こんにちは。
2023年から勝手に始めたBL勉強会もいよいよ終盤になってきました。BLの歴史で読んでおくべき先生だとリストアップしておいた先生の一人である日高ショーコ先生の作品を読み始めたので、ご紹介します。
日高ショーコ先生は、現在非BLも長編連載しており、漫画家としての幅をグッと広げて活躍していますね。短編も長編も読みましたが、どちらも描ける方で、特に時代物が得意な方なんだなと思います。
今回ご紹介する『花は咲くか』は現代のお話ではありますが、面白かったです。
作品データ
花は咲くか 1
日高ショーコ
刊行年月:2009年12月24日
出版社:幻冬舎(ルチル comics)
どんな作品?
日高ショーコ先生の初の長編。全5巻のシリーズです。
日高先生は、現在一般漫画も描かれていますが、昭和のような少し古い時代の世界を描かれる印象のある先生です。(多分『憂鬱な朝』からそう感じるようになったかも。)
このシリーズは、幻冬舎のBL雑誌『ルチル』vol. 14(2006年8月)から連載がスタートしたシリーズで、1巻には vol. 25(2008年7月)に掲載された第6話までが収録されています。
広告代理店で働く桜井、そして彼が偶然知り合った大学生、蓉一。複雑なお金持ちの家に育った蓉一と、家や無愛想な蓉一に気を取られる桜井が少しずつ近づいていくお話です。桜井は仕事が、そして蓉一にはお家柄問題が出てきて、スケールの大きな作品になっています。
しっかりBLしてはいるんですが、今まで読んできたBL作品とは違い、一般漫画にBL色を強くした印象を受け、ストーリーがかなり練りこまれているのも特徴です。
カップリング
攻め:桜井(広告代理店勤務。若い頃はやり手だったが、最近はどこか守りに入っている様子。)
受け:蓉一(よういち:無表情の美大生。古い屋敷で下宿を営んでいる。人に興味がないようだが……)
あらすじ
広告代理店に勤める桜井は、仕事の毎日で寝不足続きだ。付き合っていた女性にもフラれたのにもかかわらず、ただ寝るだけのためにマンションを買ってしまった。
そんな彼は、ある日水川蓉一(よういち)という青年に知り合う。
蓉一は、古くて広い一軒家を所有しており、そこで下宿を営んでいる。
一緒に住んでいる従兄弟の菖太(しょうた)と竹生(たけお)、そして水川家に関わる人間には何か過去があるようだ。
きれいに管理された蓉一の住む屋敷に惹かれた桜井は、この家に頻繁に足を運ぶようになるーーー。
日高ショーコ先生『花は咲くか』1巻のみどころ
日高ショーコ先生の『花は咲くか』1巻のネタバレ!?感想レビューです。
作品の魅力1:しっかりと練られたキャラたちと環境
日高ショーコ先生の作品を読むのは初めてなので、初期作品や短編の描き方はわかりませんが、この作品に関しては、長編ということもあり、キャラ、そしてその周辺の設定がかなり練り込まれています。
このお話は2006年からスタートしたので、当時の漫画のトレンドもあったのかもしれませんが、2024年現在の作風は、スケールは比較的メインCPに特化しており、より親密な関係性を描く作品が多いように感じます。
それに比べて、この作品は登場人物の誰もがきっちりと描かれていて、読み応えのあるドラマ漫画をBL色強めに描いたような感覚。作品の奥行きもあり、しっかりとしたストーリー展開もあって、個人的にはこのような作品が好きです。
桜井は広告代理店に勤めている37歳。残業の多い仕事の毎日からくる疲労感が漂うリーマン感が伝わってきます。
事務所の面々も数人登場し、それぞれほどよい存在感があります。
また、仕事関連でつながった柏木(かしわぎ)というやり手の広告マンも、水川につながっていきます。
対する蓉一は、美大の学生という設定。まだ19歳でしょうか。無愛想なキャラで、いとこたちにも笑顔を見せたことがないほど。
そんな彼が偶然にも桜井と知り合い、少しずつ興味を持っていきます。
亡くなった父親は有名な画家で、蓉一も彼と同じ道を選ぶべく、美大へと進学した。そんな蓉一で興味を持った大学のクラスメイト、藤本。
1巻の段階で、たくさん人物が登場し、世界観が広がっていきますが、決してわかりにくくありません。それは、絵柄も含めてキャラそれぞれを描き分けられているのと、キャラ設定も面白いからだと思います。
また、桜井と蓉一のBL話は別にしっかりと描かれているため、混乱することがないのも助かります。
ただ、コンパクトに手っ取り早く二人のあれこれを読みたいという方にはちょっともどかしいですね。
