座裏屋蘭丸先生『シャングリラの鳥』:フィーの考察

シャングリラの鳥
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座裏屋蘭丸先生『シャングリラの鳥』:フィーの考察

今回は、『シャングリラの鳥』の自由奔放な受け、フィーについて、私なりの考察をおしゃべりしようかなと思います。


物語は現在連載中のため、2巻までの考察となります。

申し訳ありませんが、ネタバレを含んでおりますので、物語を一読してから、こちらの記事をお読みください。

愛を知らない強気な受け フィー

2巻まで読んで、大きなトラウマを抱えているのは、生活環境が不遇だったフィーの方です。幼少期まで遡り、彼の生活が描かれております。正直、この物語は個人的にどうしてもアポロの方に目がいってしまって、フィーについては見落としがたくさんあるかも・・・。w

皆さんの考察も教えていただけたら幸いです。

ネタバレ注意。作品を読んでから、以下の記事をお読みください。

幼少時代

フィーは、本土のスラム街で育ちました。そしてフィーが子供の頃から、父親はフィーにストリートで稼がせていた。

そんなある日、父親が急に姿を消し、アパートを追いやられたフィーは住むところがなくなってしまいます。ストリートチルドレンとなったフィーは、窃盗などを繰り返し、仲間と一緒にその日暮らしで食いつないでいきます。

そして、そんな矢先、フィーにとってトラウマとなる大きな出来事が起こります。

シャングリラにたどり着いたわけ

娼館「シャングリラ」にたどり着いたわけは、背景は違うにせよ、精神的にはアポロと同じ。

疲弊ーーー

心身ともに傷つき、枯れ、疲れ切った。

フィーの場合は、生きる術がなかったこともありますが、最終的にシャングリラへとたどり着き、そこが彼の生きる場所となります。

ここにはオーナーの哲学的な思想も絡んでいます。また、フィーにとってオーナーも大きな存在となっています。

「手」からつながるフィーの心情

「手」は意外なほど嘘が下手で

人格やその人間の過去までも投影していることがある

引用:座裏屋蘭丸 『シャングリラの鳥 I』, 2019

このかっこいい台詞、1巻の冒頭にあります。無料のサンプルで読むことができます。

1巻に、フィーは「手フェチ」というクダリがあります。(1巻、読んで~!)

実際には、フェチというよりも、幼少時代からの何かが絡んでいるようです。

フィーには、幼少時代からの「ある行動」にトラウマがあります。そこから来るのか、また別の理由で手にこだわりがあるのかは、2巻までではまだはっきりしません。

「手」の絡みは、1巻の冒頭からあります。初めてアポロに出会うシーン。彼の視線はすぐに手に行き、アポロの左薬指にある指輪の跡に気づきます。

最初はアポロや他人から手を掴まれるのを拒んだフィーですが、徐々に受け入れ、自らアポロに手を重ねていきます。そして差し伸べられたアポロの手を、自ら掴みます。

アポロも無意識のうちにか、フィーに対して手を通して触れていきます。アポロのそれは、無意識なのだけど、座裏屋先生の誘導(ヒント)が非常に素晴らしく、気づかぬうちに読者の私たちも追ってしまっている。それともこの作品を読んでいる私たちが無意識に視点がシフトして、マジックにかかっているのか・・・。

手を通して、フィーとアポロの距離感、お互いの信頼度が表現されているのが面白いんです。

1巻の終わりと2巻の始めにアポロの心が動き出す描写がいくつかあります。

このシーンでも、さりげなく手指が使われており、アポロの心情が…シフトし始めているように見えます。

手を見つめ、拒み、重ね、繋ぎ、受け入れる。

気づかぬうちに、フィーの心情も動き始めている。

初めての手の繋がりに、不思議な感情をいだきます。

しかしその気持ちが何なのか、フィーはまだ気づいていません。

私は、今のところ、手は心・精神的な受け入れのメタファーと読んでいます。

それまでは、フィーは手に「拒絶」の意を感じていたのではないでしょうか。だから人の手を眺める癖があるのでは?

あんたでも人を殴ったりするんだ

・・・こんな優しい手してんのに

引用:座裏屋蘭丸 『シャングリラの鳥 I』, 2019

アポロの手を 優しい手 と表現している。

もちろん、アポロの性格からもありますが、フィーはアポロの接し方、触れ方が今までの誰とも違ったもので、優しさを感じ取った。自分には決して向けられたことのないもの。しかしその手が徐々に自分に触れ、自分をどこかへ導いてくれるような感触に、無意識に気持ちが揺らいでいると思います。

2巻の最後に、フィーはアポロに「触れてほしい」と伝えるシーンがあります。アポロが愛する人に触れるとき、どんな感触なのかを知りたいーーー。フィーは、自らしっかりとアポロの手を握っています。(ぜひ2巻も読んで~!)

愛を知らない男

不遇な幼少時代から、フィーはまだ愛を知りません。

それがアポロとの対話を通して現れています。

アポロがなぜ離婚に陥ったか、裏切られたという気持ちがわからない。そしてセックスがアポロにとってなぜそれほどに重要なのかがわからない。

フィーにとってのそれは、快楽の受けであり、自分が世間で位置するところを表すものとさえ捉えている。自分は社会の下位に存在し、性的、暴力的な欲望を受ける立場にいると考えているようです。

だからこそ、そんなフィーに触れてくるアポロに対して、まだ本人も気付いていない心の奥の「揺れ」が生じた。

フィーとアポロの二人。実はフィーからアポロに触れています。フィーの心の隙間にアポロが宿り、フィーが自らアポロの手に自分を重ねた。フィーが心を開き始めた瞬間です。

ここまで、フィーの表情から読み取りましたが、座裏屋先生の画力ありき、ですね。また、読み返して見えてくる部分も多々あると思います。

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座裏屋先生は、コミックスリリースの際に細かな絵の修正などをかけていますので、連載版とコミックス版を見比べるのも面白いです。

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この表紙の絵、エロい・・・と思わないでください。エロスはありますが、この仕草一つに意味があるんです。お話を読んでいくと、この表紙の意味がわかります。それに、腰回りの肉付き、サンセットの色合い… 芸術です。❤️

まとめ

いかがでしたか。

座裏屋蘭丸先生の『シャングリラの鳥』から、受けのフィーについて、自分なりに考察してみました。現在連載中なので、これから彼の心情がさらに揺れ動いていきます。2巻までの考察として、読んでいただければと思います。

BL初心者の私ががんばってこれくらいしかまだ読み取れておりませんが、ここまでがんばれたのも、座裏屋蘭丸先生の画力ありき、です。

どんなに画力のある作家さんでも、肌の質感や圧を表現できる方、もしくはそれに時間を割いていらっしゃる方は少ないのではないでしょうか。座裏屋先生の作品は、1コマ1コマじっくりと読んでいるのだけど、どのコマも丁寧に描かれており、触れた肌の弾力を感じるんです。でも、漫画のようなコミカルなペンタッチでもあります。だからこそ猛烈なリアリティを感じ、読者を非現実の世界に連れて行ってくれるんですよね。

あなたもこんなフィーに会ってみたくありませんか?この作品は大人の女性にオススメです。愛を知らないフィーと、一人の女性を長年愛していたアポロの物語。ぜひ読んでみてください。

ぜひ皆さんの考察も参考にさせていただきたいです。コメントお待ちしております。☺️

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