。w
同人誌でしたら、DLsiteがるまに さんのサイトが品揃え豊富です。
このサイトは、同人誌やBL、TLの漫画やオーディオの品揃えが豊富でちょっとえちぃので、サイト内を探索するときは、きわどい画像等にお気をつけください。w
ただ、オリジナルのBL作品もあるし、なんといってもドラマCDのサンプルが豊富です。(購入したら、ブラウザ上ですぐに聞くことができます。)座裏屋先生の作品をここで見つけましたが、サンプルに感謝です。
まとめ
彩景でりこ先生の作品、初めて読みました。そのため、先生のスタイルがまだわかっておりませんが、個人的には好きな作風。自分の好きな心理路線でもありました。
令和のノリではなく、小話を思い起こさせる雰囲気で、先生の代表作となった『蟷螂の檻』からみても、やっぱりこういう雰囲気がこの先生なのかな、と思ってしまう。絵も「和」が似合いますね。BLという限られたジャンルの中で、いろんな作家さんのスタイルが楽しめて幸せです。
商業作品を連載されているのに、積極的に同人誌も描かれているようで、精力的に活動されているようですね。次は『蟷螂の檻』を読もうと思ってます。
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