こんにちは。今回は、座裏屋蘭丸先生の初期短編集『眠り男と恋男』をご紹介します。
作品データ
眠り男と恋男
座裏屋蘭丸
刊行年月:2015.07.10
出版社:リブレ出版
どんな作品?
座裏屋蘭丸先生の2冊目のコミックス。
座裏屋先生のすばらしい絵柄とエロスを堪能できる作品です。
短編集なので、先生のデビュー作『PET契約』と同様、いろいろなタイプのプレイ!?を楽しめる内容になっています。
座裏屋先生は外国設定の作品を描くことが多いですが、今回は日本人設定もありました。
ちなみに『PET契約』同様、不健全指定図書に指定されてしまったのか、紙媒体での新品購入は困難。(中古は入手可。)
「漫画」としては好き嫌いが分かれる作品かもしれませんが、アートワークとして、やはりチェックする価値のある1冊だと思います。
座裏屋蘭丸先生『眠り男と恋男』ネタバレ!?感想・レビュー
この感想は、この作品を数回読んでから執筆しております。
(その後は何度も読み込んでいるため、感想は少し変わっております。)
短編集。6つのお話が収録されています。
ストーリー01、02:眠り男と恋男
長髪ロイスと黒髪ジュードのお話。
ロイスは奇病にかかっており、睡眠中に無意識に性行動に走るという奇病にかかっております。
そんなばかな、って思いそうですが、実はこれ、非常に稀ではありますが、実際にある病気です。
Sexsomnia(セクソムニア、睡眠時性的行動症)
作中では具体的な病名は書かれておりませんが、非常に珍しい病気。夢遊病などと同じく、当の本人には記憶が残りません。
パートナーなどの告白から気付いたりするそうで、お薬もあります。
と、本当にある病と知ったところで…。ロイスはノンケ 、ジュードはゲイという設定。
なので、寝ている間にロイスに迫られるジュードは、心に罪悪感を感じながらも喜んでしまっているところがある。w
2013年に描かれた作品で、細めの線で、繊細な絵柄。これ、手描きでしょうか!?
絵柄がとても好み。
どちらの男性もカッコよく、特に長髪の髪の描き方が特徴。
そして男性の裸体がなんとも美しいです。男性的な筋肉美。しっかりと筋肉がついた裸体で、美しいです。
ただ・・・絡みが多い。😳
前作「PET契約」のあとがきによると、先生の創作活動の源は「エロス」と書いてありました。
だから、どの作品においても絡みは重要な要素のようです。先生の詳しいインタビューが読みたい!この作品は短編集なので、絡みがメインになるのは否めません。
ただ、絡みシーンを読んでみましたが、正直やらしく感じませんでした。やってることはすごくやらしいことみたいなんだけど、絵が美しいからなのか、上品さが残っており、いわゆる「エロい」感じは(少なくても私には)しませんでした。
ストーリー03:優しいディナー
グルメなお話…ではありません。w
偏食の男・葵(あおい)は、たまたま立ち寄ったレストランのシェフ・霧野(きりの)と特別な関係に。
葵が食べられなくなった理由は他にあるのだけど、霧野は葵に自分が作ったものを食べてもらおうと、美味しいものと情事で葵にアプローチしていきます。
このお話、この葵がどこか女性的。たまたまなのか、故意なのか… 日本人設定ではありますが、目の感じや髪の色など、世界観はやはり非日本。
この作品は食いしん坊の自分に刺さり、すごく好きです。ラストの葵が…とてもかわいい。☺️ 後味のいい作品。
ストーリー04:夜を逃げる
子供の時のトラウマがあるハルと、そんなハルに恋をするユーゴ。ユーゴはとてもかわいらしく描かれているのだけど、絡みシーンで突然「おもちゃ」を持ち出します。
あれ…… きれいなお話なのに、絡みシーンだけちょっと想像と違うな…。w
ただ、これもそれほどやらしく感じない。でもそれって先生の本望ではないですよね…?きっと先生はやらしくしたいんですよね?だとしたら、絵が綺麗すぎる!w
おもちゃに関しては、初めて見るもので、よくわかりません。要勉強です。
ほんと、先生の「エロス」の定義が知りたいんです。やらしさの「エロ」なのか、エロの美しさを描く「エロティシズム」なのか、はたまた愛や美の先にある「エロス」なのか……
先生が感じている「エロス」はどんな世界なんだろう……
ストーリー05:太陽と秘密
美形のコーディと褐色肌のカイト。身長差があり、カイトはちょっと子供っぽく描かれております。ショタまではいきませんが……
出会って恋に落ちた二人。しかしコーディは急にカイトの前から立ち去っていった。
それから1年後、コーディがまたカイトの前に現れ、再びアプローチをかけてきます。これもやっぱり絡み、でした。なぜか人に囲まれまくったトラックの荷台でコトを始めちゃいます。BLって妄想の世界なんでしょうか。w
他の作品よりもユーモア多め。嫌いじゃない。でもトラックの荷台が……
ただ、こういったエロス、どこかにありそうです。
ストーリー06:待つ花
珍しく設定が日本。地主の鬼崎が、一葉を縛り、遊びます。
SとMの関係でしょうか。
他のお話に比べると、太めの力強い線画で描かれており、雰囲気が(良い意味で)違います。一葉は黒髪で、さらっとした髪質のためか、女性的にも見えます。
