薄井いろは先生『アンダーマイスキン』:外面と内面の歪みと交差

薄井いろは
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こんにちは。

今回は、薄井いろは先生の『アンダーマイスキン』をご紹介します。

先生の単行本、2024年までにリリースされている作品はこれですべて目を通しました。どれも素晴らしく、今回の作品も主人公二人の間で素晴らしいエロスが繰り広げられておりました。

作品データ

アンダーマイスキン
Under My Skin

薄井いろは Iroha Usui

刊行年月:2020年11月13日

出版社:竹書房(moment)

どんな作品?

薄井いろは先生の3冊目のコミックス。

この感想を書いている段階で先生の全てのコミックスを拝読しましたが、どれもこれも主人公2人の親密度の描写が素晴らしい!

この1冊も例外ではありません。

2020年4月から2020年10月までにオンライン配信された全6話がまとまった1巻完結作品で、描き下ろしも収録されています。

実は私がいろは先生の存在に気づいたのは、この『アンダーマイスキン』の表紙です。

頬骨のラインと細い目が特徴的のこの表紙を見て、先生の絵柄が脳裏に焼きついたのがきっかけです。

もちろん、絵には好みがあるとは思いますが、もしあなたがまだ先生の作品を未読ならば、まずは数冊読んでみて欲しい。

キャラ、世界観、何かに惹かれるのではないかなぁと思います。

コンプレックスのあるエリートサラリーマンの久遠(くどう)は、たまたま参加した合コンで、大工である佐藤に出会います。

いままで本気の恋愛をしたことがなかった久遠は、佐藤のアプローチに身を委ね、徐々に気持ちが揺らぎ始め、どんどん本気になっていくお話。

お互いの視点から物語が描かれているのも特徴で、気持ちに戸惑う久遠と、本気でアプローチをかける佐藤の駆け引きが面白い。

ところで、タイトルの under my skin には、いくつかの意味があります。

「〜にイライラする」という意味でも使われますし、「〜に魅了される」という意味もあります。

まさに、久遠が佐藤をどこか気に食わずイライラしながらも、徐々に惹かれていく様子がタイトルにも表れていますね。

また、冒頭では久遠が全く自分の性的指向に気付いていないところも興味深いです。

大きな事件がなく、対話が続くため、あっさりと終わってしまう感じがする場合は、ゆっくり丁寧に何度も読んで、二人(特に久遠)の内面を辿ると、かなり練られたプロットだということに気づくと思います。

久遠の学生時代のトラウマが彼の二面性を作っており、そこから作りあげられた劣等感、そして彼自身の性的指向の葛藤などが、ほんのり数層に重なって描かれています。

エロスの描写は、感情高揚の表現が非常にリアルで、いろは先生の観察ポイントがいい刺激になります。

行為そのものだけではなく、その奥にある感情の昂りからエロスが感じられ、それこそBLの真髄ではないでしょうか。

カップリング

攻め:佐藤蓮(大工。楽しむために気軽に参加した合コンで久遠に出会い、惹かれた)

受け:久遠武(本当の自分をひたすら隠しているが、誰かに暴かれたい願望をも持つ)

あらすじ

エリートサラリーマンの久遠は、たまたま同僚に誘われた合コンに参加した。そこで知り合った大工の佐藤という男性と、ホテルで一夜を過ごすことになる。

自分の想いをストレートに表現してくる佐藤によって、久遠は、自分の隠そうとしていた感情をことごとく抑えられなくなり、また内面を暴かれたいという欲望にもかられ、徐々に佐藤との関係がヒートアップしていく。

薄井いろは先生『アンダーマイスキン』のみどころ

作品の魅力1:対話

お話は、ほとんどがベッドルームでの二人の対話です。直接的な行為中の対話はもちろんですが、そこに至るまでの心理描写がモノローグや過去のトラウマを介して表現されています。

大きなストーリーがあるわけではなく、とにかく二人の心理描写1点集中。ただ、1巻完結でここまで深く二人の関係性を描いた作品、さらに肌を重ねる描写も濃厚な作品はなかなか読んだことがありません。

