天禅桃子先生の定番とも言える、リーマン作品。
デビュー20周年イベントと連携してリリースされたこの『オルタナティブ』は、天禅先生の魅力がたっぷり楽しめる1巻完結作品でした。
作品データ
オルタナティブ
天禅桃子 Momoko Tenzen
刊行年月:2018年02月08日
出版社:コアマガジン(drap comics DX no. 038)
どんな作品?
天禅桃子先生の通算26冊目のコミックス(新装版含む)。
ベテランの先生ですね。
私にとっては、天禅先生の2冊目の本になります。(ちなみに1冊目は『He is beautiful.』。)
先生の本はたくさんあるので、正直どれから読み始めていいかわからなかったので、比較的新し目の作品で、惹かれる表紙を選んだうちの1冊です。
第1話は『comicAQUA』(2015年8月号)、それ以降は『drap』2017年4, 6, 8, 10月号に連載されたものが1巻完結にまとまっています。
特定の相手を作らずに自由な恋愛を楽しんできた水原。会社の後輩の結婚式に出席して、そこで知り合った男性・志田に興味を抱きます。志田をひっかけるためについた嘘。でも、志田はその嘘が本当のことだということを知っていた。
二人の関係と、その間に入る水原の後輩(二人の共通の知人)、そして、水原の過去の男性も登場してきて、体の関係はあるのだけど、二人の関係が一体なんなのかわからないじれったさを感じさせてくれる作品です。
きれいなお話の中にも、水原と志田の人間臭さのある人物像が魅力的で、表情やしぐさを追うと、どきどきしてきます。
また、以前読んだ天禅先生の作品に比べると、絡みシーンが少し増えたような気がします。水原の性格のせいかな!?
どのエピソードも、シリアスとユーモアのバランスがよく描かれていて、ほどよい緊張感と癒しがあります。
カップリング
攻め:志田(静かに相手を観察しています。心やさしい肉食。w)
受け:水原(自由な恋愛を楽しんでいたが、実は後輩に密かな想いを寄せていた)
あらすじ
会社の後輩の結婚式に出席した水原は、そこで後輩の学生時代の友人・志田と知り合う。一人でいた水原に気を使ったのか、話しかけてきた志田と、式の後で身体を重ねた。
水原が隠そうとしていた気持ちを志田に見破られ、知り合ったばかりなのに少しばかり自分をさらけだしてしまった水原は、志田とまた会うべきか戸惑いつつも、また肌を合わせ、近づいてはいくのだけど、心のすれ違いから、距離が近づかない。
そんな中、水原の過去の男性が偶然あらわれてーーー。
天禅桃子先生『オルタナティブ』のみどころ
作品の魅力1:水原と志田の人物像
水原と志田、どちらも見た目の印象と性格のギャップがとても魅力的です。
物語は水原の後輩の結婚式からスタートします。水原の後輩・有村は、志田の高校時代の友人ということもあり、水原と志田はこの結婚式で知り合います。
さりげない志田のジェスチャーや笑顔に興味を持った水原は、自分は有村にフラれたという演技をして、なんとか志田を誘おうとする。
結局二人は式の後で関係を持つことになるのだけど、大人しそうな志田は、やさしさを兼ね備えた肉食で、また自由な恋愛を楽しんでいるように見えた水原は、実は一途に有村を思っていたことを知ります。
さりげなく水原を思いやる志田の手の動きからも彼のやさしさが読み取れます。水原は、なんとか自分を取り繕おうとするのだけど、志田のやさしさを感じ、感情のコントロールが出来なくなる。
知り合ったばかりではあるのだけど、抑えきれない感情。そんなパッションから、この二人の可能性が表現されています。
志田はおとなしいキャラだけど、物事をゆっくり観察している。
狙った獲物は、じっくり様子を伺い、観察する。そして、時を見計らって、行動に移す。2回目を誘ったのも志田の方から。
ちょっとした水原の表情から、志田は水原の心情を汲み取っていく過程も彼らしいです。
そして、たまに見せる肉食モードが微笑ましい。
また、心優しい志田は、さりげなく水原の頭に触れたり、抱きしめたりするのですが、そんな何気ない行動も絶妙のタイミングで描かれています。
目立たないコマにあるため、今までの自分だったら見逃しそうになりますが、物語にのめり込めばのめり込むほど、このタイミングが実は志田の性格を表現する上で重要なポイントになっています。
作品の魅力2:絡み
魅力……といっていいかどうかはわかりませんが、この作品は、天禅先生にしては珍しく絡みが多いです。というか、読者のニーズに答えるために絡みシーンを増やしたのでしょうか w
この作品は2018年作品だけど、最近の天禅先生の作品は、しっかりした絡みがあるのかな?
