こんにちは。
今日は、もともとはレディース雑誌に掲載された作品だったものの、BL界隈でも話題になった、水城せとな先生の『窮鼠はチーズの夢を見る』をご紹介します。
2020年に映画化されたようで、それに伴い何かと話題になったようですが、私は映画化の話題や当時話題になった事情も知りません。申し訳ない……。ただただ、水城先生が描くボーイズラブを読んでみたかったです。
作品データ
窮鼠はチーズの夢を見る
水城せとな / Setona Mizushiro
刊行年月:2009年5月13日
出版社:小学館(フラワーコミックス)
どんな作品?
少女漫画を中心に描かれている水城せとな先生の作品です。
ステレオタイプの漫画ではなく、エッジの効いた、メッセージ性のある作品を描かれる先生ですが、そんな水城先生が描いた男性同士の恋愛模様。
掲載はレディース雑誌でしたが、BL業界でも話題になったようです。
全2巻。
1巻には雑誌『NIGHTLY Judy』2004年6月号増刊〜2005年10月号増刊まで不定期で掲載された4話、そして2つの描き下ろしが収録。
2巻には、雑誌『Judy』2006年10月特大号付録、そして『モバフラ』2007年12月〜2009年4月まで配信された3話と1つの描き下ろしが収録されています。
恭一は既婚の会社員。ある日、大学の後輩である今ヶ瀬(いまがせ)と再会したことから、二人の奇妙な関係がスタートします。
学生時代に恭一に想いを寄せていた今ヶ瀬、そして既婚であるのに今ヶ瀬と関係を持ってしまい、妻との関係が崩れていくも、ノンケである恭一は、今ヶ瀬との関係を処理できない。
そして二人の間で揺れ動く心理描写。
恋愛感情を奥深く掘り下げて描いた良作です。
この作品を読むと、少年・青年漫画、少女・女性漫画、そしてBLそれぞれの見せどころや描き方は全然違うものだなと実感します。同じ漫画でも、描写の仕方で全然違う面白さが出てくることを実感させてくれる作品に感じました。
レディースコミック『Judy』誌に掲載されたエピソードたち。
2004年から不定期連載されたものですが、今まで描いたことのない世界、またそれまでとは違った読者層に向けて試行錯誤しながら描かれたようで、そんな様子が水城先生のあとがきに記されています。
コミックスのエディションについて
コミックスは数種類のエディションが存在します。
私が読んだのは、2009年リリースの新書サイズ・オリジナル版。描写が昨今のものよりもかなりオープンに描写されており、セリフも今のコンプライアンスにそぐわない点があるためか、2020年あたりに改訂版がリリースされています。
(水城せとな先生のブログに、詳しい説明や経緯が記されています。)
水城せとな先生『窮鼠はチーズの夢を見る』シリーズを読む順番
水城せとな先生『窮鼠はチーズの夢を見る』シリーズは全2巻になります。
読む順番は以下の通りです。
- 窮鼠(きゅうそ)はチーズの夢を見る
- 俎上(そじょう)の鯉は二度跳ねる
上記2冊がコンパクトに1冊にまとまった(しかもB6版!)All-In-Oneエディションもありまして、それもオススメです。
今回は、1巻となる『窮鼠はチーズの夢を見る』をご紹介します。
カップリング
恭一(既婚の会社員。推しに弱く、流されて生きてきた)
今ヶ瀬(いまがせ:恭一に長く想いを寄せてきたが、自分に自信が持てない)
あらすじ
既婚の会社員・恭一は、ある日、大学の後輩・今ヶ瀬(いまがせ)と再会する。恭一の妻が、浮気を疑い、浮気調査をしている今ヶ瀬に依頼したらしい。
浮気がバレた恭一を前に、内密にするかわりにと体の関係を迫る今ヶ瀬。
押しに弱い恭一は、今ヶ瀬との奇妙な関係を持ってしまう。自分から欲する恋愛をしたことがなかった恭一の心が少しずつ動くものの、彼の前には常に魅力的な女性が現れーーー。
水城せとな先生『窮鼠はチーズの夢を見る』:ネタバレ!?感想・レビュー
水城せとな先生の作品は3作ほど少女漫画を拝読しました。
いずれの作品もアイディアが個性的で面白かったのと、セリフに散りばめられた先生の強いメッセージが特徴的でした。
また、恋愛に関しても熟思されている方です。そんな先生の個性は、この作品でも表れていました。
作品の魅力1:心に刺さるセリフたち
