こんにちは。
今回は、天禅桃子先生の『フラッター』をご紹介します。
天禅桃子(てんぜんももこ)先生はベテランの先生。2018年にデビュー20周年のイベントがあったようです。2000年にデビューコミック『SMCへようこそ』がリリース。コンスタントに創作活動を続けられている方です。
青を基調としたイラストを見て、最近の作品をいくつか読んでみようと思いましたが、この作品は2011年の作品でした w
作品データ
フラッター
天禅桃子 Momoko Tenzen
刊行年月:2011年10月29日
出版社:大洋図書(CRAFT series)
どんな作品?
天禅桃子先生の通算15冊目の単行本です。
BL雑誌『CRAFT』vol. 35, 39, 43, 47-49 に掲載されたお話が1冊にまとまりました。vol. 35 (2008.1)からvol. 47 (2011.1) までは、1年に1回の掲載となっていたため、完結までに約3年半かかったようです。雑誌で読んでいた方は大変ですね。
私のような古い人間は、連載といえば、毎月、もしくは隔月の連載かなと思いますが、さすがに1年に1回とは……。先生のスケジュールの関係だったのか、雑誌社の都合だったのか、BLあるあるなのか……。
しかしながら、大きな絵柄の変化もなく(絵が変わってしまうと統一感がなくなりますよね)最後まで安心して拝読できます。
リーマンの浅田と、同じ会社に勤める観月のお話。浅田はずっと観月のことが気になっていたのですが、一緒に仕事をすることになり、観月の仕事ぶりや彼のプライベート、性格などを徐々に知っていくことになります。そして浅田自身の心の揺れもゆっくりと描かれています。
色恋話ばかりになるのではなく、しっかりと仕事ぶりも描かれているので、1巻完結ながらもリアリティのある世界観ができています。
カップリング
攻め:浅田雅浩(観月に憧れていたが、一緒に仕事をすることで、より気持ちが・・・)
受け:観月亮輔(仕事とプライベートはほんのりギャップあり。ゆっくりと浅田に心を開いていきます)
あらすじ
営業部に所属している浅田は、毎朝ある男性に心を奪われていた。男性なのに美しく、身なりもかっこいい。誰なのかと気になっていた矢先、新しいプロジェクトで一緒に仕事をすることになった。
観月はプロジェクトの責任者だ。仕事も出来て、男前で、そして車内(特に女子社員)の間では実に有名人だった観月の左手には指輪が光っていた。実は観月はゲイだという。
仕事をしながら観月の仕事ぶりや性格を知っていくと、ある日観月が街の中で涙を流しているのを見かける。ほおっておけない衝動に駆られ、自ら観月の元へ駆け寄る浅田。浅田の想いと、観月の相手、そして過去に一体何があったのかーーー。
天禅桃子『フラッター』のみどころ
作品の魅力1:安定した世界観
天禅先生は、おそらく自分と同じくらいの年齢の方なのかな思います。絵柄に、私が学生時代にたくさん読んでいた少女漫画(80, 90年代)の雰囲気が残っています。
きれいな物語の描写で、ファンタジーのように書き上げるスタイルです。リアルすぎる細かな描写(絵柄も含めて)よりも、ファンタジー感の残る世界観が魅力です。
作中のセリフにもそれが見え隠れしますが、モノローグは少しだけ詩的な感じを残します。勢いのある若者のお話ではありませんし、絡みシーンも激しいものではありません。が、しっかりとパッションがあり、それは情欲だけではない愛情のあるものです。
また、キャラの周辺の脇キャラたちをしっかり描かれるのも、この作品が読みやすい理由の一つです。観月の過去のお話に登場する吉野さん、そして会社の同僚たちもちょこっと登場するのですが、ほんの少しの描写が、作品をイキイキさせます。
作品の魅力2:アナログの魅力
今はもうデジタルも使用されているかもしれませんが、この頃はアナログで描かれていたのでしょうか。表紙を開くと、アナログのイラストが素敵です。
私がもともと天禅先生の作品に興味をもったきっかけは、ブルーを基調としたイラストでした。他の本の表紙などもチェックしましたが、ブルーに限らず、先生がチョイスする色彩がとってもきれいです。
この本の口絵イラストも、椅子のクッションはエメラルドグリーンでしょうか。そこに、ボルドー系のフロア。
デジタルによるかっこいいイラストも大好きですが、常に技術が新しくなっていくので、すぐに古さが出てくる。でもアナログの絵はあまり色褪せない。そういったアナログイラストの魅力が大好きで、今はそれが逆に貴重になってきました。
デジタルはトレンドですが、だからこそ、デジタルやアナログ、先生たちが自在に作風に合わせて表現されていけば素敵だなぁと思っています。個人的には水彩画が好きなので、その雰囲気が味わえる天禅先生のイラスト、毎回コミックスを読むときは楽しみにしています。
作品の魅力3:矛盾のないセリフ
この作品は、じっくり拝読しましたが、セリフがとても魅力的でした。自然体でありながら、そこにはファンタジーらしい「美」もあり、また矛盾がありません。各々のキャラの性格らしいセリフであるため、まったく不自然さを感じないのが特徴であり、魅力です。
観月は仕事ができる魅力的な男性。ゲイを公言していることもあり、身なりも整っており、女子社員にも人気があります。しかし、そんな彼が浅田と距離を近づけていく上で、意外と自分勝手だったり、プライベートでも思わず考えている仕事の話をしてしまったり、さらっとしたセリフの中に観月が浅田に心を許していく過程が自然に描写されています。
観月が過去を清算し落ち込んでいた時に、たまたま浅田から電話がきます。涙を流している観月を察し、「今から行く」と言い、浅田は観月の自宅へ向かいます。
あっという間に到着したのか、「いくらなんでも早すぎるだろ……。ストーカーか、君は。」と心の声が漏れてしまう観月の、読者をも代弁するような台詞に笑ってしまいました。w
こういった何気ないセリフも、ドラマチックになりすぎず、自分にはとても馴染みました。
感想:気になった点:濡れ場はやっぱりファンタジー
BLはファンタジー、この先生の作品は少女漫画のようなファンタジー感がいいんです。ただ、この作品の濡れ場も本当にファンタジーでした。w
私はBLに絡みを期待しているわけではないので、ライトBLでも問題はありませんが、一応、浅田の役どころはノンケのはずで、エンディングに二人は少し体を重ねるのだけど、いつの間にやり方覚えたんだろう、という。w
そんなことをツッコミながら読むのが楽しいんですが、直接的な表現に慣れている現代の読者には、受け入れられるだろうか。
そして、最後までどっちが攻め・受けなのかもはっきりしなかったのも、面白かったです。ただ、二人の気持ちの盛り上がりは行為の前までにしっかりと高まっているので、具体的なシーンがあってもなくても楽しめる作品です。
天禅桃子先生『フラッター』を今すぐ読む方法
天禅桃子先生『フラッター』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。
コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!
まとめ
今回は、天禅桃子先生の『フラッター』をご紹介しました。
この先生の作風は昔からほぼ変わらず、安定しています。ですので、先生の作品をいくつか読んで気に入った方は、タイトルや表紙カバーから得るインスピレーションを頼りに、お好きな作品を手に取られることをオススメします。
ちなみに、天禅先生の20周年記念の作品集が出ております。私も現在それを読んでいますが、ボリューミーで読み応えのある作品集です。それを読むのもいいかもしれませんよ。😉
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