個人的にBLで読みたい心理描写、そしてメタファーとしても使われるエロスのどちらも濃厚に描かれており、私の探究心が刺激されました。

この作品は、いろは先生の3冊目の単行本。

『俺しか知らないカラダ』『ハダカよりも奥深く』に続くコミックスです。前2作を読むと、カプの片方がかなり物静かなタイプで、語りはほとんど一人の視点が多かった。

しかしこの作品は、受けである久遠の視点がメインではあるものの、攻めの佐藤の視点でも語られている。そして視点はエピソードごとに変わるのではなく、同じエピソード内で二人のモノローグが繰り広げられるのが新鮮です。

二人の性格は対比しており、だからこそ、それぞれの目線で語られるのが面白く、駆け引きが汲み取れます。仕掛ける佐藤と迫られる久遠の気持ちのバランス、熱量、そしてどうやって交差していくのかがみどころです。

作品の魅力2:久遠

久遠武はエリートサラリーマン。冒頭に登場する合コンシーンでも、女性から人気のように描かれて、スタートします。

しかし実は、久遠は劣等感の塊。武装した外側とは裏腹に、心は劣等感に支配された自信のない人間という二面性を持っています。その劣等感は家庭環境から来ているようです。

以下、少しネタバレになりますが・・・

久遠が高2の時、父親の浮気がバレたこともあり、両親は言い争いを始める。また武への愛情はそれ以前からもあまりなかったようで、家族のはずの3人は、全くの他人のように暮らす日々。

そんな思春期を過ごした久遠は、欲情・欲望は悪いものだ、というネガティブなイメージをもってしまった。思春期の彼の中にあった欲望は、決して表に出してはいけないと、感情に蓋をした。

その欲望なるものには、自分がゲイなのではないかという葛藤よりも、「抱かれたい」という気持ちがあったようにも読み取れます。

久遠本人は自分の性癖にまったく気づいていないようですが、佐藤はすぐにそれに気づきます。

また、愛情を感じたことがなく、彼女ともうまくいかず、両親からも愛されていないと感じていた久遠は、そこに自分の弱さ、情けなさを感じている。

そして、それが彼の劣等感となり、それを隠すように、仕事などで達成感を求めることにより、自分の弱さをひた隠しにしてきます。

そこで生じていったのが、外面と内面の歪み。

本当の自分をさらけ出せず、人にどう見られているかを気にしすぎたがあまり、自分の内面に自信が持てなくなっていった。

そんな時、自分の内面を佐藤にみすかされ、たじろぎながらも、弱い自分の内面を見てほしい、暴いてほしいという矛盾した欲求が生じてきます。本当の自分を解放したいのでしょう。

作中で、久遠は「たばこを吸うのは自分を苦しめるためだったからだ」と佐藤に話します。自分の内側に潜む感情は、悪いものに違いない。罪悪感から彼なりに自分へ罰を与えたのだ、と。

ピアスやタトゥーなども使われていますが、これは内面の自分を見て欲しい、誰かに気づいて欲しいというサインだったのだというのもわかってきます。

コミックのあらすじには「大人の初恋」と書かれていますが、恋愛だけでなく、誰かから愛されたい、愛を感じたいという久遠の人間愛の切望が描かれているようにも感じます。

ここでは久遠についての考察だけ記しますが、この1冊に秘められている久遠、そして佐藤それぞれの心情は、まだまだいろんな角度から考察のしがいがあります。

作品の魅力3:Intimacy

薄井いろは先生の魅力、それはエロスです。

デビュー作からこの作品も含め、全ての作品に言えることは、エロス(行為の先にある愛情、パッション)があるということ。そして、エロティシズム(行為そのものの美)もそこに存在します。

手を重ねるだけでも、そこに色気があるんです。

残念ながら、私にはいろは先生の絵柄からは「質感」はまだ読み取れませんが、「熱」や「重み」は感じ取られ、そこにリアリティが存在します。

この1冊には6話収録されていますが、ほぼ毎回あるエロティックなシーンから、二人の親密度が高まっていきます。久遠と佐藤の距離の縮め方です。

久遠が内にひた隠しにしてきた欲望。抱かれたいという感情、もしくは性的な欲求自体、両親のいざこざが原因で「悪いもの」と感じている。だからこそ、隠さねばいけない。

ずっとそうしてきた久遠でしたが、合コンで出会った佐藤にそれを見破られてしまった。久遠が意識的、もしくは無意識に放っていたサインをあっさりと汲み取った佐藤は、じりじりと久遠を攻め、彼の内へと入り込んできます。

