こんにちは。
今日は、おげれつたなか先生の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』の最終巻(3巻)を読み終えたので、感想をおしゃべりしたいと思います。
おげ先生の作品はどれも大好きで、特にこの作品は自分にとっても思い入れが強い作品です。1巻は傑作とも思うこの作品、みなさんは3巻を読み終えて、どう感じましたか。
作品データ
ハッピー・オブ・ジ・エンド 3巻
おげれつたなか
刊行年月:2023.10.31
出版社:竹書房(Qpa)
どんなお話?
BL雑誌『Qpa』vol. 98((2020年1月24日配信)から連載がスタートしたおげれつたなか先生の人気シリーズです。この3巻を以って、完結となりました。
母親に捨てられ、自分を売ることで闇の世界に入り、生計を立てながら大人になっていった浩然と、自分の感情を押し殺して生きてきた千紘の二人が出会い、想い合い、幸せを楽しみかけたのも束の間、千紘の前に、浩然を未成年時から痛めつけていたマヤが現れます。
3巻には、vol. 127(2022年6月24日)からvol. 141(2023年8月24日)まで連載されたお話が収録されております。
3巻に収録されているお話は、前半・後半で少し時間が空いており、絵柄も若干ながら変わっております。その間になにがあったのか。何はともあれ、物語が完結してホッとしております。
カップリング
攻め:浩然(目の前の幸せを噛みしめながら、千紘に近づくマヤに対して、ある決断をします。)
受け:千紘(マヤに襲われながらも、浩然を想い続ける一途なヤツ。)
あらすじ
マヤに捕まってしまった千紘。なんとか逃げ出すことはできたものの、傷ついた心はなかなか癒されない。そして、千紘がマヤに襲われたことを知り、マヤに対してある決断をする浩然。自らマヤのところへ足を運びますーーーー。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド 』3巻のネタバレ!?感想・レビュー
おげ先生のこのハッピーオブジエンド。
私にとって、とても特別な作品です。
私が初めて手に取ったBL作品であり、おげ先生の作品の中でも特に素晴らしい作品だと思っています。だからこそ、この最終巻である3巻を読んで、少し驚きました。
これは、あくまで個人的見解ですが・・・、今までおげ先生の作品を本気読みしてきた方なら、何かモヤっとしたもの、残りませんでしたか?
無事に完結
まずはこの物語、無事に完結してくれてよかった・・・。
最後まで描き上げてくださった先生に感謝です。
理由は何であれ、世の中に出された物語(特にプロとして)は、完結しなければいけません。物事には始まりがあって、終わりがある。ものごとの原理。最近は、未完のままのものがあまりに多すぎると思います。
BLは続きがリリースされるまで3、4年かかることもあって、正直そこまで自分が生きれる自信さえありません。w だから、自分が生きている間にこの結末を読むことができて、本当に心から感謝です。
絵柄の変化
絵が、少し変わりました。
おげ先生の絵は、20代男性の持つ若さとアダルトの中間のような色気が魅力の絵柄でした。1巻を読み直しても、浩然と千紘のイラスト、大人っぽさの中にある「美」があり、とっても素敵でした。
しかし、3巻のラスト3エピ、急に線画が変わり、絵柄が若くなってます。
先生の意向で変えたんでしょうか。(それとも読者層の変化に合わせた!?)