また、家庭の問題、家の問題、そして桜井の転勤話など、1巻でほぼ全ての問題が提起されています。あとは、読み進めてどうやって解決していくのかを見届けます。
昭和のお話ではありませんが、古くて由緒あるお金持ちの家系とされる水川家、そして広い一軒家。そんな設定は、のちのショーコ先生の時代物作品にもつながっていったのでしょうか。
由緒ある家系ゆえのいざこざやしがらみなど、普段自分とは縁のないお家事情なども読み取れると面白そうだなと思います。
作品の魅力2:蓉一
水川蓉一。1巻はとにかく無表情、いや、むしろムッとしているばかりですね。桜井と馬が合わないと思っているのか、イライラしてばかり。
ものごとに無関心ということもあり、無表情な部分はあるのだけど、ことさら桜井に関しては、苛立ちさえ感じている……ように見えます。
古いがしっかりと手入れの行き届いた一軒家。そんな家で下宿を営んでおり、家主は蓉一になっています。
家の描写はそれほど詳しくはないのだけど、古くて広い家というのがわかり、また屋敷林もある。そんな屋敷そのものにも、広告代理店で勤める桜井は惹かれていきます。
蓉一が家主となっているこの一軒家。蓉一の両親は、彼が子供の時に事故で亡くなっています。両親が住んでいた時から下宿として開放していたその一軒家には、桜井が仕事を介して知り合うことになる柏木も住んでいた家で、柏木は蓉一の父と友人だった。
全く共通点がないような桜井と蓉一が第三者を通してつながっていく過程も魅力的に描かれています。ここで、蓉一の両親、特に父親がキーパーソンになっていきます。
蓉一の下宿に住んでいる菖太と竹生。いとこということで、蓉一の父親からの繋がり。蓉一の父親の存在がキャラたちを複雑につなげていき、また蓉一の成長過程や進路においても大きな影響を与えていきます。
全5巻のうちの1巻なので、詳細はまだわかりませんが、序章にしては、今後の展開で必要な問題提起がすべて1巻にまとまっていたので、その後の展開が追いやすいのもうれしいです。
蓉一のもう一つの重要ポイントは、絵。
蓉一と有名な画家だった父親とのつながり、それは絵です。
蓉一自身も美大へと進学し、絵を学んでいきます。父親や知人たちに教えられたということもありますが、たまたま桜井は蓉一が描いている油絵を見かけ、声をかけます。それが蓉一にはとても新鮮だったようで、そこから桜井へ興味を示していきます。
気になった点:微熱の行方(桜井の場合)
唯一気になった点は、桜井の想いです。
1巻では、まず桜井が蓉一に惹かれていることに気づきます。BLですし、そこには問題がないのですが、問題は熱量。
こんなにも誰かを好きになることができるなんて考えもしなかった
私がゆっくり読み進めた中で、1巻の段階で正直そこまでの気持ちの盛り上がりは感じられませんでした。w
ほのかに惹かれていく「気づき」はいいのだけど、37歳の男性が「こんなにも」と感じるまでの熱量は読み取れなかったです。
そこに作品と私の気持ちのズレができてまったのは確か。
もちろん、今後の気持ちの盛り上がりはあるのでしょうが、1巻ではまだ早いセリフだったのでは?と思いました。
連載は2006年8月からスタート、そしてこの台詞が登場するのは2008年5月なので、連載を追っていればちょうどいいかと思います。完結してから読んでいる自分とは少しズレがありますが、読む時期などによっても感じ方が違ったかもしれませんね。
蓉一の方はと言えば、なにごとにも無関心な性格。しかも、色恋に関してはまったく興味も経験もないのでしょうか。本人は何も気付いていない様子です。
一緒に暮らしてきた菖太と竹生が、少しずつ蓉一の変化に気づいていきますが、それはまだ恋心ではないようなのですが、どうでしょうか。☺️
日高ショーコ先生『花は咲くか』を今すぐ読む方法
日高ショーコ先生『花は咲くか』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。
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まとめ
いかがでしたか。今回は、日高ショーコ先生の初めての長編作品『花は咲くか』1巻をご紹介しました。お話がゆっくり続くようなので、1巻ごとにご紹介することにしました。
それぞれの巻での二人の関係性が近づいていく過程が楽しめる作品。
また、BLの歴史においても日高ショーコ先生の作品は必読だと思っています。
未読の方は今すぐ手に取ってみてください ❤️
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