こんにちは。
今回は、SHOOWA先生の『ニィーニの森』をご紹介します。
エッジのきいた作品を描かれるSHOOWA先生ですが、この作品は絵本もお好きだというSHOOWA先生のらしいキャラたちやお話が楽しめます。
作品データ
ニィーニの森
SHOOWA
刊行年月:2014年02月05日
出版社:祥伝社(onBLUE comics)
どんな作品?
クリエイターのSHOOWA先生の魅力満載の1冊。
表紙デザインからも、一体どんな内容なんだろうとミステリアスな雰囲気漂う1冊です。
この作品、BLではあるんですが、それ以上に奥深いテーマが描かれた挑戦作になっております。SHOOWA先生のクリエイターとしての才能が満喫できた1巻完結ものです。
祥伝社のBL雑誌『on BLUE』vol. 3(2011年8月)、vol. 5(2012年4月)、vol. 8 – vol. 11(2013年1月 – 2013年10月)に掲載されたお話が1冊にまとまっております。
ニィーニの森とその周辺で起こる不思議な生き物たちの生活を描いた作品。
ファンタジーではありますが、生き物の描写はそれほどファンタジーっぽくはないです。動物がお好きなのか、動物のモチーフ(もしくは動物そのもの)のお話もあります。
森の様子や細かなガジェットなど、漫画家というよりもクリエイター的なアイディアやカラーのある作品なので、BLとういより漫画や物づくりが好きな方などは特に楽しめるかと思います。
がっつりしたBLではありませんが、心温まるお話たちです。
SHOOWA先生『ニィーニの森』ネタバレ!?感想レビュー
ニィーニの森を介していくつかのカプのお話が収録されております。
BLというカテゴリーでこのような作品に出会えるとは(良い意味で)思っていなかったので、驚いています。
装丁
装丁のデザインがとても素敵です。
SHOOWA先生の可愛らしいイラストはもちろんですが、読めそうで読めないアルファベットで何やら説明が書いてあります。
クセのあるアルファベットの対応表が裏表紙下にあるので、それと照らし合わせながら文字を読むことができます。こういった遊び心にワクワクしますね。
本を開くと、遊び紙に本のタイトルが。本全体を通して、薄暗い森を表現しているのか、お話の間のページは黒が使われています。細かなイラストやデザインも、可愛らしい。
ファンタジーな洋書を開いたような、あのワクワクする感じが表現された演出に、明らかに今までとは違ったSHOOWA先生の物語へのアプローチが窺えます。
お話は、番外編を含めて4話が収録されております。うち1つは3編で構成された少し長めのお話です。
SHOOWA先生はアナログで描かれていると思いますが、コマの位置などもオリジナリティがあり、あくまでも漫画のルールには沿っているものの、1ページをキャンバスとして、表現されているのも特徴で、読み応えがあります。
物語は、当然第1話から読んでいくわけですが、読み進めるにつれて、少しわかりにくい部分やキャラクターたちが次々に繋がっていきます。最後まで読むと、しっかりと世界観がつながります。
だから、一度読み終わってから、また再度読み直してみると、今まで見えなかった細かな描写も見えてきます。
ニィーニの森
赤肉を食べてはいけない。食べると呪いにかかるよ。
満月の夜は、湖に妖精が現れるよ。
第1話
ニィーニの森。湖の近くで、うさ耳をはやした新入りを見かけたカエルさん。どうやら彼の名前はオメットというらしい。
オメットはニィーニの森と隣の森の境目に住んでいた。ライオンやオオカミがいたそのあたりは、ニィーニの森じゃない。ニィーニの森では赤肉を食べてはいけないので、肉食動物は住んでいないんです。
そんな設定の元、カエルさんとオメットは仲良くなり、ほのかに恋心を抱くカエルさん。
そんなある日、カエルさんはオメットがオーウェンという男の元に足を運ぶのを目撃します。オメットはオーウェンの恋人なのだろうか。恋を諦めかけたカエルさんですが、オメットが毎日湖に足を運んでいたのには理由があったんですーーー。
いつものSHOOWA節はなく、絵本のようなお話の運びではありますが、イラストや仄かなBLテイストは健在。そしてさりげなく登場する色黒の子(表紙にあるネコ耳ちゃんのココ)や生き物の描写も、後につながっていきます。
手描き感のあるイラストや色合いなど個性が溢れており、また物語の導入にもぴったりの1話です。
第2話
1話で登場した色黒のネコ耳・ココとウルフのお話です。シンプルな短話ですが、涙腺にきますね。
SHOOWA先生の絵には海の生き物を含めた動物モチーフをよく見かけますが、創作活動のためなのか、それとももともと自然を観察されている方なのか。
自然のテーマは、タイムレス。人間の営みの問題に必ず関わってくるのが、自然。
この2話も絵本を思わせるような(ところどころ不適切な描写ありw)シンプルなお話ですが、自然の摂理を表現しているのでしょうか。
ただただ、泣けてきます。
番外編:蛹(さなぎ)の脚
描き下ろし。カブトムシのお話 www
一応どちらもオス。
ハンセンとギロ。
そもそも誰が命名したんでしょうか。(SHOOWA先生か。w)
生き物が好きすぎて、ついに動物主人公の漫画を描いたんだなぁ、と読み始めました。w
蛹(さなぎ)の時に知り合ったハンセンとギロ。
脱皮を繰り返し、先に地上へと旅立っていくギロ。ハンセンはギロと「絶対に地上で再会しよう」と誓います。
そんな冒頭で始まるこの物語。てっきり『ファインディング・ニモ』のようにギロを探す旅に出るのかと思ったら、すぐにギロに再会します。😆
そこで光ったのが、SHOOWA先生のこのギロの描写!
