中村明日美子先生『惡い男』:明日美子先生の描く男たちの美の瞬間

中村明日美子
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こんにちは。

今回は、2024年にリリースされた、中村明日美子先生の短編集『惡い男』をご紹介します。収録されている作品は少し古い作品になりますので、若干の絵柄の変化も楽しめました。

作品データ

惡い男

中村明日美子 Asumiko Nakamura

刊行年月:2024年06月30日

出版社:WeComix

どんな作品?

中村明日美子先生のBL短編集

大ヒットシリーズ『同級生』の関連シリーズや、少女・青年漫画雑誌にもコンスタントに連載を描かれていますが、長編も短編も味のある作品が描ける明日美子先生の存在はBL業界でも非常に貴重だと思います。

『同級生』が大ヒットしたため、あの青春BLのイメージが強いかもしれませんが、もともとかなり耽美な作品を描かれている方です。

国内外の文学や哲学にも影響を受けている方で、物語の作り方も読みやすいものから理解が難しいものまで描かれています。(読者も勉強せねばなりません。w)

明日美子先生といえば、やはりイラストに魅力される読者も多いのではないでしょうか。

今回の短編集は、一番古いものは2007年から描かれた6つの短編と描き下ろしが1冊に纏まっています。絵柄の大きな変化は感じず、安心して読むことができます。

タイトルの『惡い男』がテーマとするならば、誰が惡いヤツなのかーーー。

最後の最後でピリッとする読後感がたまらない短編集でした。

中村明日美子先生『惡い男』:ネタバレ!?感想・レビュー

短編集なので、お話ごとにご紹介します。

ストーリー1:春の画

BL雑誌『Dear +』2009年7月号掲載。

ちょっぴり強がりで、でもまだ何も知らない無垢な安藤と、パリからやってきた編入生・加賀谷の交流のお話。

安藤の元に、一枚の春画が回ってきた。ちょっぴり興味はあるものの、安藤はそれが何を意味しているかわからない。加賀谷はそんな無垢な安藤がどうやって性に興味を持ち始めるのかと、感興をそそられます。

春画が出てくる時代背景なのも魅力の一つですね。2009年作品ですが、この頃の先生の絵が個人的には特に好きなのと、中学生くらいのまだ少年のような男の子の描写にもそそられます。

ストーリー2:夏と冬のであう場所

BL雑誌『マンガ・エロティクス・エフ』2008年 vol. 52 掲載。

短編らしい作品で、明日美子先生が得意そうなトピックでしょうか。

禁断でありつつも、そこには主従関係、情や快楽がある。

登場人物たちの関係性は禁断ではありますが、すべてを短編で納めるには少し難があったかもしれません。二人の間にある複雑な感情は、少し汲み取るのが難しかった。

もちろん、セリフでは説明されていますが、もう少し長めのお話なら、言葉の説明なしに魅せてくれたかなと思います。

また、短編のエンディングの難しさも感じました。

尻切れトンボには感じませんでしたが、ほんのもう少しだけ、余韻を感じたかった。

ミステリアスな物語の展開は、とても好きです。

ストーリー3:ぼくのすきなにいちゃん

雑誌『OPERA』2012年 vol. 31 掲載。

明日美子先生の描かれる男の子は、少年と青年の狭間が特に好きで、1話目にご紹介した『春の画』に登場する安藤なんかは読み応えのあるキャラだと思っていましたが、このお話はついに小学生になっちゃいました。w

タイトルのごとし、小学生のカズが大好きなおにいちゃんとの交流を描いた話。

確かに短編ではあるけど、読み応えのあるお話です。たった16ページだというのが信じられない……。

まだ幼いカズの視点から描かれているので、にいちゃんはかっこいい。なんでもできて、なんでも知っていて、なんだかかっこいい。

その対比として、にいちゃんの真似をして背伸びしようとするカズが可愛らしく、素直。

物語そのものも素敵ですが、漫画家としての先生の力量を見せつけられるような作品に出会うと、やっぱり明日美子先生の作品は読み逃せないな、と思います。

ストーリー4:ヘンタイ

同人誌でリリースされた作品。

単行本収録、うれしいです。

この同人誌は何度か見かけて、すごく気になってはいたんです。
絶対に面白いのはわかっているのだけど、どうしても食指が動かなかった作品です。なぜなら、女装ものだから。女装ものは今ひとつ理解が追いつかずでして……。まさに癖(へき)の問題です。