タイトルのUnder my skinのごとく、内面の久遠を読者の私たちにも見せてくれます。ちなみにタイトルは「My」ですから、やはりメインは久遠になっていますね。

さらに言えば、いろは先生が表現するエロティックなシーンのあれこれが、とんでもなく魅力的で、それはやはり口元、そして手を意識した構図だからでは?と思います。

スッとした細目、そして妙にリアリティある頬骨と、やはり先生の画力ありきの絡みシーンは、いやらしさ(エロ)ではなく、エロティシズム (美)さえ感じるもの。

きっと先生は、人間の心情や行動そのものをしっかり観察、体験されたのではないかなと思います。

……まぁ勝手な私の意見ですが。w

ということで、オススメポイントはたくさんあるのですが、ひとつだけ気になる点があります。

感想:気になった点:二人だけの世界

このお話、いわゆるドラマチックなストーリーはありません。w

ただただ、二人の心情の移り変わりだけを描いた作品です。

お仕事シーンもほぼないです。

でも、この奥深い表現にお仕事シーンは必要ありません。ただただ二人の親密度を覗き見したいんです。

閉ざされた世界、それは閉ざされた久遠の心を反映したようなもの。それがゆっくりと解放されていき、久遠の手が佐藤にゆっくりと触れていく過程が……もうspeechless!

しっかり、がっしりと攻めてくる佐藤の手とは反対に、触れてはいけないのに抑えられなくなり、佐藤の腕に触れる久遠の手が、なんとも愛らしい。

怯みながらも相手との距離を確認しながら、久遠の手は佐藤の胸元、そして自らイニシアティブをとっていく。

佐藤が久遠の内面に入り込んできたのか、それとも久遠が自らを解放したのか、どちらにしても、二人の距離感が近づいていく…んですが、いろは先生の作品の特徴ともいえる、ちょっぴりそっけないエンディング。w

今回もそれで締め括られています。

漫画の終わりにしてはとても静かなエンディングだと思いませんか?こういったラストも、どこかアダルトな感じがします。w

 

そういえば、先生のデビュー作品『ハダカより奥深く』も親密な作品でした。

薄井いろは先生『ハダカより奥深く』はアダルトな1巻完結の癒し本
薄井いろは先生の『ハダカより奥深く』は親密な二人の関係性がただただ描かれた1冊。大きな事件はありませんが、二人の心の距離感が近づいていく感じと作品全体にアダルティな空気感が漂っている、静かなエロスです。

薄井いろは先生の現在

薄井いろは先生は、2017年あたりからBL作品を発表してきた先生です。

X(旧Twitter)でもたまに投稿がありましたが、2023年1月より新しい作品の発表が停止しました。

当時連載していたのは『キスとスキのあいだ』で、デジタルにほぼ定期的に連載されていましたが、3話発表の後で更新が止まっております。(このお話も好きなんです〜)

勝手ながら、当初はもしかして体調でも崩されたのだろうかと心配していましたが、『僕は君だけのもの【シーモア限定BOOK】 』の描き下ろしが2023年12月にリリース。

創作活動は続けていらっしゃるようです。

その後は、今のところニュースがありません。

創作活動はまだ続けていらっしゃるようなので、ひたすらニュースを待ちたいと思います。とにかく、お元気でいらっしゃれば、何よりです。

薄井いろは先生『アンダーマイスキン』を今すぐ読む方法

薄井いろは先生『アンダーマイスキン』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。

私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。

どちらのサイトでもすぐにサンプルを読むことができます。

コミックシーモア:クーポンが魅力。BLに関しては、修正が少し甘めなものもあります。

Renta!レンタ:レンタルやスタンプ機能などがあり。そしてBLCDや、他では扱っていない短編の電子も独占購入が可能。この作品もレンタルできます。

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まとめ

今回は、薄井いろは先生の3冊目のコミックス『アンダーマイスキン』をご紹介しました。大好きな先生の一人です。

1巻完結で、ちょっとアダルトな作品といえば、いろは先生。

未読の方は、ぜひとも読んでみて下さい。きっと私も読み取れていない部分が多いと思うので、感想や皆様の考察ポイントなど教えていただけたら幸いです。

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