こんにちは。
今日は、個性的な空気感が作品に漂う青井秋先生の『百年結晶目録』をご紹介します。
作品データ
百年結晶目録
青井秋
刊行年月:2014.12.10
出版社:プランタン出版(Canna comics)
どんな作品?
青井秋先生の(おそらく)4冊目のコミックになります。
プランタン出版(Canna comics)からで、ジャンルとしてはBLになりますが、この先生のお話はより広い概念でお話が展開するため、BLや「漫画」としてではなく、「世界観」そのものを楽しむ作品です。
お話はファンタジー。学者のベントは、ある日一人の少年に出会います。少年イーリスは、鉱石を食べる砂漠の金剛石と呼ばれた種族の生き残りという設定で、ベントとイーリスが旅をしながら心を交差させていくお話です。
青井先生の特徴ともいうべき、動植物や鉱物のモチーフが至るところにちりばめられており、漫画のストーリーと並行して様々な角度から作品を楽しむことができます。
逆に言えば、イラストなどには特にこだわりがなく、心に響くストーリー、がっつりBLをお探しの方には全くもって違うジャンルの作品となりますのでご了承ください。ある意味、読者を選ぶ作風です。
青井先生の作品をまだ未読の方は、ぜひ一つ読んでみて欲しいです。
世界観が気に入ったら、おそらく青井先生のどの作品にも目を通したくなることでしょう。
ちなみに私は植物図には興味がありますが、より海洋生物や鉱石に惹かれるので、鉱石を題材にした今回の『百年結晶目録』は自分の好みにぴったりとあう作品でした。
カップリング
学者・ベント
砂漠の金剛石・イーリス
あらすじ
学者・ベントは研究のために鉱石などを収集したり売ったりして暮らしていた。
ある日洞窟に石を収集に行くと、目の色が虹色の弱った男の子がいた。鉱石を食べる人の形をした種族のイーリスという男の子。
匂いによって鉱床(こうしょう)を探すことが出来るイーリスを誘い、ベントは一緒に海の方へ向かうことにする。
人と関わったことがなかったイーリスは、人間との関わりを学び、そしてベントは珍しい種族であるイーリスの観察を続けるーーー。
青井秋先生『百年結晶目録』:ネタバレ!?感想・レビュー
作品の魅力1:世界観
青井先生の作品の魅力は、世界観にあります。この世界観は、イラストレーション、モノローグ含めたストーリー、そして先生が創造するモチーフから成り立っています。
イラストレーションは、人物よりも植物やこの作品にも登場する鉱石などのモチーフがすばらしいです。
ボタニカルアートのような技法で描かれておりますが、申し訳ありませんが当方知識がないため、植物学にも通用するものなのかどうかはわかりません。
この作品の各エピソードの表紙には鉱石のイラストが施されていますが、それらは架空のものらしいですが、それぞれにモデルとなった石もあるようです。
鉱物や石が好きな方には、ピンとくるものがあるかもしれませんね。
ストーリーは、ファンタジーらしく、主人公のイーリスは人間の姿をした鉱石種族。鉱石を食べて生きる特殊な種族であり、石を食べるということから、彼らの歯はダイヤモンドよりも硬く、貴重だという設定になっています。結構可愛らしいお話です。
そして、偶然知り合った学者のベントですが、実は彼はイーリスのような砂漠の金剛石といわれていた種族を研究していた学者で、彼らが巡り合ったのもある意味運命だった。
その他の登場人物もちらほらとは登場しますが、大きな事件も起こらずに物語は淡々と進んでいきます。
作中の人物は、少し表情が硬く、お話も大きな事件もなくフラットに進みます。
「漫画」としてよむと、表情やお話の盛り上がりなどに物足りなさを感じてしまうのは否めません。
フィールドワーク、収集の面白さはセリフなどから伝わってはきますが、実際に私もやってみたいと心動かされるまでは物語があっさりしていて入り込めないのが残念です。
人物の描写も、たとえファンタジーでもより人間らしさのある関係性が表現されていたら、もう少しのめり込めるかもしれません。が、非常にあっさりした表現で、二人の心のつながりにグッとくるまでは行きませんでした。
