青井秋先生『百草の裏庭』:自然と生物のつながりとフィリア

青井秋
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こんにちは。

今日は、青井秋先生の『百草の裏庭』をご紹介します。

相変わらずの素晴らしい表紙イラストに惹かれて、手に取りました。

作品データ

百草の裏庭

青井秋 Aki Aoi

刊行年月:2020年12月15日

出版社:プランタン出版(Canna Comics)

どんな作品?

青井秋先生の2020年リリースのコミックス。タイトル作の他にもいくつか短編が収録されています。

私の初めての青井先生作品でまります。

漫画家としてというより、イラストレーター(デザイナー)としてのお仕事からスタートされた方でしょうか。この作品を拝読してもわかりましたが、モチーフの作り込み、使い方、そして漫画の作中での表現方法なども個性があります。

お話は、まるで絵本を読んでいるような感覚になり、独特の世界観を持った先生です。

Cannaからリリースされていることもあり、一応カテゴリーはBLになるのですが、おそらく一般作品として読んだ方がいいかと思います。主人公は男性同士ですが、いわゆる友愛(フィリア)のようなものが仄かに表現されています。

イラストの色合いや細かさ、モチーフの描き方がイラストレーターのそれあり、作中にも細かな描写が描かれています。

絵がとてもきれいで、その世界観をセリフでも表現しています。

ただ、絵本のようなお話のため、読者を選ぶと思います。

がっつりBLではありませんし、物語もとても静かで、わずかな心の変化をなぞる程度に描かれています。そのため、はっきりとした感情の起伏がありません。淡々と物語が進んでいきます。

起承転結のはっきりしない作品も私は好きですが、そこは賛否両論分かれそうなところです。ぜひ一度、青井先生の作品を手にとって見てはいかがでしょうか。

青井秋先生『百草の裏庭』ネタバレ!?感想・レビュー

5つのお話が収録されています。

この作品を初めて手に取り、青井先生の他の作品も数冊拝読しました。個人的にはとても好きな先生です。

1冊を読み終わって、感想は「独特な空気感」が漂っているということ。

この空気感を堪能するのが、私の青井先生の楽しみ方です。

ただ、物語はやはり読者を選ぶな、と思いました。

日常を切り取った作品は好きですが、少しでもオチがあると、読後に自分の気持ちがすっきりするんです。でも、いくつかの収録作にはオチがない!w 「これで終わって……いいのだろうか……」とちょっと不安になります。w

間違いなく個性のある先生ですし、イラストレーションが好きな私としては、いずれはどの作品にも目を通したいなと思っています。

この先生の作品は、人のレビューなどはご参考程度に、まずはご自分で読まれてみることをオススメします。

ストーリー1:百草の裏庭

BL雑誌『Canna』vol. 47, 49, 50, 72, 73 74に掲載された全部で5話のエピソード、そして番外編になります。1、2話、番外編までは2016年、3、4、5話は2020年に連載を再開されたようで、コミックのリリースが今になったようです。

でも、BLですから読者は生きている限りはいつまでも待つかと思います。w

薬草を探し求めて、うっかりと森に入り込んでしまったマルセルベルタ。ベルタが毒にやられ、具合が悪くなってしまう。そこに現れたのが、異形の男、ギーゼルベルトだった。

出会うと魂をとられてしまうと皆に噂されていたギーゼルベルトだったが、条件つきでベルタを助けてくれた。

「ベルタが嫁いだら、俺のところに来い」

10年後、ベルタは結婚し、マルセルは命を預けにギーゼルベルトの元へやってきた。しかし、ギーゼルベルトは友達がほしかっただけで、それからギーゼルベルトとマルセルとの生活が始まります。

第1話はボリュームがありますが、その後のエピソードはショートだったりと、お話おページ数は比較的自由に描かれています。

作品の魅力は、なんといってもイラストです。

植物のモチーフが作中でも綺麗に描かれており、食べ物の描写まで細かく描かれています。イラストレーションが好きな方にはぜひ読んでほしい。

お話の方は、個々のエピソードもきれいに纏まっています。セリフは小説のようなモノローグも交ざっていますが、メッセージ性もあって楽しめました。

が、1つの作品として読むと、ラストがあまりにも単調でもったいないです。おしゃれ作品でももう少しきれいに閉めてくれると思います。

一応お話は5話まで続いているのですが、短編の要素が強く感じられ、それだったらいっそ1冊このお話にしてくれたら、より世界観が生きてきたと思います。

ギーゼルベルトが非人間のため、やはり他の収録作とは世界観が違っており、1冊最後まで読むと、今まで描かれた作品の寄せ集めのように感じてしまいました。

植物のモチーフでまとめたのかもしれませんが、個人的には百草の裏庭の非日常の世界観でまとめてほしかったです。

ストーリー2:stalks

『Canna』vol. 71(2020年4月)に掲載された16ページの短編。

素敵な短編です。
でももう、メインは植物ですね。w

温室での会話で成り立つこの短編は、仄かに恋をテーマに描かれた作品です。

百草の〜もそうでしたが、この1冊では愛情が描かれていますが、友愛(ギリシャ哲学でいうところのフィリア)のようなもので、アガペーとも違うそれがあります。だからか、どのエピソードも優しく、癒される気持ちになります。