縛られるので、とんでもない体勢。ただ、相変わらず先生の画力は楽しめるます。
バナナも登場するよ。w
この作品の楽しみは、SHIBARI:ロープワーク。Shibariは海外でも使われている言葉で、このプレイを楽しむ人も結構いるとか、いないとか。ターゲットが絞られた作品。Shibriについては少しだけ調べてみたいのだけど、なかなか勉強が進まず……。
一時期、座裏屋先生もSHIBARIの世界に興味があったようで、その影響もこの作品に現れているのかと思います。
座裏屋蘭丸先生『眠り男と恋男』:気になった点
座裏屋蘭丸先生の短編集を読んで、いくつか気になる点がありましたので、今現在の私個人の感想として、記しておこうと思います。(何度も読み込んでいくことで、感想がかわると思います。)
気になる点01:キャラの魅力
この作品を読んで、なかなかキャラが頭になかなか残りませんでした。私が疲れていたのか…。ストーリーは短編ながら覚えているのだけど、それぞれのキャラの印象があまり強くない。
外国人キャラだから?いえ、キャラの個性が比較的普通だからじゃないでしょうか。珍しい病とかシチュエーションはいいのだけど、(私にとって)絶対に忘れられないようなキャラ感がなかったです。
多くの座裏屋先生のファンは絵に惚れ惚れしますし、私もその一人ですが、やはり「漫画」として作品を見ると、キャラ、もしくはシチュエーションが少し弱いかも。もったいないです。
気になる点02:世界観を作り上げる難しさ
座裏屋先生の作品は、2023年4月で全部チェックしました。
座裏屋先生の作品のポイントは、絵、世界観、キャラ、ストーリーのバランスだと思います。
この4つのピントがピタッとあったときに、物凄い威力を発揮する。
短編集でも人を惹きつけることは十分にできると思いますが、座裏屋先生の世界観は、連作、もしくは長編に向いていると感じています。
『リカー&シガレット』を読むとわかりますが、王道のストーリーラインにもかかわらず、あれほどの世界観を作り上げ、人気が出たのは、先生が描かれる画力、魅力的なキャラ、そして先生ならではの異国の雰囲気など全てのバランスがマッチしたのだと思います。
そして、先生の描くキャラたちの心情の揺れ、これは言葉よりも画力で視覚的に訴えてくれる。漫画…ではなく、映画のように見えるんです。
なので、この短編集のような、1話完結のお話で読者を印象付けるためには、ぶっとんだキャラとか、歪んだ心情とか、そういう要素がないと難しいかもしれません。
でも、座裏屋先生の絵柄は、ぶっ飛んだキャラ…タイプではないですよね。やはり短編って難しいですね…。
この作品では、冒頭のタイトル作2話、そして優しいディナーが印象に残りました。タイトル作は2話あったので、世界観がでたのかなと思います。優しいディナーは単に食いしん坊の自分のツボにハマったんだと思いますが、ラストが印象的だったため、葵の顔をちゃんと覚えています。w
また、『PET契約』より、読みやすかったです。その理由は、おそらくどのお話も背景に愛があったから、だと思います。
座裏屋蘭丸先生のおすすめ作品5選。ランキングでご紹介します!
座裏屋蘭丸先生の『眠り男と恋男』を今すぐ読む方法
座裏屋蘭丸先生の『ねむり男とこい男』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
まずは数ページサンプルで確認することができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。どちらもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアはクーポンが魅力。Renta!は、レンタルやスタンプ機能などがあり。
座裏屋蘭丸先生の『眠り男と恋男』を漫画以外で楽しむ方法
短編集ではありますが、実はこちら、ドラマCDがリリースされております。
このCD、内容ももちろん素敵なんですが、個人的にはこのジャケットのイラスト欲しさにCDを購入しました。サンプルも聞くことができるので、ぜひ下記の記事もご参照ください。
まとめ:座裏屋ワールドでした
座裏屋先生の作品、特徴として、
- 真っ黒なベタ塗りは使われていない
- セリフはシンプル
- 海外設定が多い
- そのせいもあって、場所がわからないおとぎ話のような雰囲気がある
髪の毛にせよ、洋服にせよ、真っ黒に塗り潰した部分がない。必ず白が混ざってます。なので、かなりどぎついシーンも、メンタルに来ないし、重くない。視覚的にも夢のような感じが魅力的で、座裏屋先生特有の世界観を作っています。
長いセリフはありません。語りの部分は淡々と語られ、セリフはとてもやさしい。どこか品のあるセリフで、汚い言葉も(少なくてもこの作品では)見かけません。だから余計に、どうしてこうまで絡みシーンが多いんだろ、と思います。w
先生の手書き文字もきれいなので、全体的に上品に感じるんです。
この先生の作り出す世界観が自分の好みなので、ぜひ既刊の作品はできる限りチェックしようと思います。
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