こんにちは。
今日は、山中ヒコ先生の『500年の営み』をご紹介します。
1巻完結で、かなり考察が必要な作品です。
作品データ
500年の営み
山中ヒコ
刊行年月:2012年08月05日
出版社:祥伝社(onBLUE comics)
どんな作品?
山中ヒコ先生のonBLUEからのコミックス。未来SF。
舞台は2010年からスタートします。
寅と光はお互い惹かれ合いながらも、両親のお家競争に巻き込まれ、子供の頃から二人(特に寅)は競争させられていました。裕福な家庭に育った寅でしたが、勉学では光に勝つことができず、父親から怒られてばかり。
両親からのプレッシャーでライバル視していた光に想いを寄せる寅でしたが、ある事故で光が他界。そして愛する光を失った寅も自ら命を断とうとします。
しかし、なぜか目が覚めた寅は、なんと250年後で、そこには光に似たアンドロドが存在して……というお話。
かっこいい表紙のイラストからはあまりSF感がありませんでしたが、作品を読み進めていくと、スターウォーズのような世界観がちらほらと漂ってきて、面白かったです。(宇宙観はありません。)
雑誌『onBLUE』vol. 1 (2010年12月10日)〜 vol. 5 (2012年4月25日)に掲載された5話に、描き下ろしが収録された1冊です。
カップリング
太田光(海の網元・太田家の息子。勉学やスポーツは堪能では、寅に勝る。)
ヒカルB(太田光のアンドロイド。起動されると、所有者の生涯パートナーとなる)
山田寅雄(山の名主・山田家の息子。お金持ちだが光に能力が劣り、父親からのプレッシャーに悩まされていた)
あらすじ
太田家と山田家は昔から険悪の仲だった。山田家の山田寅雄は、太田家の息子・光には劣るなと父親からプレッシャーを受け、勉学やスポーツを頑張るも、どうしても光に勝つことはなかった。そして、寅は光が想いを寄せていた。
大学生になって二人は再会。その時、互いの気持ちが同じだと気づいたものの、光は事故にあい、他界してしまう。そして、そんな光を追い、寅も自らの命を断とうとした。
死んだはずの寅は、250年後に目が覚める。長い長い眠りから覚めた寅の目の前には、死んだはずの光の姿が。光を模した「アンドロイド」だという。しかし、彼は光に似ても似つかずでーーー。
山中ヒコ先生『500年の営み』:ネタバレ!?感想・レビュー

なぜ、この作品を手に取ったか。
それは、名前からです。
この作品を目にしたとき、タイトルからSF系というのはわかりましたが、SFのBL作品とはどんなものか、そして500年とはどこから来ているのかがとても気になったからです。
タイトル、表紙のシンプルながらも哀愁漂うイラスト、そして1巻完結という私の好奇心をそそられる1冊に、手を伸ばしました。
ストーリー

物語は寅の視点で描かれています。
お話は淡々とコメディチックに進んでいくのですが、キャラの背景には過去のトラウマや愛情などがしっかりと描かれています。
お家の関係で、子供の頃から父親から寅へのプレッシャーがとても強かった。勉強、スポーツ……、太田家の息子である光に勝たねばならない。しかし、光は文武両道で、性格もいいことから、何から何まで寅よりも優っている(と、寅の目には映っている)。
寅には、光への嫉妬、あこがれや恋心、父親への嫌悪感、そして自分への劣等感があります。そしてその気持ちは250年続きます。(その間、寅は眠っているわけですが……。)
結構な未来設定のため、地域の様子や生活の変化に、山中先生の未来への理想像のようなものが反映されているのも面白いです。
さて、250年後の世界にに登場したのが、死んだはずの光のアンドロイド。
似ているようで、性格や細かな動作が微妙に違う。
大好きだった光の代わりなのに、完全ではないアンドロイドの光に、苛立ちと特別な感情を抱き始めます。
そして、ゆっくりとアンドロイドであるはずの光に気持ちを奪われていく。
ある日、目を覚ますと、光がいなくなっていました。
どこか不完全に感じていた光のアンドロイドは、実は正規アンドロイドのプロトタイプだったことを知ります。
物語はそこからさらに二転三転しますが、寅は、なんだかんだでタイトルにもある500年生きることになり、光、そしてプロトタイプ・光へと恋心が続いていきます。寅は光の残像を追い求め、プロトタイプの光はゆっくりと感情のようなものを学んでいくお話です。
物語は面白いですが、正直、難解です。
表面上のお話は理解しているつもりですが、その背景にあるヒコ先生の主張やコンセプト、メッセージを読み取り切れている自信がありません……。
絵柄も可愛らしく、コンセプトも面白くて、普通に楽しく読めるのですが、「本当の意味を理解をできていない」という悔しい気持ちが自分の中に残ります。
それは、本の良し悪しではなく、読者としての自分の技量が足りないということ。
もっと深いレベルでお話を理解したいのに、まだ見えてこない……。悔しいです。
未来像