しかし、読み終わって、結果この物語が一番好みのクライマックスの迎え方でした。

優しい心温まる終わり方も好きですが、自分にはMっ気があるのか、最後に「う…… やられた〜…ッ」となりたいです。

収録作の6篇の中では、この作品がまさにそれでした。

ストーリー5:ボーイズラブ

『美術手帖』2014年12月号に掲載。

あの『美術手帖』12月号がBL特集を組んだということで、資料として目を通しました。(BLを勉強し始めたのは2023年なので、最近読んだばかりですが……)

表紙は明日美子先生が担当していて、何人かの先生方による描き下ろしイラストなども収録されている貴重な特集号。紙質にもちょっとこだわりがあって素敵な1冊ですので、興味のある方はぜひ紙本をオススメします。(中古で入手できるはず。)

そこに掲載されていた物語です。

BLとはなんぞや、が表現されたのだと思います。

今となっては、BLというジャンルは宇宙のような大きな括りのジャンルになったかと思いますが、一応最低限のルール!?として、LOVEがあるのかな、と思います。

何度も読んがお話ですが、単行本にまとめてくださって、うれしいです。

ストーリー6:温室の果実

雑誌『コミックJUNE』2007年10月号に掲載。

この作品は『ダブルミンツ』にも収録されているものです。

表紙はカラーにしてくれています。

タイトルからは以前読んだ作品だとピンと来ませんでしたが、読み始めてハッと思い出しました。この物語は結構好きだったんです。あわててダブルミンツも読み直してしまった……。

老人政治家に仕える秘書の村上。先生は村上の「行為」を見るのが好きで、村上はデリヘルの男を先生の家に呼んでは、「行為」を見てもらうプレイを続けていた。

「惡い男」というテーマで汲み取ると、誰が悪いのか。

村上か、それともデリヘルの男か……。

心に秘めた想いがありつつも、デリヘルの男との関係に逡巡していく村上。

デリヘル男は、その行為に意味など求めない。

そこにあるのはエロティシズム。

明日美子先生の作品は、今でもゆっくりと読んでいますが、先生が描かれるエロティシズムをより深く理解したいです。

ストーリー7:惡い男

描き下ろしのショートです。

中村明日美子先生『惡い男』をもっと楽しむ方法:特典とおまけ

アニメイト限定特典 小冊子

アニメイトで紙本を購入すると、8P特典小冊子とメッセージペーパーがついてきました。

電子版描き下ろし

紙本の描き下ろし『惡い男』の他に、電子版には『惡い男たち』、そして『ヘンタイ』のネームが収録されています。明日美子先生のネームを拝見することはほとんどないため、ファンの方には貴重なのではないでしょうか。要チェックですよ〜。

中村明日美子先生『惡い男』を今すぐ読む方法

中村明日美子先生『惡い男』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

2024年現在、電子書籍の配信は限られたサイトのみ。オススメは「コミックシーモア」さんです。

紙本にも収録されていた描き下ろしの『惡い男』はもちろんのこと、電子書籍用の描き下ろし『惡い男たち』、そして滅多に見られない『ヘンタイ』のネームが収録されています。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。

Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。

2024年現在、『惡い男』はレンタさんにはないようです。

コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!

紙本でお探しの方は、楽天ブックスがオススメです。
送料無料で、配送も(今のところ)ダメージなどなくきれいな状態で到着します。

まとめ

今回は、中村明日美子先生の短編集『惡い男』をご紹介しました。

いくつかは、読んだことのある物語でしたが、コミックスとしてまとめていただけたことで、蔵書としてしっかり本棚に収めておきたいアイテムです。

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