ギロはグラントシロカブト。
グラントシロカブトの特徴は、名前の如く、まずは色。湿度にもよりますが、体色が白っぽく変色するのが特徴です。
SHOOWA先生のギロを見てみても、白っぽい配色になっていますね。
そして、次にツノの部分にフサフサの毛があるのも特徴です。
ツノや体の下の部分からちらっと見えるフサフサの毛はちょっぴりセクシー。そんな特徴も、もちろんしっかりと描写されていますね。
そして最後に、つぶらな瞳。
これに関しては、今も考察中なんですが……
ハンセンとギロが再会した時、ハンセンはすぐにギロだと気づくのですが、ギロはハンセンのことに気がつきません。そして、ギロの目が白いんです。
これは、人間界に呑まれてすっかり自我を失ってしまった表現なのだろうか。
ハンセンに襲いかかるギロに、ハンセンは一生懸命話しかけますっ!二人で交わした約束のことをっ!!!
そして、ギロはゆっくりと自我を取り戻していく。
ギロの目はゆっくりと覚醒していき、最後にくっきりと可愛らしい目が描写されている。
これは、グラントシロカブトのつぶらな瞳を強調したかったのか、そこにさらに自我の云々を掛け合わせたものなのか、はたまたさらにはその自我というものが、BL的な意味も含まれているのか……。
何かのメタファとして表現しているようにと汲み取れますが、そんなグラントシロカブトの特徴を気にする私のような読者は、ほとんどいないのかもしれませんね。w
そして、物語が終わるのかと思えば、最後には違うオチがあるのですが、このオチもBL的なものになっているので、やはりギロの目の描写、メタファーとして使われているのではないか、というのが今のところの私の考察です。❤️
第3話(前・中・後編)
1話に登場したオーウェン、そしてうさ耳・タドタのお話。
メッセージ色も強く、読み手によっていろんな考察が可能です。
例えば、BL(アイデンティティ)、人間と自然、はたまた戦争。
戦いのループが永遠に続く。悪いとわかっていても、この先には本当に幸せがあるのか疑問に思っていても、回し続ける負のループ。いつか断ち切ることはできるのだろうか。
このお話の中では、人間とウサギ族の戦いを描いてはいますが、それは今現実に続いている戦争だったり、環境破壊や食の問題だったり、はたまたアイデンティティ、しがらみやいじめなど。そういった、悪いことだ、間違っていることだと誰もがわかっていても、生きていくために見て見ぬふりをし、やめられないと信じている私たちの現状を描いた作品。
でも、生きていくために、やめることはできないと信じ込まれている概念はどこからきたか。
こういった概念は人間が作り出していて、多くの場合はメディアが作り出している。
そもそも私たちは毎日の生活で、何も人に害を与えないような小さな選択さえ放棄していないだろうか。毎日の生活において、どれだけ自分で選択し、前へ進んでいるだろうか。
そんなことを改めて見直すきっかけにもなりました。
3話のお話は、冒頭1話へとつながっており、世界観がループしているのも面白いです。
結局私たちはこのループから抜けられないというのを暗示しているのか!?🧐
この本には、あとがきがありませんでした。
でも、奥付まで目を通すと、やっぱりSHOOWA先生の作品というのが分かります。w
語りたいポイントが多すぎて長くなりましたが、SHOOWA先生の魅力にまたやられてしまった。
SHOOWA先生『ニィーニの森』を今すぐ読む方法
SHOOWA先生『ニィーニの森』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
Renta!レンタ」です。
どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
ebook Japan:クーポンが魅力です。無料漫画も多々あり。
Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品は時々レンタル可能になります。
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まとめ
今回は、SHOOWA先生の『ニィーニの森』(Forest of Niini)をご紹介しました。
ご紹介というよりも、私の感想になってしまいましたが、みどころや考察どころがとにかく盛りだくさんで。
読み手によってもっともっと掘り起こすことのできるポイントがあるかと思います。BLの世界は深いとは聞いていたけど、この作品に出会って実感しました。
みなさんは、どんな視点で読まれましたか?
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