3巻には、ep.13からep.17まで収録されております。
調べてみると、ep.14は2022/8/24、ep.15は2023/5.24のQpaに収録されたものでした。約半年ほど休載されていたようです。
先生のもう一つの人気シリーズである「ヤリ部」も、同時期は更新がありませんでした。何らかの理由で執筆活動自体を少しお休みされていて、その間に絵柄を少し変更されたのでしょうか。
時間に伴う絵柄の変化は、個人的にはそれほど気になりません。ヤリ部も、もともと高校生という若めの設定ですし、絵柄が変わっても別に気にしていません。
でも、このハッピー・オブ・ジ・エンドは、20代設定で、タフな人生を送ってきた大人な男たちのお話。ですから、「若さ」が目立つようになったのは、少し気になりました。
線画の外線が前よりも太くなり、また顎がかなりシャープになりました。
このシャープな顎に、私は若さを感じてしまうのです。。。ただ、その分、悲しいお話でもどこか明るさというか、光があり、それを私は「希望」と受け取りました。
このシリーズは、巻ごとに作風も違い、絵柄も若干変化していましたが、今回の変化は慣れるのに時間がかかりました。
少し間が空いたせいなのか、たまたまなのか・・・。もしかしたら、幸せになった浩然と千紘の心情の表れかもしれません。
手
この『ハッピー・オブ・ジ・エンド 』だけに限らず、おげ先生の作品は、最初から最後までの一連のつながりがあるのが好きです。
一回読んだだけでは見えてこないことが、2回、3回と読み返す度に見えないところが見えてくる・・・。そして、いろんな時空のパズルが頭の中で完成してくるような、そういった作風が大好きなんです。
2巻まで拝見して、お話自体は辛いのだけど、私自身、楽しみにしているのはそこではなくて、おげ先生の伏線回収(この言葉、あまり好きじゃないんですが・・・)の仕方が好きでした。また、浩然の不可解な行動も魅力的でした。
では3巻はどうか。
3巻で気になったのは、「手」。
作品全体を通して、浩然から手を握ることはほとんどないのですが、3巻でもやはり千紘から浩然の手をしっかりと握ることになります。
3巻で、ある大きな事件が起こります。
それが原因で幻聴さえ聴こえるようになってしまった浩然。すべては自分の責任であると感じ、また自らの手さえ穢れて見えてしまいます。
そんな中、手を繋ぐことに躊躇する浩然の手をしっかりと握る千紘。
千紘は、健気なのか、不安を隠そうとしているのか・・・。浩然への想いは間違いないもので、それの表れなのか、しっかりと浩然の手を取っていることで、千紘の想いの強さを知ります。
1巻の終わりで、浩然の不安げな手をキュッと握りしめる千紘がいました。
2巻でも、まれに浩然から手を繋ぐことはありましたが、シーンで使われているのは千紘からしっかりと握りしめることが多かったです。
そして3巻。とある水族館のシーン。やはりまた、千紘から浩然の手を握ります。
浩然は、自分の穢れた手で千紘に触りたくなかったのでしょうか。千紘をこれ以上穢したくないと思ったのかもしれない。また、自分がしてしまったことや千紘への責任を感じている浩然は、自分がどうすれば千紘を解放することができるだろうかと考えていたのかもしれない・・・。このシーンではまだ浩然の「決断」はできていない感じがします。なぜ浩然が千紘の手をすぐに握れなかったのか、考えてしまいます。
ラブシーン
3巻のラブシーン。絡みの雰囲気が少し変わりました。心なしか二人の密着度(心の距離)が縮まった気がします。が、今までのような遊び心のある体の重ね方ではありません。
どこか、切羽詰まった二人の距離感が表れている感じがします。
しらす丼
大きすぎるよ!w
浩然の一歩
浩然は、今まで自分の気持ちをどう対処していいのかわからなかった。
「好き」という気持ちもどう表現していいかもわからず、何度となくHの経験があるにもかかわらず、キスしようとして頭をごつんっとぶつけてしまうような、不器用なやつ。
そんな彼が、自ら千紘に歩み寄るラストに、私は胸を打たれました。
大きな事件を起こしてしまったものの、マヤへの恐怖がなくなり、それを受け入れて、まずは人生の一歩を歩み出します。自分の力で生き始めます。
千紘の夢はかなったのだろうか。
千紘はどんなものを見てきたのだろうか。
人生のどん底で見つけた幸せ。その幸せを感じた時に、死んでもいいと思った。
でも、千紘のその後を知りたい、と思った。
千紘はどんな景色を見て、生きてるんだろうという純粋な好奇心。今までの浩然にはなかった、「知りたい」という欲が湧いている変化に、以前の浩然にはあまりなかった人間としての感情が生まれ、希望があることが読み取れました。
おげ先生がこの物語を描き始めた時からこのエンディングを考えていたのかどうかはわかりません。が、クライマックスのお話には、今まで以上に先生からのメッセージを感じました。
千紘はクズなヒモ・・・だったはずが、結局は純粋ないい奴で、ただただ浩然を想い続けている。最後には、無事に生活力もついた。
浩然は人生の底辺を生きてきたやつ・・・だったはずが、自らの力で這い上がっていった。
