こんにちは。
今回は、座裏屋蘭丸先生の人気作品の一つ『リカー&シガレット』をご紹介します。
作品データ
リカー&シガレット
座裏屋蘭丸
刊行年月:2018.05.24
出版社:幻冬舎(リンクスコレクション)
どんな作品?
2016年10月号~2018年2月号まで雑誌『リンクス』で連載された作品です。BLアワード2019年で第1位。このBLがやばい!でも上位に選ばれた人気の作品。
幼なじみのお話。設定はありきたりなお話のようなんですが、これがまた可愛いんです〜!座裏屋先生が描くかっわいいカミオとテオ。
純粋なテオとやさしく指南するカミオ、そして座裏屋先生が得意とする海外の世界観。お話、キャラ、世界観と先生の爆発的画力のすべてがマッチしたのがこの作品。
強烈な破壊力!
この作品の連載とほぼ同じ時期に『コヨーテ 』も連載開始されています。全く違う世界観ですが、どちらも人気のシリーズとなっております。この作品は1巻完結でまとまりもよく、とても読みやすい長さです。
『PET契約』や『眠り男と恋男』であった激しいプレイはなく、やさしい二人の物語になっています。
作中とにかく愛情溢れており、短編では見られなかった葛藤、あま〜い愛情表現、心理描写が増すに増していて、人気作品の理由がわかります。
作品は明るい雰囲気で、ほどよい絡みシーンがあります。
絡みシーン、激しくはないんだけど、テオの気持ちを尊重しているカミオの愛情がたっぷりで、私にとってはこういう作品の方がたっぷりエロスを感じました。
カップリング
攻め:カミロ(黒髪長髪:タバコ屋。長年テオに想いを寄せている。やっさしい!)
受け:テオ(金髪:カミロの向かいにある酒屋を経営。カミロの気持ちにドギマギ)
あらすじ
酒屋を営むテオ(受)と、その向かいにあるタバコ屋を切り盛りする長髪のカミロ(攻)。二人は幼なじみ。
長身でハンサムなカミロのタバコ屋にはいつも女の子たちがやってくる。
しかし実はカミロは幼なじみのテオに思いを寄せていて、少しずつ自分の気持ちを打ち明けていく。
テオは今まで誰も好きになったことがなく、男のカミロに心が揺れるのに戸惑いを感じていた…。
座裏屋蘭丸先生『リカー&シガレット』の破壊力がすごい
座裏屋先生の画力は本当に魅力ですが、絵がきれいすぎて、お話やキャラ設定、世界観などとの「ズレ」を短編集では少し感じておりました。
しかしこの1冊にまとまった『リカー&シガレット』で、先生の持ち味の全てが1点集中、ピタッと焦点が合ったのではないかと思います。
お話はシンプルな幼なじみのお話で、特別なことも起こらないのだけど、主人公二人の心情の揺れがすごく丁寧に描かれています。
しかも、私たちの身近ではなく、異国の地を舞台に描かれているので、映画のようにぐいぐいと作品に惹かれていきます。
みどころはたっくさんありますが、今日はいくつかピックアップしますね。
作品の魅力1:スペインのような異国が舞台
座裏屋先生の作品は、海外舞台が多いですね。キャラもほとんどが外国人。その時点で他のBL作品とは違った世界観が広がります。
この作品は、ヨーロッパ、特にスペインのようなところが舞台です。「ブドウ収穫祭」とクライマックスイベントと絡めた盛り上げ方で、ラストに向けてじわりと最高潮に向かっていきます。
テオの褐色肌と、長髪・カミロの愛情も、この雰囲気にマッチしますね。
第1話は2016年10月発表ということで、コヨーテ(2016年4月)とほぼ同じ時期に描かれています。どちらも異国だけど、全く違った雰囲気を楽しめる。作風はこちらの方が明るくコミカルなキャラで、好きです。
作品の魅力2:キャラの愛情の深さ
カミロ(攻)とテオ(受)。作品を通して、二人の愛情の深さを感じます。
座裏屋先生の作品はどれも優しいセリフが多いですが、それは愛情があるから。
テオはとてもウブだけど、そんなテオを優しく受け入れてくれるカミロのセリフがどれも優しくて・・・。
そして、言葉だけではなく、肌の触れ合う感じ、触り方、抱擁の強弱…。ラストのシーンで二人が抱き合うシーン。けっして力強くはないのだけど、カミロが優しくテオを包み込むようにハグをするところは、カミロの悦びと安堵感がコマから伝わってきます。
ラストの絡みのシーンも、絡みそのものよりもシャワーシーンにドキドキ。このドキドキは、やらしさ(エロ)からくるドキドキではなく、エロス、つまり愛情の深さからくる高揚感。