つまり、物語の描き方がやはりお伽噺のようなんです。きれいで、大人の絵本を読んでいるような不可思議な気持ちになるんですが、だからこそ距離感があります。
第三者として創作アートを楽しんでいる自分がいます。
いわゆる「共感」がないので、綺麗なアートではありますが、心揺さぶられるものではない。
だからこそ、青井先生の作品の魅力はこの『世界観』だと思っています。
作品の魅力2:鉱石などのモチーフ
今回のお話は、鉱石のお話です。表紙からもわかりますが、青井先生が得意な鉱石や植物モチーフの素敵なイラストが施されています。
あとがきにも書かれておりましたが、石は架空ということです。
そもそも石に詳しくない自分としては、架空かどうかもわかりませんでしたが(お話はファンタジーなのは明確ですが w)ダイヤモンドよりも硬いとされるイーリスの歯が印象的です。
エピソードごとの表紙には装飾フレームが描かれており、こちらもすべて先生の創造物です。
本の装丁では、ページ番号の横にもさりげなく飾られる鉱石のモチーフが可愛らしく、ページの隅々まで楽しめます。
時間が許す限り、隅々まで観察して、面白さを見つけ出すのが読み手の楽しみ方かもしれません。
青井先生が山林で収集し、植物や鉱石を観察・記録するプロセスを漫画に落とし込んでいますが、そのプロセスを少しでも私はこの漫画から学びたいものです。
作品の魅力3:フィリア
「この作品はBLなのか」問題。w
この疑問は、直接的な描写が皆無な中性的なBL作品を読むと、よく思います。
この作品は、学者ベントとイーリスのお話ですが、二人の間に何らかの「情」は生じます。が、決してそれははっきりとした愛情、ましてや欲情ではない。かといって、博愛とも違う気がします。
ジャンルの定義としては、男性同士のお話なのでBLというカテゴリーにはあるのですが、BLはBoys Love。男性たちが恋をする、というのが基本的な定義だと私は思っています。
なので、この作品に広がる二人のつながりをBLとカテゴライズしたいかどうかといえば、それはちょっと違うかな。
そもそも青井先生が描く世界はファンタジーで、人物も見た目の性別はあるにせよ、表現されている人物像には動物的な性別は感じられず、非常に中性的に描かれています。性別による物理的、生物学的な違いを排除した、心のつながりがテーマです。
青井先生が描かれる作品は、心が少し熱くなるのだけど決してエロスではない感情、友情愛(フィリア)のようなものがベースにあるのではと思います。
青井先生や博物学の観点からは、つまりは世界はすべてつながっているということ。
循環する物質のうちの一つだからな
動植物を食べ、やがて死に、水や土に還り、また長い年月をかけて循環する
エロスのようなimpulseな感情よりも、人間の本質にあるアガペーやフィリアのような情がここにあります。
この作品は、BLとカテゴライズする必要はなく、また、自然学に興味を持ってもらうためにも、ぜひ多くの人に読んでほしいものです。
青井秋先生『百年結晶目録』を今すぐ読む方法
青井秋先生『百年結晶目録』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
私がよく利用する電子書籍サイトは「ebook japan」かレンタル本が豊富な「
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どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。
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まとめ
今回は、青井秋先生の『百年結晶目録』をご紹介しました。学者・ベントとファンタジー住民・イーリスの旅物語。ファンタジーの旅ではありますが、鉱物や植物、歴史を学ぶのも終わりなき旅ですね。
歴史は繰り返されるというのも、全ては循環する自然の摂理なのでしょう。素敵な世界観、そして気づきに感謝です。
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