おげれつたなか先生の『錆びた夜でも恋は囁く』は奥深い3人の人間模様

おげれつたなか
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作品データ

錆びた夜でも恋は囁く

おげれつたなか

刊行年月:2015.04.15

出版社:新書館(ディアプラスコミックス)

どんな作品?

おげれつたなか先生のコミックス2冊目。

冒頭から突如始まる悲しい物語。コミックス1冊目とは全然違う雰囲気でのスタート。しかしながらクライマックスのハピエンまで、何層にも重なったそれぞれのキャラの気持ちの揺れが、なんとも切なく入り組んでいます。普通に読んでも楽しめますが、より深く考察することで、この作品がかなり奥行きのある作品であることがわかります。

そして描き下ろしの二人の迫力あるラブラブシーンにほっこり。

ジェットコースターのような感情の浮き沈みが楽しめる1冊。

カップリング

攻め:真山(大学院生、弓とは中学生の時の同級生)

受け:弓(ユミは苗字だよ。きれい系。少し髪が長い)

あらすじ

弓には高校時代に知り合った彼氏、かんちゃんがいる。

しかし、かんちゃんにDVを受けている弓は、いつの日か以前の笑顔が輝いていたかんちゃんに戻ってくれることを願いながら、暴力に耐える日々を過ごしていた。

そんなある日、バイト先で急に再会したのは、中学の同級生、真山。彼だけは、弓が誰にも見られたくない部分を見ようとするのだ。

そしてあの中学の時と同じような気持ちに追い詰められるーーーー。

おげれつたなか先生『錆びた夜でも恋は囁く』のみどころ

おげれつ先生はこの作品を描いた時にはもうベテランだったんでしょうか? w

作品の奥行きが深くてびっくりしております。BL作家さんは、制作スタッフさんはどのくらいいるんでしょうか。もし先生だけでこの作品の構成を考えているのであれば、もう脱帽です。

さらっと読めて、わかりやすく描かれてはいるのだけど、細かくみていくと、キャラたちの心情が何層にも重なり合っています。また伏線回収しない描写もあるため、それを見つけては自分なりに考察するのも楽しい。BLってほんと、奥深いですね。

また、おげれつ先生の画力も結構すごいです。座裏屋先生のようなアート的な美しさではありませんが、近所にいそうな男の子を、リアルな仕草や絵柄で表現してくれています。おげ先生が描く泣き顔や照れ顔は、愛おしい。

作品の魅力1:キャラたちの交差する心情

メインのCP(カップル)はもちろんのこと、このお話に登場する弓の彼、かんちゃんも、実は重要人物。なぜならのちにスピンオフになるから。(それもまた切ないお話なんですよ。)

かんちゃんと弓は高校時代に出会いました。当時の二人は笑顔が絶えなかったことが、写真から窺えます。しかし仕事のストレスから、かんちゃんは弓に暴力を振るうようになってしまった。そして弓は傷ついている心を見せまいとし、かんちゃんもそれを見る余裕がない。

そこに、真山が登場します。真山と弓は中学時代に恋心がありました。しかしある事件があり、複雑な関係性になったんです。中学卒業以来、連絡は途絶えていたのだけど、再会をきっかけに、何も変わっていないまっすぐな真山と、現状を隠しながらも気持ちが揺れ動く弓。

真山は昔からまっすぐな人間。弓のことが好きで、もっと知りたい。頼りない弓を守りたい。傷ついてる弓を守りたい。その気持ちは昔も今も変わらないストレートな男の子。コミュ障で頼りないところはあるんだけど、それでも弓が傷ついているのがわかるし、助けたいというまっすぐなところが、なんとも胸にくるんです。

この感情がゆっくり、重なって行きます。

おげれつ先生の時間の交差の仕方にも癖があるんですが、わかりやすいんです。複雑にしないで、比較的わかりやすくヒントをくれるんです。なので、さらっと読んでいても読み取れるんです。

それでいて、読むたびに見落としていたところがあることに気づく。心情描写が何層にもなっていて、すごく奥行きのある作品なんです。

ですので、何度も読んでください。違う気分の時、時間を開けたり場所を変えたりして、読んでみてください。急に違う世界が目の前に広がることがよくあるんです。

作品の魅力2:描き下ろしのラブラブシーン

本編では、ラストに少しだけ絡みシーンがあります。数ページ、コミカルに描かれております。私は絡みはあってもなくてもいい派なので気にはならないのだけど、描き下ろしでラブシーンがありました。

こちらは…すごくよかった!