愛情で心が満たされた時に涙がこみ上げてくる感じ。そんな満たされた感じを座裏屋先生は描いてるのではないでしょうか。
…って、私、ちょっとハマりすぎかな…!?w
作品の魅力3:Accept yourself as you are
『PET契約』『眠り男と恋男』『コヨーテ 』の3作に比べると、穏やかな話だからか、よりメッセージ性を感じます。
カミロはバイという設定で、テオに恋してる。テオは保守的な考えを持っていて、自分が男性を好きになるなんて…と戸惑っている。
そこで、カミロはゆっくりとテオが自身の気持ちに冷静に向き変えるように環境づくりをしていきます。
人前で男同士が手をつないでみたり、テオの気持ちをゆっくり確認したり…
一方テオも、カミロに対して幼なじみ以上の感情を持っているのだけど、その気持ちがなんなのか、受け入れていいものなのか、戸惑います。
カミロはいつだってカミロらしい。カミロは俺を無理にモノにしたいんじゃなくて、俺の信頼を得たいんだ。
引用:座裏屋蘭丸 『リカー&シガレット』, 2018
テオもゆっくりとカミロを見つめ、自分の心もゆっくりと見つけていく過程が丁寧に描かれています。自分の気持ちをそのまま受け入れ、自分らしく在る。そのメッセージは読むたびにひしひしと伝わってきます。
作品の魅力4:座裏屋蘭丸のエロス
先生のエロス観。
『PET契約』のあとがきに、
「萌えよりもエロス」
作品の創作において最も強いパッションは「エロス」
とありました。
『PET契約』を読んで、先生の言う「エロス」とは、エロいこと、つまり性的欲求を満たすための行為を指すのかな、と思ったんです。
私が思っていた「エロス」は、愛の向こう側を確かめ合うための行為。肉体、精神を超越した愛情だと考えていたため、それは『PET契約』からは感じなかった。
しかし、この作品を読み終わって、絡みシーンのほとんどが、愛情豊かなそれであるのは、やはり先生の指す「エロス」は哲学的なそれではないだろうかと思いました。
自分の「エロス」の概念にも共通するものがあるんじゃないかと、再確認したんです。(PET契約と、眠り男…を何度も読み返していくと、見えなかったものが見えてきました。)
この作品を読む際に、手を観察してみてください。触れる強弱が伝わってきます。
目を観察してみてください。切なさ、うれしさ 、悦びが伝わってきます。
一コマ一コマの描写を丁寧に汲み取っていくと、不思議と二人の呼吸が聞こえてきませんか。
座裏屋蘭丸先生のおすすめ作品5選。ランキングでご紹介します。
座裏屋蘭丸先生の『リカー&シガレット』を今すぐ読む方法
1巻完結の作品ですので、1時間ほど開いた時間があれば読めてしまう良作です。
まずは数ページサンプルで確認することができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。どちらもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアは頻繁にクーポン割引があり。また特典ペーパーや同人誌なども見つけられることがあります。
Renta!は、レンタルやスタンプ機能などがあり。オーディオCDを聞くこともできるので、とても便利です。
座裏屋蘭丸先生の『リカー&シガレット』の他の楽しみ方
電子書籍以外での楽しみ方として、ドラマCD が出ております。
ドラマCD… 破壊力すごいですよね。
残念ながら、CDメディアはすでに販売終了となっており、新品での店頭入手は難しいです。サンプルも見つけることができませんでした。でも、中古などでは数点見つけることができますので、興味があればぜひ。
ところで・・・紙ベースの本。この作品は全体的に可愛らしい世界観が広がっていて、個人的には紙ベースの方が好きです。新品購入もできますし、中古本ならさらに安く購入することも可能です。
まとめ
座裏屋先生の作品、初心者なりに読んできました。初期の激しい作品は理解するのがまだ難しいですが、先生は明らかに独特の世界観を持った、特徴ある方。この作品は一般的にも読みやすい作品だと思います。
激しい絡みはあまりありませんが、愛情ダダ漏れのこの作品、ぜひ読んでみて下さい。
そして読むときは、ぜひBL目線で読んでみてください。「漫画」として読むのと「BL」として読むのでは、全然見え方が違ってきます。
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