こんにちは。
今回は、木原音瀬先生の『月に笑う』をご紹介しようと思います。
木原先生のファンになったので、あらすじを気にせず読み始めたのですが、まさかの893ものでした。でも自分が楽しんだのは、主人公の二人がまだ若い頃。梨とりこ先生のイラストも素敵でした。
作品データ
月に笑う 上下巻
木原音瀬 Narise Konohara
イラスト:梨とりこ
刊行年月:2009年12月20日
出版社:リブレ出版(ミリオンコミックス HertZ series 038)
どんな作品?
木原音瀬先生の893もの。
2003年2月号に、今はなきBL小説雑誌『小説b-Boy』に掲載されたお話がベースになったシリーズです。その後、たっぷりの書き下ろしを含めて、上下巻で完結しました。
ミステリーのように始まるのもこの物語の魅力の一つです。中学生でいじめられっこの路彦が、ある日チンピラの信二と出会うことから二人の不思議な関係が始まります。
幼い路彦と年上の信二の(ちょっとショタ系?の)BL話かと思ったら、後半は、本格的に893になっていく信二の描写が増えていきます。
路彦も高校、大学生へとしっかり成長していき、弱々しかったキャラも、梨とりこ先生の素敵な挿絵も手伝って、大人へと成長していきます。そして、想像していなかったエンディングがやってきます w
前半は路彦と信二のお話を楽しんでいましたが、後半に登場する惣一というキャラクターが特殊な設定で、作品の雰囲気をがらっと変えました。物語にシリアス度が増していきます。
いつもは物語にのめり込む自分ですが、この作品に関しては、少し冷静にBL路線を追えたかなと思います。路彦の執念ぶりが面白く、また信二の変貌ぶりがなんとも……。悪い人はおらず、あくまでファンタジーの範囲でお話が進む感じです。
木原音瀬先生『月に笑う』を読む順番
木原音瀬先生の『月に笑う』は、スピンオフも出ています。スピンオフには路彦と信二もクロスオーバーで登場するので、以下の順番で読むのが一番いいと思います。
- 月に笑う 上下巻
- 灰の月 上下巻 (惣一を主人公にしてスピンオフ)
今回は、『月に笑う』をご紹介します。
カップリング
路彦:いじめられっ子。不自由のない家庭環境で生まれながらも、信二に惹かれ、執着していく。
信二:成長盛りで自分になついてくる路彦が気になりつつ、なかなか成長できないチンピラ。
あらすじ
深夜の学校である事件を目撃した路彦。その事件に関係があるのか、チンピラである信二は学校のあたりをうろつきはじめ、虐められている路彦と出会う。
友達のいない路彦はチンピラの信二に懐いてくるが、二人の関係は徐々にそれ以上の関係に。
信二はチンピラから抜けきれずにいたが、ある日自分の組が解散してしまう。行き場を失った信二は、組長のススメで他の組に移動することになるのだがーーー。
木原音瀬先生『月に笑う』:ネタバレ!?感想・レビュー
この作品は、梨とりこ先生のイラストも魅力的で、個人的には893ものも(BLでは読んだことがありませんが)好きなので、かなり期待して読み始めました。
全体的には面白かったです。読んでよかったですし、木原先生の作品にしてみたら、痛々しいシーンも少なかったです。
個人的な感想ですが、いくつか上げておこうと思います。
中学生時代の路彦
『月に笑う』のお話は、3部に分かれています。
『月に笑う 1』は、BL小説雑誌『小説b-Boy』2003年2月号に掲載されました。『月に笑う 2』『月に笑う 3』は書き下ろしで、3は下巻に続きます。
時系列的には、1部は路彦が中学生の時のお話、2部は高校生、そして3部は大学生です。
お話の要は3部になるのですが、個人的に好きなのが、二人が出会ったばかりの1部のお話。
BL的にも、お話の流れ的にも、この1部がよくまとまっていたと思います。
物語は、路彦が深夜の学校でたまたま目撃した事件からスタートします。少しミステリアスな冒頭。路彦は中学生ですが、クラスの中では普通の存在でした。ただ、この事件をきっかけに、彼はクラスで虐められていきます。
木原先生のファンの方はよく「痛い」という表現を使われているようですが、確かに木原先生の作品には痛々しいシーンが多いかもしれませんね。でも、物語的には痛みを伴うほどのひどい描写があると、のちに訪れるであろう救いのシーンがかなり引き立つのも事実。w
虐められている時にたまたま知り合ったのが信二。信二は何歳か年上のチンピラです。歳の差もあるし、中学生と893の端くれというちょっと変わったコンビではあるのだけど、友達のいない路彦は信二との出会いに何か特別なものを感じていきます。
信二の方も、懐いてくる路彦を可愛がります。
