凪良ゆう先生『雨降りvega』:ゆっくり進む時間と壮大に広がる空間

凪良ゆう
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こんにちは。

今日は、凪良ゆう先生の『雨降りvega』をご紹介します。

星座が紡ぐ高校生と年上男性のお話です。ドラマチックな展開をよく描かれる凪良先生らしく、いわゆる略奪愛……になるのでしょうか。

作品データ

雨降りvega

凪良ゆう Yuu Nagira
イラスト:麻々原絵里依(ままはらえりえ)

刊行年月:2013年12月20日

出版社:幻冬舎(ルチル文庫)

どんな作品?

凪良ゆう先生のルチル文庫から2冊目の作品。

星が大好きな年の離れた二人、アルタイルとヴェガののお話。

高校生の文人(ふみと)が、あるサイトで知り合った年上の男性「アルタイル」を心の拠り所にしながら、自分のセクシュアルアイデンティティと向き合っていくところからお話はスタートします。

長くメールでのやりとりが続いていた二人ですが、ある日、ついに対面することになります。実際に会い、お互いに惹かれていくのですが、実はアルタイルなる男性は、文人の姉の恋人ということが判明し、恋心は行き場を失っていきます。

文人とアルタイルとの関係、姉との関係、そして大学の友達・神崎との関係などを通して、文人は自分の道を模索していく。

物語は文人の視点で描かれており、アルタイルこと新開(しんかい)の視点は、巻末に収録されている書き下ろしで少しだけ覗くことができます。文人の恋愛模様を介して、彼の成長過程を垣間見る作品です。

作品はすべて書き下ろしで、タイトル作品『雨降りvega』、新開の視点で描かれた短編『七年目の雨上がり』、そして神崎のショート『恋の末路』が収録されています。

カップリング

攻め:新開(altair:大学で物理を教える星好きな研究者。)

受け:文人(vega:自分のセクシュアルアイデンティティに迷いながら生きている)

あらすじ

高校卒業間近の文人は、自分のセクシュアルアイデンティティに不安を持っていた。友達に打ち明けることもできず、以前出会い系サイトで知り合ったアルタイルと名乗る男性とのメールのやりとりを心の拠り所に生きてきた。

3年ほどメールでのやりとりが続いていたが、ある日対面することになった二人。対面し、お互いが惹かれあったものの、二人は別れた。文人の想いは少しずつ増殖していくが、ある日姉から紹介された彼氏は、アルタイル本人だったーーー!?

凪良ゆう先生『雨降りvega』:ネタバレ!?感想レビュー

凪良ゆう先生の作品は、5、6冊ほど読んできました。(ただし、BLのみです。)

作品によって、キャラや設定だけでなく、文体も多様に変えており、いろいろとチャレンジされているのがわかります。

作品の魅力1:文人の感じている時の流れ

主人公の文人は、年上の新開(しんかい)に惹かれていきます。

物語の冒頭は、文人が高校生のところからスタート。

新開とはすでに何年もメールでのやりとりを続けているという設定。二人が共通の好きなものである星がそこにあり、HNはAltairとvegaとする。

家族や高校の友達に、自分は男の子が好きだと打ち明けることができずにいる文人は、セクシュアルアイデンティティに対する不安があります。誰かに話を聞いてほしい時に相談できるのが、Altairという存在でした。

数年のメールのやり取りで、実際に会ったことがなかった二人ですが、ある日対面することで、文人はAltairに惹かれていきます。

物語は、Altairこと新開(しんかい)が実は姉の恋人で、さらに文人が進学した大学で物理を教えているという関係性が明らかになってきます。

が、物語の視点は文人であり、彼の新開への想い、関係性、そして家族との関係、大学の友達・神崎(かんざき)との関係性など、人間関係を通して彼が少しずつ前へ進んでいく姿が描かれています。

物語の軸となるお話は、新開との恋愛模様ではありますが、正直新開との関係性は少し近付いては離れ、また近づいては離れで、文人の緩やかな想いが消えることなく存在している。そんな感じです。

お互いに想いはありますが、燃えるような情熱的なそれではなく、じわりと胸の奥で灯火がゆらゆらと……それくらいの熱量です。

さらに、文人も新開も、慎重に行動するタイプなので、なかなか距離感が縮まらない二人。

しかし、彼を取り巻く人間関係は、文人よりも早く変化していき、特に恋愛に関しては、少し取り残された感があります。

恋愛と、それ以外のお話との時間のズレのようなものが絶妙で、文人の感じている時間の流れに魅力を感じました。

作品の魅力2:小物の使い方と時空間

物語の雰囲気づくりをしているのは、小物たちです。

タイトル『雨降りvega』のごとく、まず、新開と文人には共通の話題「星」があります。

星が好きな二人は、altair、vegaというハンドルネームでやりとりを続けます。

夏の大三角であるアルタイル、ベガ、そしてデネブ。ただ、凪良先生はカタカナを使うことを避け、altair、vegaの表示に徹しました。いや、vegaは、ベガなのかヴェガなのか困りますし w

そして、宇宙をモチーフとするストラップや、新開の出身地は北海道という壮大な大地を背景にすることにより、変化の少ない二人の描写とは対照に、脳内の想像空間が広がっていくユニークな現象を楽しめます。

空間はもちろんのこと、時系も同じで、文人が高校生の時から始まり、4年の大学時代を経て、社会人になっていきます。7年ほどの時間が描かれた作品です。

限られた人間関係、場所でのお話なのに、ほどよい奥行きが出ているのは、おそらくこういった時空間の描写が巧みに使われているからだと思います。

気になった点:altairこと新開の葛藤

文体に難しさがない分、物語の楽しみ方は文人と新開のキャラに対してどれだけ共感できるかによって左右されます。

物語が文人の成長物語のように感じたのは、大人しい新開にそれほど魅力が感じられなかったからかもしれません。

人を気遣うことのできる優しい人ではありますが、そんな彼が高校生の文人になぜ手を出すのか、また、文人の姉との関係性があったにもかかわらず、文人と肌を合わせることがなぜできるのか……我慢する必要のあるところをまったく我慢できていないという矛盾。w

彼の人間性の弱さとして楽しめればいいのだけど、私は逆にこの矛盾が違和感に感じてしまいました。

皆さんはどう思われるか、是非知りたいです。

凪良ゆう先生『雨降りvega』を今すぐ読む方法

凪良ゆう先生『雨降りvega』は、残念ながら今現在電子書籍でリリースされておりません。

紙本も在庫なしとなっているため、何かのきっかけで新装版か電子書籍になるのを待つしかなさそうです。

フリマや中古屋さんなどで探すと、見つかると思います。

紙本は楽天を利用しています。電子書籍もありますし、洋書の取り寄せも安心。
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まとめ

今回は、凪良ゆう先生の『雨降りvega』をご紹介しました。お話の規模は大きくはないのですが、星という共通した趣味やゆっくりと流れる時間、そして麻々原絵里依先生の描く素敵な表紙からのインスピレーションで、独特な時空間を感じることができるお話でした。

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