今はどん底だと思っても、必ず希望はある。絶対にそこから脱することができる。そしてそれは、自分が決めて、自分が行動しなければならない。自らの意志で突き進まねばいけない。そんなメッセージを受けました。もちろん、これは私の個人的な解釈です。
急ぎすぎたエンディング
ポジティブにお話のエンディングを受け止めた反面、いままでのおげ先生の作風とは違ったエンディングに感じました。1巻、2巻で緻密に計算された物語の展開とは裏腹に、3巻ではどうしたのか、ごくあっさりエンディングを迎えています。
おげ先生のお話は、普通のハピエンでも少しヒネリの利いたものが多いのですが、今回のエンディングは、比較的大人しく終わってしまいました。今まであまり語らなかった浩然も、すっかり普通の人間になったのか、物語を語り始めている。罪を償っている間に考え方が変わったのでしょうか。
おげ先生の過去作は、まだ感想を描いていないものもありますが、すべて目を通しました。これを書いている段階で、ヤリ部の最新エピまで、すべてチェックしました。
今までの作品、そしてこのハッピー・・・1、2巻を読んだ上で、3巻のこのエンディングが最初から先生の頭の中にあった展開なのか、この3巻全体の構成そのものが、先生が望んだものだったのかがわからないんです。やはり、少し急ぎすぎた感じは否めないのです。
もちろん、全3巻を通して、やはり素晴らしい作品だと思いますし、今までのおげ先生の作品の中でも特に好きな作品ではあるのだけど、私なりに本気でこの作品に向き合ってきて、1、2巻のあの衝撃的な物語の構成と比べて、3巻は、「層」の厚みを感じるにはまだ時間がかかりそうです。
浩然と千紘のその後
再会した二人のその後。
描き下ろしの二人のその後のエピソードもとても静かな感じでしたね。
この二人のエンディング、私はこれでとても満足しています。そして、その後の二人は、読者それぞれが想像する。先生もあえてこの選択肢を取ったのかな、と思います。
ちなみにこういうエンディングは、昔からよくありましたが、最近の読者は、ラブラブいちゃいちゃな二人を見たい、という方が多いのでしょうか。
先生が考えている浩然と千紘の幸せ、なんなんだろう。
何気ない日々の幸せだろうか。それとも、互いに人生において前に進んだことが幸せなのだろうか。はたまた、これは本当に幸せなのだろうかーーーー。
きっとまだまだ見えていないメッセージや表現がたくさん隠れているのだと思う。
これを書きながら、何度も読み返してはいますが、まだまだわからない部分が多いです。
ぜひこの本を手に取ってほしいし、何度も何度も、考察しながら読んで欲しいです。
ストーリーは同じでも、読者それぞれに見えている二人の物語は全く違うもの。
ぜひあなたが感じたストーリーも教えてほしいです。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド 』を今すぐ読む方法
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
サンプルを今すぐチェックすることができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)
どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。
Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。
ところで・・・「Renta!レンタ」には、実は電子のみでしか読めないおげれつ先生のレア作『恋が踊るニュータウン』の電子書籍があります。単話で2話まで出ております。おげれつ先生、続編描いてくれないかなぁ。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』のドラマCD
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』をもっと楽しむ方法に、ドラマCDがあります。
ビジュアルや無声で訴えかけるシーンがたくさんあるおげ先生のこの作品、ドラマCDではどのように表現されているのか、すごく興味があります。
ドラマCDは2023年11月現在、2枚リリースされております。
どちらも在庫がまだあるようですので、興味のある方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
声優さんたちが、とにかく豪華です。
まとめ
かなり長くなってしまいましたが、このお話、少しシビアなキャラ設定にはなっていますが、地雷でなければぜひゆっくりじっくり読み込んでみることをオススメします。
また、わかりにくい描写や意味深なセリフ、読者によって見えているポイントも全く違うので、お友達などと語ってほしいな、と思います。おげれつたなか先生の作品はどれも奥が深く、また心情描写が何層にも重なって表現されています。そこを考察していくのも楽しいですよね。
今回は私個人の感想になってしまいましたが、ぜひあなたの感想も教えていただけたらうれしいです。
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