水城せとな先生の作品の魅力は、なんと言ってもセリフです。
この作品に限らず、先生の読者はほとんどが女性だと思いますが、そんな女性たちを勇気づけ、奮い立たせ、千思万考させるような強い台詞が特徴的です。
この作品でも、恭一と今ヶ瀬おのおのが恋愛について語ります。
人が唐突にモラルを振り翳す時って 大抵己の欲を隠すためですよね
今ヶ瀬は恭一の大学時代の後輩で、その時から恭一に想いを寄せていた。
学生時代の回想のシーンが時折登場するのだけど、言葉で淡々と説明するような見せ方はあまりありません。フォーカスはいつも今その時の心理描写です。
絵のみの描写テクニックは、あまり使いません。
水城先生は、常に言いたいことがあるようで、それを漫画のキャラを通して表現しています。
よく言えば強いメッセージ性がありますし、悪く言えば、作品を読んでいるのに、水城先生の姿がセリフを読むたびに脳裏に浮かぶという…… w
水城先生の作品から見ても思いますが、このお話が描かれた2004年あたりの恋愛事情は、まだ熱量があったんだと思います。2024年の熱量とは違ったタイプですね。
日本における(いや世界?)「恋愛」の熱量が明らかに違います。恋愛観、結婚観、その他の世界情勢や毎日の生活が変わり、価値も変わり……。
この作品から感じられる熱量は、恋愛に対するそれもそうですが、この作品を受け入れた読者層や日本社会にも、熱量や勢いがあったのではないかなと思います。
また水城先生のパッションも伝わってきます。この作品を描かれた頃の先生はアラサーだったと思われますが、ご自身の友人や周りの社会の流れを観察しながら描かれたのでは?と。
日本の移り変わりも少しながら楽しめるかと思います。
作品の魅力2:流され侍・恭一の踠き
これも水城先生のセリフの魅力なのですが、とあるシーンで今ヶ瀬が恭一のことを「流され侍」と表現しています。w
恭一は、昔から自発的な恋愛はせず、好意を寄せてくれる相手を受け入れるだけの恋愛をしてきた。浮気に関してもそうで、推しに弱い性格。
今ヶ瀬はそれを理解した上で、責めながらも自分もその恭一の性格につけ込んでいく。
この作品のメインキャラ、恭一と今ヶ瀬。どちらにも何かしらの問題があります。
恭一は流され侍 w だし、今ヶ瀬もまったく自分に自信が持てない。
今ヶ瀬の恭一に対する想いは誰にも負けないと自負し、読者もそれに共感するのだけど、いざ関係が近づいていくと、ノンケの恭一がいつ自分の目の前から消えていくのかと、今度は強い恐怖感に怯えます。
日々移りゆく感情の中で、二人をつなぎとめるものは何なのかーーー。
作品の中でゆっくりと恭一の心情が変化していくのも見どころの一つです。
オリジナル版と修正版について
2020年、描写方法やセリフの一部が現在のコンプライアンス問題や時代背景に合わせた内容に修正されました(修正版・改訂版)。
それに伴い、どうやら一部の読者の間で、修正の内容や発表の仕方などが少し話題になったようですね。そして、水城先生自らが改訂に関するコメントを発表しています。
私が読んだのはオリジナル版で、個人的にはどちらでも影響はないと思っておりますが、先生ご自身の考えや当時の描写に関するコメントが非常に興味深かったです。
これに関しては、別の機会にご紹介します。
水城せとな先生『窮鼠はチーズの夢を見る』を今すぐ読む方法
水城せとな先生『窮鼠はチーズの夢を見る』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。
All-In-Oneエディションは、2冊が1冊にまとまった便利なエディションです。
コミックシーモアの月額コミック読み放題が一番お得!BLも読み放題!
まとめ
今回は、水城せとな先生の『窮鼠はチーズの夢を見る』をご紹介しました。BL雑誌ではなくレディース雑誌に連載された作品でしたが、BL界隈でも受け入れられ、話題になった作品です。BLを歴史的に見ても、読んでおきたい作品だなと思いました。オリジナル版を読むと、当時の時代背景も垣間見ることができるかなと思います。
水城先生の作品は、少女漫画も面白く、大好きです。これからも先生の作品を楽しみにしています。
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