青井秋先生『爪先に光路図』:仄かな恋心が漂う大人の寓話

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こんにちは。

今回は、青井秋先生の『爪先に光路図』をご紹介します。菌類や鉱物、植物などのイラストレーションが素敵な青井先生が、仄かにBLを漂わせる作品を楽しませてくれます。

作品データ

爪先に光路図

青井秋 Aki Aoi

刊行年月:2012.06.09

出版社:大洋図書(hertZ series)

どんな作品?

青井秋先生の初コミックス。2012年の作品です。

独特の世界観があります。

魅力は、なんといっても学術画のようなイラストです。

植物はもちろん、菌類や鉱物などを、ボタニカルアートのような学術画のようなイラストで描かれる方で、そこに大人のお伽噺のようなファンタジーストーリーが描かれます。

「漫画」としてよりも、この世界観そのものを楽しむといった方がいいかと思います。

表作を含めた3つのお話、そして描き下ろし収録されています。

装丁にも拘っており、ページ数の部分に植物のモチーフが使われていたり、紙質も良いですね。(今はこれくらいのディテールに拘ろうものなら、本の値段はかなり高くなるかと……。)

せっかくなので、お話ごとにご紹介します。

青井秋先生『爪先に光路図』のネタバレ!?感想・レビュー

ストーリー1:爪先に光路図(前・中・後篇)

ストーリー2:残灯

カップリング

室田:菌類学者

岩井:大学生

感想

BL雑誌『HertZ』band.45、47、48 (2011-2012)に掲載されたお話。『残灯』はその後の二人を描いた描き下ろしです。

菌類学者の室田と、大学生の岩井が山にフィールドワークに行き、そこで今まで知らなかったことを知識を得ていく過程で室田に惹かれていく恋のお話。

派手なストーリーはありません。

ただただ、青井先生の世界観を楽しむ、大人の絵本のような作品です。

青井先生の特徴は、なんと言ってもイラストと世界観です。

博物学かなにかを学ばれたのでしょうか、青井先生が描かれる植物のモチーフは、植物図に近いものがあり(しっかりとしたボタニカルアートかどうかは、当方知識がないためにわかり兼ねますが)植物に限らず、菌類や鉱物、海洋生物にまで至ります。

この物語でも、室田が菌類学者ということもあり、きのこを筆頭に山林や星空など、自然が広がります。世界観は素敵なのだけど、ちょっと残念なのは、画面が繊細すぎることでしょうか。紙面上での表現方法をより効果的にできないものだろうか。

冒頭でも伝えましたが、漫画というよりも、作品全体に広がる世界観が魅力的です。

この世界観をもっと楽しむには、B6サイズのコミックよりも、例えばワイド版にするとか、フルカラーもいいかも。もやは絵本にしていてはいかがでしょうか w

山林のシーンは少し霧がかった感じもあり、素敵に感じたましたが、星空は残念ながら魅力が伝わってきませんでした。

お話に派手さがないため、漫画として読むと、もう一つ盛り上がりがほしいところ。

強弱をつけるためにも、やはりイラストにもメリハリがあると、先生の細かな描写がより鮮明に浮き立つと思うのですが、そう思うのは私だけでしょうか。

山林に潜む数知れない植物の魅力やミステリアスな存在を、青井先生がモノローグで語ってくれています。

先生ご自身もそうやって植物にのめり込んでいったのか、そんな生物の不可思議なところを表現したかったのでしょうか。

物語の後半には、詩的モノローグによるファンタジーが並行して表現されています。お伽噺(ファンタジー)色が強いため、絵本を読んでいる感覚。

だから、肝心の漫画の部分は大きな事件は起こらないけれど、ファンタジーな気持ちで心が満たされます。

強いメッセージや哲学は感じなかった。でも、大人のお伽噺がそこにあります。

好き嫌いは分かれそうですが、私は、こういう作品は好きです。

ストーリー3:さかなの体温

ストーリー4:午前0時の回遊

カップリング

誠司(広隆の友達。なつっこい魚の持ち主)

広隆(人付き合いが少し苦手。寝ている人の周りに魚が見える。)

感想

『HertZ』band.43(2011)に掲載されたお話。午前0時〜は描き下ろし。

短編ですが、とても綺麗なお話で、海洋生物が大好きな自分は、このお話が一番のお気に入り。

これこそまさにファンタジーで、主人公の広隆は、眠りにつく人の周りに魚が見える、という不可思議なキャラ設定。

でもこれが、とても綺麗なんです。画力がなければ表現できない世界観です。

そして友人の誠司が居眠りをして放たれる魚は一番綺麗で、人懐っこく広隆に絡んでくる。

透明感ある世界観でしたが、ふとしたことから自分(広隆)の魚が誠司の中に入り込んでしまいます。なんとかして自分の魚を取り戻さねば、とあたふたする広隆が可愛らしい w

リアル?!な物語のストーリーと詩的モノローグ、そして透明感のあるイラストと、お話が数層に描かれています。

先生が思い描くファンタジーの中で起こるボーイズラブ。素敵です。

ただ、描き下ろしの『午前0時の回遊』は、嫌いではないですが、あまりにも何も起こらない w

日常の一部を切り取るような作風は嫌いではないのだけど、「味」がほしいわけで、この2ページの描き下ろしは少しばかり物足りなさは感じました。

ストーリー5:八月、夏の底

ストーリー6:夏来るらし

カップリング

春彦(祖父へ対する後悔の気持ちが残る)

こう(祖父へ対する感謝の気持ちが残る)

感想

『HertZ』band.44(2011)掲載の短編。『夏来るらし』は描き下ろしです。

短編ながらも、とても綺麗なお話です。

急に祖父が亡くなり、お葬式で田舎へ向かうことに。

そこに現れた少年。親戚なのか?祖父の家で時間を過ごす春彦の前に再び現れた「こう」と名乗る青年は、どうやら祖父の知人でもあったらしく、こうから祖父の様子を聞いていく。

ファンタジーなお話ではありますが、根底にあるのは、お互いが持つ祖父への気持ち。

春彦は、疎遠になってしまっていた祖父が一人で亡くなって寂しかったのではないか、自分がもっと会いにくればよかったのでは、と後悔の気持ちがあります。

こうは、弱っていた自分を助けてくれた春彦の祖父に感謝の気持ちがある。

お互い持っているおじいちゃんへの気持ちをどうやって表現していくかが見どころです。

青井秋先生の世界観

全体を通して、ジャンル的には確かにBLではあるのですが、仄かな恋心、または友情愛(フィリア)のような愛情が漂っています。

たとえ恋心があっても、湧き出るようなエロスはそこにありません。中性的にも感じるなんとも言えない愛情と世界観が、青井先生の作品の最大の魅力だと思います。

この作品には、自然の美、自然と人間との根底の繋がり、愛情、そしてたまに見え隠れする哲学のようなものが、詩的なモノローグによって表現されています。

この作品を読んで、改めてBLという自由なジャンルを堪能できたなと思います。

青井秋先生『爪先に光路図』を今すぐ読む方法

青井秋先生『爪先に光路図』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

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まとめ

いかがでしたか。今回は、青井秋先生の『爪先に光路図』をご紹介しました。

独特な世界観の漂う作品ですので、未読の方はぜひ一度読まれてみてはいかがでしょうか。

自然、そして自然や人間とのつながり、または絵本のような世界が好きな方にもおすすめの作風です。

とっても静かな作品ですので、激しい葛藤や萌えを求める読者向けではありませんが、夜寝る前に何か優しい物語を読みたいな、という時にぴったりの作品かなと思います。

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