また、この作品は程よいオチがあるので(これくらいで十分です w)、読後にしっかりと気持ちが落ち着きます。

ストーリー3:passage

『Canna』vol. 40(2015年2月)掲載。

この1冊の中で、一番腑に落ちなかった作品です。ごめんなさい。

まず、世界観がほかのものに比べて違いました。

他の作品が異国の雰囲気がするのに、この作品だけ急に日本が舞台になっており、リアリティがあります。それまであった独特の世界観から一気に目が覚めてしまいました。

日常を切り取るような作品は、きらいではない。むしろ好きな方ですが、そんな切り取りの中でも、わずかなオチをラストに期待してしまうんです。でも、それも、なかった。

セリフから、ピアノの綺麗な音という描写はありましたが、やはり音を表現するのは難しく、またストレスフルな生活に垣間見られる「きれいなもの」は、セリフからしか感じなかった。

この作品こそ、モノローグなどでもっと表現されてもよかったのでは?と思いました。

ストーリー4:侵食

『Canna』vol. 38(2014年10月)掲載の12ページの短編。

12ページなのに短さを感じないのは、1ページに描き込まれたモノローグや詳細なイラストレーションの情報量の多さゆえでしょう。

この作品は友愛よりも、アガペーもしくは(かなり間接的ですが)エロスに近いものが表現されているのではないでしょうか。

愛情は一方通行なのか、そして二人を繋ぐのは菌なのか。作中に鎖が描写されていますが、うっすらと描写されており、それは繋がりを記しているのか、または関係性の脆さを表現されているのか……。

ショートなのに、いろいろと考察してしまう作品です。

セリフは詩的ですが、哲学を感じます。

ストーリー5:旅の途中(前後編)

『Canna』vol. 43(2015年8月)、vol. 44(2015年10月)掲載の物語。

これが一番メッセージ色が強く感じ、BLらしい作品でもあります。

カスペルは、黒髪を理由に周りの子供たちから呪われているのでは?と言われていた。そんなカスペルに話しかけてきたのがヨーアン。自分は人から嫌われているのに、なぜヨーアンは自分のところにやってきて、大人になった今もずっと一緒にいるのだろう。

そんな二人は、渡り鳥を見に旅に出ます。

そして、その旅の途中で知り合う人々や本屋で見つけた思い出の絵本。
出来事が重なり、カスペルはなぜヨーアンが自分に寄ってくるのかを理解していきます。

このお話の魅力は二つ。装飾と愛です。w

とにかく、作中のイラストレーションが素晴らしい!

後編に登場する絵本のストーリー。この装飾がとてもいいです。自然風景や植物、そして装飾モチーフがきれいに施されており、本の最後はストーリーよりも絵を追いかけている自分がいました。

1冊を通して、この最後のお話が一番BLしていましたが、全体的に二人の人間(生物)のつながりを表現した作品で、BLともヒューマンドラマとも違う、哲学的なつながりを文字とイラストレーションで表現されたもの。大人の絵本とでも言うべきか。

正直、感想を絞り出そうとしましたが、私の乏しいボキャブラリーでは表現できない世界がここにあります。

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「漫画」というより「大人の絵本」のような感覚で、この世界を楽しめば、大満足の1冊になっています。

とても魅力的な先生です。イラストが素晴らしいのは納得なのですが、漫画として読むと、やはり上記感想にも書いた通り、お話には程よいオチが欲しい。

また、せっかくのイラストもレイヤー加工がされているのか、印刷の解像度の問題もあってか、もっと細かなところまでしっかり確認したいです。いっそ、フルカラーの大人向け絵本を作ってほしいです。

青井秋先生『百草の裏庭』を今すぐ読む方法

青井秋先生『百草の裏庭』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

ebook Japan:クーポンが魅力です。無料漫画も多々あり。

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まとめ

今回は青井秋先生の『百草の裏庭』をご紹介しました。

ご紹介というよりも、あらすじと個人的な感想のみになってしまいました。

青井秋先生の作品は、先生の素晴らしい画力で、先生が描きたい、もしくは先生にしか描けない物語を描いているのだな、と感じます。男性同士のお話ですが、BLとカテゴライズするのは難しい作風です。

他の人のレビューなどは気にせず、まずはご自分で作品を手に取って読んでみてほしいです。あなたにとって素晴らしい出会い、インスピレーションになるかもしれません。

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