未来のお話ということで、ヒコ先生が考える未来像が描かれております。
フィクションではありますが、人の未来像を覗くのは結構楽しいものがあります。
国という概念
まず、「国」という概念がなくなり、地球には3つの「連邦」が存在する。ニホンはそのうちの1つの「州」にあたります。
バーチャルな世界ではボーダーレス化はかなり進んでいると感じているこの頃ですが、物理的にもボーダーレスになった、という設定です。
私たちが培ってきた文化、宗教的哲学、信念のようなものは、この頃はどうなっているのだろう。
すべて西洋化、はたまたエリートたちが作り上げた概念の上になりたっているのでしょうか。ここに登場している3大連邦の構成国も気になります。
戦争と核
ヒコ先生が考えられる歴史の中に、やはり戦争や核の問題も記載されています。
世の中が「便利になった」はずの今でさえ、争い事が絶えず、日々一般人が被害にあっているというこの世の中において、核の問題もまったく解決されていませんね。この国の概念がなくなったという設定の背景にも、戦争が描かれています。
この物語の中には、AIの概念はありません。そのせいもあってか、戦争というコンセプトが物理的なものを指していて、すでに日々行われている情報戦争などについては、盛り込まれておりません。
今ヒコ先生がこの物語のような未来像を描かれるとしたら、どんなものを描かれるか、興味がありますね。
500年の営み

物語の中で、寅は250年後、さらにそこから250年後に目を覚ます設定です。
トータルで500年、ただただ光の残像を想い、人間になりたがるアンドロイドを追いかけて生き続けます。
その長い過程で、寅の想いは、人間の光から、プロトタイプの光へと移っていきます。プロトタイプの光へ愛着が湧き、正規のアンドロイドが目の前に現れても、心を動かされることはなかった。
愛情は、移り変わるものであり、苦境も乗り越えられるパワーをくれる。
人間の寅は「好き」という気持ちを持ち続け、アンドロイドのヒカルBは「好き」という気持ちを知っていく。
ヒカルBは、自分にできることをして寅を守ろうとしますが、そこに感情はありません。しかし、正規アンドロイドのプロトタイプという設定のヒカルBは欠陥品でもあり、「人間になりたい」という欲求があります。
ヒカルBこそ現代人のメタフォー?
本来あるはずの感情が感じられず、忘れてさえしまった現代人。
そして、それでも「愛したい」「愛されたい」という気持ちが残っていて、愛情を追い求める。そんな現代人の気持ちが反映されているようにも感じます。
作中、何気なく子供の手を握った寅。
子供は「手を握られた」と興奮して母親に伝えます。
「触れる」行為さえしなくなった私たちの生活から、愛がなくなり、争い事も増え、孤独感に悩まされる現代は、2011年から10年以上たった今も、悪化しています。
愛

愛がきっかけであり、愛が全て。
この作品から読みとった、一つの結論です。
個人が「愛情」を感じなくなったら、人は破壊し、社会は崩壊していく。
例えば、この1冊の漫画に感じる愛情でもいいと思います。
「好き」という気持ちは、活力となり、人を動かす。
この活力さえなくなり、動かなくなると、人間の精神が死に、物理的にも死を招く。
だから、「推し活」も悪くない w ペットを買うのも悪くない。
何か自分の好きなものに執着し、それを愛で、その時を楽しむ。
ささやかな楽しみさえなくなってしまえば、自分も崩壊するし、争い事のように他人を崩壊させてしまうかもしれませんね。
この作品を初めて読んだ時、SFということもあってか、あまり感じるものがありませんでした。
が、2度3度とヒコ先生のメッセージを汲み取ろうと読み込んでいくと、自分なりの考察が出来上がってきました。
もちろんこれは、先生のメッセージではないと思う。でも、本を読むことで、様々な思考が展開されること自体が、楽しく、刺激的な作品でした。
山中ヒコ先生『500年の営み』を今すぐ読む方法
山中ヒコ先生『500年の営み』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
ebook Japan:クーポンが魅力です。無料漫画も多々あり。
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まとめ
今回は、山中ヒコ先生の『500年の営み』をご紹介しました。個人的な感想です。読み手によっていろんな見え方のある作品だと思います。ぜひ皆さんの感想や思っていること、知りたいです。
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