こんにちは。
今日は、2023年に無事完結した、おげれつたなか先生の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』をご紹介します。全3巻の作品ですが、巻ごとに雰囲気が違うため、それぞれゆっくりご紹介していこうと思います。
この作品は、私が初めて読んだBL作品ということもあって、思い入れが深い作品です。(とんでもないものを手に取ってしまった・・・w)
作品データ
ハッピー・オブ・ジ・エンド 1巻
おげれつたなか
刊行年月:2021/06.30
出版社:竹書房(Qpa)
どんなお話?
人気BL雑誌『Qpa』vol. 98((2020年1月24日配信)から連載がスタートしたおげれつたなか先生の人気シリーズです。2023年10月、全3巻で完結となりました。
過去に何があったのか、ミステリアスで美人な黒髪のケイトと、失恋で生きる気を失っていた千紘。幸せに恵まれない二人の葛藤と些細な日常の幸せを描いた作品です。
巻によって作品の雰囲気が変わっておりますが、個人的にはこの1巻の雰囲気が一番好きで、また二人の関係性や過去の出来事も丁寧に描かれています。
1巻には、『Qpa』vol. 98(2020年1月24日配信)からvol. 109(2020年12月24日配信)までのお話が収録されております。
おげ先生特有の、キャラクターの切なさを前面に押し出した作風は健在ですが、ダークで挑戦的なキャラ設定でもあります。切なさもあるんですが、二人のキャラクター、特に黒髪の美人・ケイトのキャラが非常に奥深い人生設定になっているため、そこから来る性格の歪みがどう表現されていくかも魅力の一つです。
ここから二人の結末がどうなるのか、悪い予感しかしておりません。w
おげれつたなか先生の作品は、緻密に設計されたストーリー展開やキャラクター設定が魅力です。
この作品も冒頭から少しわかりにくいシーンが散りばめられています。普通に読み進めると気づかないのですが、2巻へと読み進めると、作中に散りばめられた細かな描写の意味が鮮明になってきます。これを伏線回収という言葉で簡単に片付けたくはないほど、描き始める前から、先生の頭の中には細かなキャラ設定やお話の流れがあるんだなぁと汲み取れます。
また、回収するものもあれば、しないものあり。読者が自由に理解することができるし、また先生の意図を読み取るのもなかなか難しいです。
さらっと読んで、どん底の二人に震えるのも一つですが、実はいろんな漫画を熟読される方にも読み応えのある1冊になっています。
カップリング
攻め:ケイト(黒髪の美人。なぜか冒頭から千紘を襲うのですが・・・)
受け:千紘(恋人に結婚され、ショックから立ち直れないヒモ男)
あらすじ
以下、竹書房のオフィシャルPVです。
(キワどい描写がありますので、ご鑑賞時はくれぐれもご注意ください。)
バーで知り合った好みの黒髪男・ケイトとホテルに行った行った千紘。なぜかそこでケイトに襲われ大変なことに。
そんな謎な二人の出会いから一転、一緒に同居することになります。
仕事もなく、自分には何も失うものがないと思っている千紘。最近まで付き合っていた元カレは、あっさり女性と結婚してしまい、そのショックから何もやる気が出ない。
しかし、ミステリアスなケイトと同居し、食事を作るようになって、少しずつ彼について知るうちに、どこかお互い惹かれていきます。
でも、自分よりも過酷なケイトの過去を知った千紘は、なんとかケイトを励まそうとするのだがーーー。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』1巻のみどころ
ハッピーオブジエンド。タイトルからいいですよね。
先に伝えておくと、この作品は、主人公の背景が非常に過酷なため、決してハッピー、ほわほわふわふわしたお話ではありません。ヤリ部のような笑ってたのしい作品でもありません。本当に暗いです。なので、地雷やそういった作品が苦手な方には、読む前に確認することをおススメします。
作品の魅力1:ケイトと千紘
この作品は、今までのおげれつたなか先生の作品とはちょっと違うダークな雰囲気、悲壮感が漂っている作品です。主人公、特にケイトの過酷な家族背景が影響されています。
ケイトには、いくつかのトラウマがあります。
一つは、母親との関係性です。
ケイトが子供の時、母親と疎遠になります。もともと生活環境のよくなかった母親との暮らしの中で、ケイトは子供の頃に、母親のパートナーに襲われた経験もありました。そんな経験もあり、幼少期から自立して生きていかねばならなくなった。
成人したケイトは偶然母親に再会することになるのですが、そこからの母親との関係性は、まったく別物となりました。
もう一つのトラウマは、マヤとの関係です。
たまたま知り合った?!加治に、仕事を乞います。そして、そこからマヤという男性を介して、闇の世界へ入ることになります。
幼い時の母親との思い出、そしてその頃のまだ無垢だったケイトと、そこから闇の世界で様々な地獄を目にし、経験し・・・。自らの環境がどん底に沈んでいく自分を客観的に見ている表現が出てきます。
自分を哀れみ、そこから抜け出すことができない、また抜け出すことも考えていない、ケイトの現状が1巻では描かれています。
一方、千紘。
千紘は、幼少時から自分の「好き」の対象が男の子だということに気づいていた。しかし、家族はそれを「病気だ」と扱ったこともあり、子供の頃から頑なに自分の気持ちを、そして周りの人との関わりを絶ってきたのが千紘です。