きれいで、ファンタジーのような作品を描く先生でしたので、この作品は絡みが増した分、よりリアリティある作品になっています。
小説のようなモノローグでもなく、しっかりと相手を観察する志田の視点で描かれていることもあり、ファンタジーの雰囲気がなかった。
この作品に関しては、絡みが多めでよかったと思います。水原は、自分の一途な想いをひた隠す形で、自由に恋愛を楽しむキャラ。有村には「遊び人」とさえ言われてしまう始末です。
でも、情欲を楽しむ反面、それは過去の傷、もしくは水原の想いが叶わないのを知っていて自分を癒すためなのかもしれません。また、シンプルに志田に興味があるのも理由の一つ。
志田もおとなしいように見えて、かなり肉食なところも、絡みシーンから読み取れます。アプローチを仕掛けてくるのは、大抵は志田です。そしてしっかり水原の要望?!に応えます。レストランでもね。
作品の魅力3:有村の存在
謎の人物、それが有村です。w
水原と志田の共通の知人。水原の後輩で、実は水原が想いを寄せていた人物でもある。
どのくらい好きだったかはわかりません。心を開くのに時間がかかる水原は、かなり時間をかけて好きになったのではないかと思います。
一方、志田は有村の高校時代の友人。クラスメイトでしょうか。同じ年のようで、タメで話すんですが、結婚式の有村の告白によると、どうやら高校時代、有村は志田のことが好きだったとか。
……はっきりいって、ふらついてるのは有村なんですよ!w
高校時代は志田のことが好きで、今は先輩の水原の「一番」になりたいと思うのに、さっさと女性と結婚してしまう。なんとも自分勝手なやつです。
新婚なのに、奥さんとちょっと喧嘩になると、志田の家に押しかけるんですが、そこにたまたま水原も居合わせ、何かを察する有村。
志田はいいやつで大切な友達。でも水原先輩は取られたくない!😖
そんな自分勝手な奴ではあるんですが、彼がいないと成り立たないお話なんです。
水原の過去の男性も出てきますが、スパイス程度にしかお話に絡んできません。なので、有村の立ち回り様によっては、お話も全然違うテイストになっていたかもしれません。
作品の魅力4:リーマンもの
天禅先生といえば、リーマンものの作品が魅力的です。
いろんな職業のキャラたちを描かれていますが、一番しっくりくるのがリーマンものかなと思います。
前回読んだフラッターもそうだった……
感想:気になった点 名前
ひとつだけ、もったいなかった点がありました。
それは、水原がずっと「志田くん」と呼び続けたこと。1話の終わりで「志田」と呼び捨てになって、心の距離が少し縮まったはずなのに、2話以降、また志田くんに戻って、最後までそのままでした。
志田の方は、基本は敬語なのだけど(水原は年上なので)、時々タメになります。そのちょっとしたギャップを楽しんだのですが、可愛い受けの水原が、名前だけは呼び捨てにしてほしかったと思います。
それくらいのちょっと強がったところも見えれば、最後の「つきあう」というセリフがもう少し重みがでるかなと思いました。
もちろん、個人的見解ですが。
つきあうことになるのは(読者は)わかっているのだけど、すっかり可愛らしくなってしまった水原が、あっさりあの言葉を口にすることで、言葉の重みがあまり感じられなかった。
天禅桃子先生『オルタナティブ』を今すぐ読む方法
天禅桃子先生『オルタナティブ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
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天禅桃子先生『オルタナティブ』をもっと楽しむ方法
天禅桃子先生『オルタナティブ』をもっと楽しむ方法は、ドラマCDです。
リリースされています。
声優さんをチェックしたら、山下誠一郎さんの名前が!
わわ〜、座裏屋先生の『リカー&シガレット』のテオと同じ声優さんですね。聞いてみたいです。このお話なら、オーディオドラマでも十分楽しめるお話なので、時間ができたらオーディオもチェックしようと思っています。
まだ新品での購入も可能なので、興味のある方はこちらもチェックです。
今すぐサンプルチェック(以下のオフィシャルサイトにサンプルあり)
まとめ
今回は、天禅桃子先生の『オルタナティブ』をご紹介しました。
天禅先生の20周年イヤーにリリースされた作品ということもあり、ドラマCDを筆頭に当時はいろいろとイベントがあったようですね。リアルタイムでお祝いできなくて残念。
でも今、先生のことを知り、素敵な作品を読むことができてよかった。
これからも素敵な作品を描き続けいてほしいです☺️
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