正直ラブシーンが、というんではなく、この描き下ろしのラストがよかった。そしてこのエピ、弓がすんごくすんごくいい顔してます。冒頭の傷だらけの顔から、ラストの幸せな笑顔まで、1冊にまとめてくれるなんて、おげれつ先生ありがとうございます。

それだけストーリーも無駄なく描いてくれています。

作品の魅力3:時間軸の交差

この作品で、中学時代の真山と弓、そして高校時代の弓とかんちゃんが出てきます。それぞれの時間軸が微妙に交差して、昔何があったのかがあらわになっていきます。

時間軸の交差といえば、ヨネダコウ先生のスタイルも大好きなんですが、おげれつ先生のは、よりはっきり、わかりやすく説明してくれます。これ、重要です。でも交差の仕方は綿密に計算されているんです。

大まかなストーリーは、一度読むとわかる。あれはなんだったっけ?と何度も読み返すこともないし、キャラの気持ちの揺れも分かりやすいです。

ただ、そこからディテールを汲み取っていくのがゾクゾクする。

読者が一回目に読み取れる情報量は限られています。そして一度読んでストーリーがわかると、2回目には、そういえばこの傷・・・とか、なぜここで髪をかきあげるのか、とか、他のディテールが見えてくるんです。

読んでいる時に考察するというよりも、何度も読んで考察していくスタイルなので、個人的にはすごく読みやすく、また読むたびに新しいことを発見して新鮮に感じる。そんな作品です。

おげれつたなか先生の『錆びた夜でも恋は囁く』を今すぐ読む方法

おげれつたなか先生の『錆びた夜でも恋は囁く』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

最初の数ページをサンプルで今すぐ読むことができます。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。

コミックシーモアは頻繁にクーポン割引あり。

Renta!は、レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。

「Renta!レンタ」には、実は電子のみでしか読めない『恋が踊るニュータウン』の電子書籍があります。これ、貴重。単話で2話まで出ております。おげれつ先生、続編描いてくれないかなぁ。

おげれつ先生『錆びた夜でも恋は囁く』をもっと楽しむ方法

おげれつたなか先生の『錆びた夜でも恋は囁く』をもっと楽しむ方法があります。

それは

ドラマCD

です。

最近私もすっかりハマっているドラマCDですが、この作品のCDもリリースされております。

この作品のドラマCDは結構レアで、新品ではなかなか見つけることができませんが、コミコミスタジオさん、そして発売元の新書館さんにまだ在庫があるようです。

また、残念ながらオーディオDLは、今現在ありません。

興味があるようでしたら、ぜひチェックしてみてください。

私もすごく聞きたいのだけど、まだ時間に余裕ができず…

声優さん:石川賢利(弓)/ 羽多野渉(真山)/ 小野友樹(林田)

まとめ

いかがでしたか。もしまだおげれつたなか先生の作品を読んでいないのであれば、この作品を今すぐ読んでください。なぜ先生が人気なのかがわかります。

2冊目のコミックスとは思えない完成度の高さ、そして奥深さ。

正直デビュー作とか、ベテランとか関係なく、とにかく面白い。お話は表面上のそれではなく、しっかりとしたキャラ背景があり、何層にも重なって構成されています。実は複雑なんだけど、まずは一度読んでみてください。ちょっぴりアホみたいな小ネタでさえ、愛おしく感じますから。

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