中村明日美子先生『火花』:ある女子が見た男二人の物語

中村明日美子
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こんにちは。

今回は、中村明日美子先生の『火花』をご紹介します。

2024年も精力的に作品をリリースされた明日美子先生ですが、特にBL作品がリリースされてうれしい限りです。

作品データ

火花

中村明日美子 Asumiko Nakamura

刊行年月:2024年11月10日

出版社:リブレ(BBCDX)

どんな作品?

中村明日美子先生のリブレから3作目のコミックスになります。

『薫りの継承』(上下巻)、『あの日、制服で』(短編集)に続き、久しぶりのリブレ作品になります。

BL雑誌『MAGAZINE BE x BOY』の付録だった「女子BL」がテーマの小冊子からスタートしたお話です。女子目線で……はもちろんですが、明日美子先生ならではの視点とキャラたち、いつも通りのドラマチックな物語展開と描写が楽しめます。

中村明日美子先生といえば、とにかく素晴らしい画力が魅力ですが、今回の作品では、以前よりさらにパワーアップした迫力がありました。

また、描き下ろしが2本入っていましたが、1本は『火花』とは全く違う世界観の短編。明日美子先生の作品はショートから長編までどれも読み応えがありますが、この18ページの短編も楽しめます。

登場人物

戸森しょう子:物語の主人公。高校時代は耀司と付き合っていた。

犬飼耀司:高校時代のしょう子の彼氏。少し暴力的。三郷と何かある。

三郷宏:高校の転校生。三郷といざこざがあったが、すぐにまた転校していく。

あらすじ

戸森は見た。彼氏の耀司(ようじ)と転校生・三郷(みさと)がすれ違った時に二人の間に放たれた火花を。

耀司と三郷の間に何があるのかはわからないが、二人はいつも喧嘩をしていた。見たことのないほど凶暴になる耀司に戸惑う戸森は、彼と付き合っていた。

喧嘩しているはずなのに、耀司と三郷の間にある特有の視線。皆が気づいているその思いを胸に、各々はそれを無視し、ある日を境に、戸森と耀司は別れるのだが、数年後に再会してーーー。

中村明日美子先生『火花』:ネタバレ!?感想・レビュー

中村明日美子先生の『火花』、読み終わりました。

全体的な感想としては、やはり明日美子先生の作品は素敵だな、と。

先生の作品は、どの作品も、やはり唯一無二。

ストーリー、イラスト力、表現方法、キャラ……。
明日美子先生のそれらは、決して誰にも真似のできない、唯一無二の魅力がありますね。

作品そのものには多少の好みはあるものの、どの作品にも必ず変化があり、学べるものがあります。

今回の作品は、特に余白の多い作品だったので、読者の考察や妄想する余地もあります。

作品の魅力1:戸森の視点

もともとこの作品は、雑誌『MAGAGINE BExBOY』の付録についていた『女子BL』という小冊子からスタートしたようです。物語は、戸森という女の子の視点で描かれています。

彼女が高校生の時に付き合っていた彼氏の犬飼耀司(ようじ)、そして、転校生としてやってきた三郷(みさと)という男の子。この二人が出会い、何を感じ、そして二人の間で何があったのか。

戸森の視点、そして読者に物語の全容が分かるように描かれています。

明日美子先生はBLだけでなく、様々なジャンルの作品を創り出してきました。
この作品は、BLでありながら、どこかそれとは距離を置いたような感覚があります。

物語の主人公はあくまで戸森であり、彼女が見える部分が主に描かれているからでしょうか。犬飼と三郷の関係性ははっきりとわかるのだけど、BLだけに、もっと二人の心情に踏み込みたい気持ちも……。

作品の魅力2:画力

いつも素晴らしいイラストを楽しませてくれる明日美子先生ですが、今回も迫力あるイラストでした。犬飼と三郷はもちろんのこと、戸森というかっこいい女の子も迫力あります。

女性よ、強くあれ。

そんな明日美子先生からのメッセージさえ読み取れる戸森の力強さ。
とても惹かれます。

また、描写的にも、目や口元の表情がより繊細になっており(個人的感想)、物語に一気に引き込まれたのもこの作品の特徴です。

紙本で漫画を楽しむ私としては、この作品を手に取った時、ページ数が少し少なく感じたため(最近の漫画はページ少なくなった……)、物語は描かれ切れるのだろうかと心配でしたが、十分楽しめる作品になっています。

まぁ先生は4ページのショートでも素晴らしい作品が多々ありますから、不安になる必要なんて全くなかったです。w

気になった点:BL

やはり、もう少しだけ男の子二人の空間を覗きたかったです。

特に犬飼の心情描写は特に少なく、読者がおのおの考察しなければいけません。
彼の葛藤、そして処理のできない感情を暴力という形に置き換えてしまう犬飼。

物語のキーとなるバイオレンスの原因や、犬飼はなぜそれを感じ、どう対処してきたのか。

また、戸森はそんな犬飼のどこに惹かれるのか、いろいろと考えてしまいます。

戸森の視点で描かれていますが、彼女の仄かな恋心もブレンドされているため、彼女のちょっとずる賢いところ、賢さや力強さ、曖昧さ……。いろいろな感情が入り混ざっていました。

少女漫画系も描かれる明日美子先生だから描ける視線ではないでしょうか。

物語を読んだ際、自分の感情の揺れも面白かったです。

主人公の戸森と一緒に犬飼と三郷の二人を見つめている自分と、二人の間にいる戸森を追う自分、そして、少し離れた距離から三人の物語を追う自分。BL脳と漫画脳を行き来するような、不思議な感覚で読んでいました。

あとは、正直もう少し長く描いていただけたら、明日美子先生の素晴らしいイラストをもっと堪能できるのに、というシンプルな個人的願望もあります。w

中村明日美子先生『火花』を今すぐ読む方法

中村明日美子先生『火花』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

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まとめ

今回は、中村明日美子先生の『火花』をご紹介しました。

BLだけでなく、様々なジャンルで活躍される中村明日美子先生ですが、私が先生の作品に出会ったのは『Jの総て』。やはり先生のBLを読みたいです。ですので、2024年は『惡い男』そしてこの『火花』と、2作品読むことができて、本当にうれしかった。

2025年は先生の25周年ということもあり、きっとイベントも目白押しかと思います。益々のご活躍をお祈り申し上げます。^^

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