未成熟な路彦の身体の描写や、茶化しながらもお互いに何らかの好奇心のようなものが生じていく描写が、読んでいて想像力を掻き立てられました。
信二は普通のノンケですが、そんな彼が路彦に感じる情欲をどう脳内で処理しているのか、はっきりとは表現されていません。自分の性的指向に対する葛藤はありません。ただ、事実がそこに記されてます。下巻ではもう少し掘り下げた心情描写はあるのですが、個人的には上巻の方がリアリティを感じました。
路彦の成長と信二の甘さ
路彦が中学生の時に二人は出会い、その後、路彦はぐんぐん成長していきます。
高校生の時は信二の身長を超え、大学生になると知識量も増えてくるので、身体・頭脳ともに信二を超えていきます。
力強さはそれほど感じられず、少しひょろっとしたイメージではあるんですが、それは路彦の昔から変わらぬ話し方から来るのかなと思います。
BLらしく、路彦が執着心が強かったり、どこか中性的な描写が残っていて、最後の最後まで攻めか受けかわからないような描写が続きます。おそらくそれも物語の盛り上げ方なのでしょう。
長編なので、やはり変化が見られるのはうれしいことで、路彦の成長は読んでいて楽しかったです。
一方、信二の方は、残念ながらあまり成長がありませんでした。w
彼の家族背景や893描写は楽しく読みましたが、人間的な成長に焦点を当ててみたら、ほぼ汲み取れなかった。w
やはりチンピラ止まりなんだな……
でも、それはそれでいいんです。みんなが立派な893になれるわけではない。
信二と惣一との関係性は、面白く読んだのですが、信二が頑なに自分の路彦に対する気持ちを受け入れられなかったのが、今ひとつ伝わってこなかった。下巻を何度か読み返しましたが、上巻での信二と路彦の関係性が特別に感じて、下巻は物足りなく感じたのが正直な感想です。
あまり成長はしなかった信二ですが、根っからのワルではない。悪いことをしている人も、こういう子ってリアルで多いのでは?と思ったくらいです。
不安定なリアリティさ
木原先生の小説は、BL小説ではありますが、私は普通の小説として楽しんできました。稀に少し不自然な描写やセリフを感じたことは何度かありましたが、全体の雰囲気を壊すようなそれではなかった。
ただ、893ものに設定してしまったこの物語、残念ながら893描写や死に対する恐怖を感じることはなかったです。
私が信二というキャラクターにのめり込めなかった理由の一つはここにあります。
上巻は良かったのですが、下巻の893内での会話や争い事からくる緊張感、それにまつわる逃亡劇はあまりに簡素に感じてしまいました。
一般人!?の路彦ががっつり巻き込まれますが、路彦の行動も妙にキビキビしすぎているし、チンピラとはいえそれなりに悪いことをしてきたのでは?と思っていた信二のあまりにもひ弱な態度にがっかりした。彼は今まで何を見てきた?確かに、惣一のような頭脳犯からは学べないまでも、以前の組で学んだことはあったのでは?
そして、まともに逃亡もできない信二なのに、拳銃で人を殺そうとする。
銃の撃ち方、本当に知ってますか?
残念ながら、銃の描写、そしてそれ以降の死への恐怖の描写は、リアリティを感じられなかった。そのため、信二のキャラがBLファンタジー化してしまった……。
上巻の繊細な描写や関係性が好きだった自分にとって、下巻はファンタジーになってしまい、少し残念な気持ちが残ります。
全体を通しての感想としては、やはり読んでよかったし、楽しめました。
それにしても、惣一のキャラが際立っています。『灰の月』としてリリースされたスピンオフも早く読みたいです。
木原音瀬先生『月に笑う』を今すぐ読む方法
木原音瀬先生『月に笑う』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
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どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
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まとめ
今回は、木原音瀬先生の『月に笑う』上下巻について、感想をおしゃべりしました。木原先生の作品は短編も好きですが、やはり長編は読み応えがあり、その世界観に浸れるものが多いなと感じています。
この作品に関して言えば、木原作品の特徴でもある痛々しいシーンは少なく、私のような木原初心者にとっても読みやすいかなと思います。
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