こんにちは。
今日は、朝田ねむい先生の『マイリトルインフェルノ』(上下巻)をご紹介します。
作品データ
マイリトルインフェルノ My Little Inferno 上下巻
朝田ねむい
刊行年月:2019年02月05日
出版社:祥伝社(onBLUE comics)
どんな作品?
朝田ねむい先生の初の上下巻コミック。ボリューミーで、読みごたえのある作品。
私にとっては初めてのねむい作品となりました。タイトルはいいとして、この表紙カバーの絵柄的に、全く話の内容がわからずで、ワクワクしながら読みましたが、とにかくBLというよりも、海外ドラマのようなスケールの作品です。
設定はBLになっているのだけど、絡みシーンはほとんど皆無なので、BL初心者の方にもオススメのエンタメ作品です。
雑誌『号外 onBLUE』2nd SEASON vol. 5 (2017.9), 6, 7、そして 3rd SEASON vol. 1, 2, 3 (2018.12) に連載されたものが上下巻にまとまっています。
号外 onBLUEという雑誌があったこと自体、初めて知りました。今もあるのでしょうか?
主人公の男の子は、大学生の仁(ひとし)。
小さくて、弱くて、大学に入っても彼女どころか友達さえできない。中途半端な彼がひょんなことから出会ったのが「まーくん」。
背が高く、どこからやってきて、一体どんな仕事をしているのかわからないまーくんだが、なぜか仁の家に居候することに。
何の共通点もない二人が一緒に暮らし、徐々にまーくんの過去に関係する人物が登場して、大きなスケールのお話に発展していきます。
朝田先生は、ストーリーに魅力のある先生です。
BLといっても、主人公がたまたま男同士のお話というだけで、そこに受けや攻めのコンセプトが入ろうが、入るまいが、物語が面白いのです。
残念ながら、一部のBL読者が求めるような濃厚な絡みはありません。
最近の映画や海外ドラマは普通に同性カップルが主人公のものも増えてきました。それらの作品をBLとカテゴライズすることはないでしょう。この作品も、そんな感じです。
カップリング
攻め:まーくん(天才的ハッカー。長身で、仁を笑いながらも助けてくれる。自分を持っている。)
受け:仁(ひとし:小さくて弱い大学生。高校の時いじめられていたこともあり、自分に自信がない)
あらすじ
仁(ひとし)は大学生。高校では友人もできず、大学デビューを狙っていたものの、なかなか友人もできず、今までと変わらず中途半端な毎日を送っていた。
そんなある日、急に目の前に現れた怪しい長身の男・まーくん。
犯罪者の匂いがするまーくんは、とりあえずすむところがないと、仁の家に転がり込む。気づけばお金も口座から引き落とされ、大男の彼には抵抗もできずにもう人生が終わったと感じる仁。
しかし、まーくんは朝ごはんを作ってくれたり、嫌なやつから守ってくれたり、なんだか少しずつ会話するようになってきた。
ある日、まーくんの過去に関係する男が現れ、仁の母親も知らないうちに詐欺の被害に巻き込まれていく。
朝田ねむい先生『マイリトルインフェルノ』ネタバレ!?感想・レビュー
作品の魅力:理想と現実
まず、絶対的な魅力として、対照的なキャラの性格を踏まえたこのストーリーです。
たくさんのメッセージが含まれており、理想と現実の対比をマジマジと見せられます。
身長が低く、心が弱い仁。ちょっと脅されるとびびってチビっちゃうし、吐き気さえ催す。
高校時代にいじめられていたということもあり、大学デビューを夢見て東京行きを決めていたのだけど、さまざまな理由が重なり、大学受験に失敗。結局地元の大学に通っています。
自分で何かやろうとは決めるのだけど、メンタルが弱く、なかなか実行に移せなかったり、移しても失敗したりで、すべてが中途半端に感じている。
当然、成功経験がないので自分にも自信が持てない。
たとえば休日に動画を見て過ごすことは無駄な時間だ、と感じている。どこかで「こうであってはいけない」「こうしたい」という理想があるのだけど、自分を変えることができないのが仁です。
まーくんは、何が自分を動かすか、興奮させるかを知っています。
理不尽な社会の仕組みを知っているし、それに対抗するスキルや知識もある。
また、長身で筋肉もあるという身体的メリットも持っています。
自分のスキルを生かしてお金も簡単に手に入れることができる。
要は、ぶれない自分を持っている人間。
そこにはがたいが大きいからとか、頭がいいから、という理由だけではなく、しっかりと自分が何をしたいか、どんな風に行きたいかを知っているところがポイントです。
自分がやりたいことを実現するためには何が必要かを考えて、実行することができる。
小さくて弱い仁がカッターを振り回して、もがいたところで、所詮まーくんのような男には立ち向かうことは出来ない。ある意味、社会を風刺していますね。
少しでもまーくんの力になりたくても、結局役に立つことはできないし、「お前は今のままでいいんだ」とまーくんに言われて悔しくて、もがく仁ですが、それが現実。
弱肉強食。そんな描写も妙にリアルです。
仁がほしかったのは、友達。
まーくんがほしいのは……なんだろう。w
何か彼を奮い立たせるようなexcitementでしょうか。
なぜか、仁のような人物と関わったことがなかったのか、まーくんにはそれが新鮮で、無力な仁が必死にもがき狂う姿が可愛らしく、エキサイトメントに感じたのかもしれないですね。
気になった点:BL
この作品はBLです。男性同士の関係性、恋愛模様が描かれています。でも、そこに「萌え」を求めている読者向けではなかったです。個人的には非BL目線で楽しみました。
ねむい先生のあとがきに、攻めや受けと書かれていましたが、私にはまったくこのまーくんと仁の関係がBLに見えなかった。w
もちろん、男同士だし、キスだのなんだのとちょこっとだけ絡みはあるのだけど、この二人のケミストリーやメタファーを読み取れませんでした。
いや、たとえ存在したとしても、そこには全くと言っていいほど目がいかなかったというのが感想です。
そこを描くなら、あの放火シーンの前後をもう少し見たかったなぁ、というのが感想です。
日本のエンタメではそれほど見受けられませんが、海外の映画やドラマでは、いまや同性同士のラブシーンも普通に組み込まれているので、よほど濃厚なラブシーンでなければ、もうBLとしてカテゴライズされることもなくなっていくかもしれないなと感じました。
カテゴライズしてしまうことで、限られた読者にしか届かないとしたら、それこそもったいないです……。
朝田ねむい先生『マイリトルインフェルノ』を今すぐ読む方法
朝田ねむい先生『マイリトルインフェルノ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「<コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「
Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
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まとめ
今回は、朝田ねむい先生の『マイリトルインフェルノ』をご紹介しました。
ねむい先生の作品はまだ数作品しか読んでいませんが、『ラブド・サーカス』は線画が荒くて(ごめんなさい w)戸惑いがありましたが、この作品はそれも気になることもなく、楽しく読むことができました。
まだまだ面白い作品がありそうなので、ゆっくりチェックしていこうと思っています。
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