元カレにフラれたことがトラウマなのだけど、それはその元カレが初めての恋人であり、自分の恋心を隠すことなく表現できた特別な相手だったから。
そして、残念なことに、千紘は家族から勘当されてしまいます。一切家族との関係を断ち切らざるを得なくなり、また恋人にフラれたこともあり、自分の力だけでは生きられなくなっていました。そして、その時に起こした事件が理由で、ケイトと知り合うのですが・・・。
葛藤からのスタートなんですが、個人的に考察が面白かったのは、ケイトです。さまざまな環境や要因で、彼の人間性、性格はかなり歪んでいます。セリフや彼のチグハグな態度、そして自分でそれに気づき、我に返るケイトの描写などが非常に考察のしがいがあり、心理描写が練りこまれています。おだやかに見える美人顔の表情に見え隠れするわずかな「感情の揺れ」の描写が素晴らしいです。
人生、山あり谷ありですが、谷にいる時はどこあで下がるのか、それが底なのかさえわかりませんね。そんな二人が知り合い、なぜか同居することになり、少しずつ距離が近づいていきます。この二人に幸せは訪れるのだろうかーーー。
作品の魅力2:わかりやすい描写の裏に潜める歪み
お話の冒頭から、ケイトの行動やセリフに少し違和感があります。1巻だけを読み進めていくと、なぜそうなったのか、少しずつ大きなネタが明かされていきます。しかし、さらに2巻へと読み進めていくと、今まで全く気づかなかった細かな動きやセリフの意味などが、時系列に沿ってどんどんとつながっていきます。
このお話を描く前から先生の頭の中にある程度アイディアや設定がないと、実現しない、練りこまれたお話の構成。おげ先生の作品には多いですが、このような展開は、おげ先生らしく、このシリーズも素晴らしいです。
例えば、冒頭数ページ。千紘はバーカウンターにいたケイトに一目惚れ。すごく好みだとケイトに伝えるのだけど、ケイトは目を隠して照れたような振る舞いをします。黒い瞳のケイトのこの仕草。照れているように描かれているんだけど、実はそうではないのが描写からわかります。
ホテルへ誘われて、喜ぶ千紘。しかし、ことを始めようと服の下に手を入れると不思議な感触が・・・。「?」とだけ表現されていますが、このセリフの意味も、2巻で知ることになります。
大まかなストーリーはさらっと読んでもわかりやすいんですが、細かな描写やセリフは、読み進めないと意味がわからないし、活きてきません。何度も何度も読むことで細かな描写が見えてきて、どんどんと物語の世界観へ引き込まれていきます。
おげ先生の作品を読まれた方ならわかるかと思いますが、普通の悲しいお話ではありません。物語が何重にも重なっています。メインのお話はいつもわかりやすく描いてくれていますが、このシリーズに関しては、今までよりもより入り組んでいるため、読者にとっても、挑戦的な作品になっています。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』を今すぐ読む方法
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
サンプルを今すぐチェックすることができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)
どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモア:頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。
Renta!:レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。
ところで・・・「Renta!レンタ」には、実は電子のみでしか読めないおげれつ先生のレア作『恋が踊るニュータウン』の電子書籍があります。単話で2話まで出ております。おげれつ先生、続編描いてくれないかなぁ。
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』のドラマCD
おげれつたなか先生『ハッピー・オブ・ジ・エンド』をもっと楽しむ方法に、ドラマCDがあります。
ビジュアルや無声で訴えかけるシーンがたくさんあるおげ先生のこの作品、ドラマCDではどのように表現されているのか、すごく興味があります。
ドラマCDは2023年11月現在、2枚リリースされております。
どちらも在庫がまだあるようですので、興味のある方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、おげれつたなか先生の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』1巻をご紹介しました。
完結したシリーズですのでまとめてご紹介してもよかったんですが、巻ごとに雰囲気が違うため、あえて分けてご紹介することにしました。
全3巻中、個人的にはこの1巻がすばらしく完成度が高いと感じています。この先生の作品は、本気読みしなければ汲み取れない表現がたっくさんあります。個人的なおすすめではありますが、やはり紙本で、何度も何度も一コマずつ確認して読まれると、おげ先生の凄さがわかるのではないかと思います。(電子だと目がすごく疲れるのは私だけでしょうか・・・!?)
漫画を本気で読まれている方には特にオススメの作品です。未読の方は、ぜひ。
そして、あなたの考察や感想を教えていただけたらうれしいです。
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