こんにちは。
今回は、ハヤカワノジコ先生の『えんどうくんの観察日記』をご紹介します。
創作活動の長い先生ですが、なかなかコミックスが出ない寡作の先生です。高校生の爽快だけど不安定な思春期の心理描写が巧みな先生だと思います。未読の方はこれを機会にぜひ!
作品データ
えんどうくんの観察日記
ハヤカワノジコ Nojico Hayakawa
刊行年月:2011年10月15日
出版社:大洋図書(HertZ series 110)
どんな作品?
ハヤカワノジコ先生の初コミックス。2011年の作品です。
けんかっぱやい男の子・津田と、物静かな遠藤の物語。
そこに、クラスの女の子たちや男友達も絡んでくるのがノジコ先生の作品の特徴でもあります。
恋心の表現方法がわからない二人の駆け引きと、ノジコ先生の唯一無二のアートや世界観のフロマージュで、作中ずっと色気ある雰囲気が漂います。
鮮やかな世界観の中で、ゆっくりと惹かれていく二人の心理描写が魅力的な作品です。
透明感のある水彩絵の具で色付けされた表紙イラストがとにかく素敵で、先生の世界観はこの表紙からスタートしています。
表紙、裏表紙、そして口絵カラーの3点しか拝めないのが悲しい。ノジコ先生のカラー絵をもっともっと愛でたい!
ハヤカワノジコ先生『えんどうくんシリーズ』を読む順番
津田と遠藤の恋物語は、シリーズ化されています。
読む順番は以下の通り。
- えんどうくんの観察日記
- えんどうくんの実験ノート(上下巻)
今回は二人の距離感が近く1巻目をご紹介します。
カップリング
攻め:津田(ケンカっ早い長身の高校生。神崎という実家が理容室の友達がいる)
受け:遠藤(もの静かな男の子。席替えで津田の前の席に……)
あらすじ
高校生。席替えで、遠藤が前の席にやってきて以来、津田は何気に遠藤のことが気になり始める。
ほくろが気になったり、モサッと伸びた髪の毛や細い首など、気になることだらけ。話しかけたら、意外と面白いやつで。
ゆっくりと関係していく遠藤と津田、そしてそこに遠藤を好きな女子のが出てきてーーー。
ハヤカワノジコ先生『えんどうくんの観察日記』のみどころ
ハヤカワノジコ先生の『えんどうくんの観察日記』ネタバレ!?感想レビューです。
作品の魅力1:高校生の世界観
ノジコ作品の魅力は、唯一無二の世界観。
毎ページをキャンバスとして捉え、アート的に自由に描いていきます。
ストーリー、コマ割り、アングル、セリフ、白黒のバランスーーー。
この作品でもそれを存分に魅せてくれます。
ハヤカワノジコ先生の作品の魅力は、決して主人公二人だけのお話ではないところ。友達との関係性も少なからず描かれているのが特徴です。
このえんどうくんシリーズでは、津田の友達の神崎(かんざき)がきっかけの一つとなって、津田と遠藤が関係していきます。神崎の背景も少しだけ描かれていて、また二人の関係性を達観しているところも面白いです。
そして、遠藤と津田に想いを寄せる女の子たちも登場します。
BL作品ではあるのだけど、高校生の日常、高校生の世界は意外と狭く、学校内で起こるイベント……が基本的に中心です。
そんな狭い世界で起こるあれこれに、女の子がいるのは(共学なら)あたり前で、そんな恋愛模様が描かれているのもリアリティがあってうれしい。
教室を含めた校内の様子、友達とのやりとり、学校周辺しかわからない狭い世界観、そして限られた趣味……。
この作品の中では、二人の気持ちや関係性は言葉での説明がありません。お互いが自分自身で感じていること、または二人の間で感じていることが描かれています。
なぜ男の子に惹かれるのか、そういった葛藤描写もないし、周りの友人や女子たちもスマートにそれを察していきます。
決してはっきりと定義しないところ、定義できない気持ちが高校生のリアルじゃないでしょうか。わかっているようでわかってない。好きなようだけど、わからない気持ちーーー。
女の子たちの気持ちも微妙ですね。応援したいような、悔しいような……。
皆が各々、複雑な気持ちに踠きます。
作品の魅力2:空気感
高校生の爽やかな空気感が、作品全体に広がっています。
世界観、空気感の出し方は、これはもう先生が持っている感性から来るものだと思います。
ノジコ先生のそれは特に強く、魅力の一つです。
爽快な空気感は漂っていますが、決してキラキラはしていない。そんな描写です。
また、津田と遠藤の間にあるケミストリーは、お互い好意的な気持ちなのだけど、津田のそれはより情欲があって、仄かに雄のエロスを感じます。
絡みシーンはほぼ皆無なのに、なぜか作品全体に漂う色気。それも、ノジコ作品の特徴の一つ。
物語は、津田の視点を中心に描かれています。(遠藤の視点もあり。)
作品の魅力3:水彩カラー
ハヤカワノジコ先生の魅力のひとつは、カラーイラスト。
水彩絵の具で描かれた卓越した透明感のあるイラストがコミックスを飾ります。
もっともっと見たいんですが、残念ながらコミックスで拝めるのは表紙、裏表紙、そして口絵カラーの3点のみ。ちなみに裏表紙に描かれている神崎……。カバンにはまったく教科書が入っていなさそうだな w 🤣
いつの日か先生が発表したカラーイラストを愛でることのできるイベント、開催してください!w
最近はデジタルでも水彩絵の具の質感を出すことができるので、今もアナログで描かれているかどうかはわかりませんが、間違いなく先生のイラストの特徴で、このイラストが世界観を作り上げています。
ちなみに、ノジコ先生はトピカという名義で同人活動もされていたようですが(他にも名義があるかも)、同人時代にも水彩カラーを披露していたようですね。
いつか同人の方も拝見したいな……。
作品の魅力4:ノジコ作品のエロス
ハヤカワノジコ先生の作品では、直接的な絡みシーンを見たことがありません。(今のところ。)
この作品でもほぼ皆無です。それなのに、ページをめくるたびに昂まるこの胸のドキドキはなんだろう。色気(エロス)があちこちに漂っています。
作中描かれる手の動きから、熱量を感じられるし、遠藤や津田の髪からもそれを感じます。
津田の手が徐々に遠藤の髪の毛に触れ、そして二人の距離も近づいていく。
二人の距離感を手から読み取っていくのも面白かったです。
ハヤカワノジコ先生『えんどうくんの観察日記』を今すぐ読む方法
ハヤカワノジコ先生『えんどうくんの観察日記』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。
コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!
ハヤカワノジコ先生『えんどうくんの観察日記』をもっと楽しむ方法
うれしいことに、『えんどうくんの観察日記』はドラマCD化されています。
CDのジャケットのイラストはコミックスとは違うので貴重です。
新品での購入は難しいようですが、中古などで見つかる可能性があります。
オーディオドラマが好きな方は、要チェックです!
まとめ
今回は、ハヤカワノジコ先生のデビューコミック『えんどうくんの観察日記』をご紹介しました。緑や青にいろどられた清々しい二人の恋物語のスタートです。このシリーズは続編(『えんどうくんの実験ノート』)もあるので、ぜひそちらもセットで二人の物語を追ってみてください。
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