こんにちは。
今日は、木原音瀬(このはらなりせ)先生の『無罪世界』をご紹介します。
見たことのないBL小説の世界を楽しませてくれる木原先生ですが、今回は、詐欺師とジャングルで育った従兄弟の不思議な関係のお話です。BLは、奥が深い……
作品データ
無罪世界
木原音瀬
Narise Konohara
イラスト:よしながふみ
刊行年月:2007年09月20日
出版社:リブレ(ビーボーイノベルズ)
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どんな作品?
木原音瀬(このはらなりせ)先生の書き下ろしノベルズ。
作家読みする自分は、気に入った先生ができたら、あまりあらすじを確認せずに作品を手当たり次第読み始める癖があるのですが、木原先生の作品もその一つです。
よしながふみ先生のこの表紙絵、無罪とあったので、てっきり弁護士のお話かな?なんて思ってたら、全然違った……www
主人公の山村は、詐欺のような仕事をしながらギャンブルで作った借金を返しつつ日暮らしをしていた。そんな彼のもとに、ある弁護士から連絡があり、会ったことのない従兄弟の世話をする条件で遺産を相続することになります。その従兄弟というのが、ブラジルのジャングルで育ったという特異なもの。
日本語を全く話せないのに宏国という名のこの従兄弟が、かなり笑わせくれます。作風から、木原先生はコメディではなく真面目に書かれたんだと思いますが、意外と可愛らしい描写や奇行が多く、結構くすっと笑ってしまいます。
設定が少し特殊なので、木原先生の作品を初めて読む方にはオススメはできない。でも、先生の作品をいくつか読まれて、なんでもありの先生だな、というのを知っている方でまだ読まれていないのであれば、一読してもいいかと思います。
BLとしてよりも、シンプルに、物語が面白かった。
この設定をどうBLに持っていくかにも興味がありますし、それ以上にジャングル育ちの宏国の描写がどれも興味深かったです。
木原先生の物語は、フィクションではあるのだけど、いつも描写やセリフが私の脳裏にひっかかる部分が多く、読後も余韻が残り、考察したくなる。
決して一読しただけでは終わらない。
BL萌えがあるかといえば疑問ですが、間違いなく自分にとっては考えさせられる作品になりました。
カップリング
攻め:山村(詐欺のような仕事をし、周りの人間には興味があまりなかったが……)
受け:宏国(ブラジルのジャングルに住むインディオに誘拐されて育てられた。日本語も話せず、感情や行動パターンも特異。)
あらすじ
山村は、恵まれない家庭に育ち、生活のためにいろんな仕事をしながら今の詐欺のような仕事に落ち着いていた。仕事の成績は悪くないものの、ギャンブル好きで、借金の返済に追われていた。
そんな彼のもとに、ある弁護士から連絡が来た。どうやら疎遠の父方の伯父に不幸があり、遺産がもらえるというのだ。だが条件に、伯父の子供(山村の従兄弟)の面倒をみてほしいと言われる。
従兄弟である宏国は、ブラジルのジャングルに住むインディオに幼い頃さらわれ、そこで育てられた。そのため日本語は話せず、行動も日本の常識からは考えられないようなもの。
そんな宏国と一緒に住むようになり、それまでの山村の生活が少しずつ変わっていったーーー。
木原音瀬『無罪世界』のネタバレ!?感想・レビュー
非常に興味深い内容でした。
というのも、この物語を読んで、ある1冊の本を思い出しました。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』という本です。
BLじゃありません。真面目な歴史書(ビジネス書)です w
アメリカ版は2017年、日本語版は2018年にリリースされた、世界的ベストセラー。
この本の中で、人間の感情(心)と意識の関係について書かれているんです。
さらには人間の進化の過程のおいて、なぜ人間は動物よりも優位なのかという小難しい話が書かれている良本なのですが、以前読んだこの本の中で気になっていたいくつかのキーワードが、この『無罪世界』を読んでいた際に脳裏に浮かびました。
アミニズム

作中、山村は宏国を動物園に連れて行きます。そしてそこで、宏国はジャガーと「会話」をする。時折登場する蝶や蛍などの虫や動物と宏国との不思議な描写は、アミニズムを彷彿させる描写となっています。
まぁ、木原先生はそれを意図したとは思いませんが……。
多くの先住民たちにはアミニズムのような世界観がありますが、宏国からもそれに近い世界観が読み取れます。空の様子や(おそらく)匂いから雨が降ることを感知したりと、フィクションながらもさりげない細かな描写にも興味をそそられます。
ちなみに、ハラリ氏の『ホモ・デウス』では、皮肉にもこのようなアミニズムの世界観も、次第に家畜となる動物たちは感情のない機械的なものとして扱われるようになると書かれています。
宏国は、山村と近所の祭りにいきますが、そこで蛍を買います。その後アパートに帰った二人ですが、暗闇で足を怪我した山村のために、買ってきた蛍をプチプチとつぶし、そこから明かりを取る宏国。
宏国には感情がないのに、物語の初めは非人道的に描かれていた山村の方が「蛍を殺すなんて残酷だ」と感情をあらわにしている対比が、宏国の特殊な背景を強調すると共に、宏国と出会って山村が人間化していく過程が面白く表現されているなと思いました。
言語と感情

本で読んだんだけど、文字のない種族は、そうでない種族に比べて情緒的なものに乏しくなるとあったよ
引用 262ページ
言語と感情の関係性については、詳しくはありませんが、昔から調べてみたいトピックの一つでした。この1文がとても気になり、ぜひ調べてみたいと思いました。
山村の人間性

宏国との対比として、山村の人間性の変化が面白かった。
山村は、安い浄水器を10倍の値段で女性に売りつけるような詐欺のような仕事をしているやつです。部屋も散らかっている。が、宏国と出会うことで、ある意味人間らしさを取り戻していきます。
冒頭、言葉も通じず、食事も手でガツガツ食べ、シャワーも浴びないような宏国を利用しようとします。遺産を受け取るために宏国の世話をするとはいったものの、あまりに生活スタイルも違い、言葉が通じない宏国に手を焼いていました。
そんな時、ヤブ医者の落合と知り合います。
落合は、物語らしく(笑)以前ブラジルに住んでいたことがあるという設定で、宏国に少しずつ言葉を教えていきます。
医者嫌いな宏国もほぼ閉店状態の落合のクリニックに通うようになり、そんな宏国を迎えに行くため、山村も落合の家に足を運びます。
そこで落合と食事をし、会話を交わす。何気ない描写ではあるのだけど、山村も人との交流が増えていきます。
落合から宏国は呼吸器系の疾患に弱いかもしれないと聞き、山村は自分の部屋を片し、たまに窓を開けて換気します w
隣の部屋に住むオバサンとも、宏国がオバサンに色目を使ったことで!?交流が生まれます。
たまに煮物をくれたり、宏国が具合が悪くなったときに助けてくれたり、さらには祭りに出かけた山村は、土産にりんご飴を買うなど、山村は気遣いさえできるように成長していきます。
そして、愛情。
山村が宏国に感じる不思議な感情。そこには情欲を伴う愛情ではあるのだけど、それだけではなく、自分から離れないでずっと一緒にいて欲しいという、学生時代に自分を捨てて出ていった母親に感じていた情とも重なっているような気がします。
文字では「好き」で表現されているのだけど、それでは収まりきらない山村特有の愛情が感じられます。
この物語は、ジャングルで育った宏国が人間らしくなっていくお話ではなく、実は山村が人間に戻るお話、でした。
この作品のあとがきは、少し短めの1ページ。物語が長編のわりにはあっさりしたものです。
木原先生ご自身はこの物語をどう思っているかはわかりませんが、この作品、意外といろいろ考えさせられる作品でした。まさかハラリ氏の著書を思い出すとは、思ってもいませんでしたよ。w
木原音瀬先生『無罪世界』を今すぐ読む方法
木原音瀬先生『無罪世界』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
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木原音瀬先生『無罪世界』をもっと楽しむ方法
木原音瀬先生『無罪世界』のその後のお話が、同人誌『Granite』に収録されています。
宏国目線で描かれています。テレビもないところで、ひっそりと暮らしている二人の様子。相変わらずの感情の薄い宏国が滑稽でした。
同人誌には、Unit Vanilla名義のため、和泉桂、岩本薫、ひちわゆか先生らのお話も収録されています。
同人誌は、駿河屋、まんだらけなどのお店か、メルカリなどのフリマサイトで探すことができます。

まとめ
今回は、木原音瀬先生の『無罪世界 Innocent World』をご紹介しました。
もう、私は木原先生のファンになりました。
どんなに痛々しい作品でも、おふざけのようなコメディでも、この先生が描くキャラの人間性は、(たとえ矛盾があっても)魅力的です。
どちらかといえば欠陥のある人間性の内に見る恋愛事情に萌えますね。
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