今回は、大人気漫画家、オノナツメ先生がBasso名義で描いているメンズラブ(BL)作品、『クマとインテリ』の個別エピを考察していきます。
アーティスティックなイラストが魅力的なBasso先生。オノナツメ 名義の作品ももちろん大好きですが、今回basso名義の作品を読んで、やっぱりこの先生の描く世界観や中年男性、魅力的だなぁと再認識。テーマは「イタリア男、スーツ、メガネ」。舞台はイタリア。実際には初老ともいえる政治家を中心に、年齢層がちょっと高めです。メガネも、老眼鏡です〜。はは。それぞれの読者の年齢に刺さる「ツボ」があるので、どなたでも楽しんで読める作品。
作品データ
クマとインテリ
basso (オノナツメ)
刊行年月:2005.06.10
出版社:茜新社(Edge Comix)
basso先生『クマとインテリ』ネタバレ注意!?感想・レビュー
1. コンテ con te
全てはここから始まります。
リストランテで働いているネーリは、とあるインテリ親父から夜のお誘いにウキウキ。このインテリ紳士、実は前首相で現党総裁の国会議員とかなりの大物。インテリ紳士、そして眼鏡男にとっても弱いネーリはこのインテリ紳士・カッラーロとの一夜を楽しみます。
しかしこのネーリ、実はカッラーロがディスる三流政治家・ドルチのセフ○なんですよ〜。間接的にカッローラのディスりがドルチへ伝わり、またカッローラの性癖の秘密もドルチに握られてしまう。こういった微妙な関係は、政治家にとっては命取りにさえなりますね。
ネーリは強い主張のない若者なのだけど、それももしかしたらイタリアの当時の現状を描いていたのかも。
2. クマとインテリ orso e intellettuale
前首相であり、現国会議員であるファウスト・カッラーロ。彼が主人公です。隠れゲイで、そのことがネーリを介してドルチにバレてしまったけど、世間的にはまだバレていない。
秘書たちを冷や冷やさせながら遊んでいる初老(笑)なのだけど、そんなカッラーロは、奥さん、娘とバカンスに出かけます。そしてバカンス先で一人の「クマ系」男児、ブルーノと出会う。
ブルーノは自然の写真を撮っているカメラマンのようで、「自然の中」へ車を走らせます。時間があったカッラーロは一緒についていきます。この時の表現がすっごくいい!ファウストの車の窓から景色を見上げる時の顔、そしてそれを横目に運転するブルーノ。風景に感動して自分で写真を撮りたいと言い出すファウストが、普段は感情を抑圧しながらも、実は奔放的な彼の性格が表れています。
お話そのものは大きなドラマチックな展開はないのだけど、やはりbasso先生の絵、表情が大人の感情を穏やかに表現しています。ほどよい熱情はあるのだけど、第三者として読ませてくれる距離感。この先生の特徴です。
3. マニフェスト manifesto
名前はでてきませんが(BLっぽいですね〜 w)ファウストの下っ端秘書。仕事に追われ、週末は同居中の父親とビデオ鑑賞をして過ごす。高校以来、恋さえしていない。心が少し満たされない彼が、ある日ファウストのポスターにいたずら書きをしている男性と出会います。
この秘書。忙しさにかまけて、自分の性癖さえも気づかなかった男の子。
何度か男性を見かけて、少しずつ気になっていく。恋の経験が少ないあまり、知り合った男性に対する初めてのモヤモヤした感情にどう対応していいかわからず。しばらく見かけなかった男性と再会した際には、すごく動揺してしまいます。
こういう気持ち、懐かしいですね。これって男女のお話で読むと「この気持ち、わかる」ってなるんですが、BLで読むと全く客観的に読んでいる自分に時々ハッとします。
恋に落ちる瞬間。すごく単純、ですよね。
4. ジェラートにまつわる三つの短編
タイトル通り、ジェラートに関する数ページの短編が3つ。
さらっと読んでもいいのですが、実はどのお話もキャラが繋がっています。
(1)ジェラート談義 discorso del gelato
3人の男友達が、ジェラートについてあーだこーだ、と。
大好きなマルチェッロのジェラテリーアがおやすみということで、話が進みます。大きなお話ではないのだけど、このキャラたちは後に再登場するので、序章とでもいいましょうか…。
ところで私は北海道のソフトクリームが一番好きなんだけど、イタリアの本場のジェラートって、それよりおいしいだろうか。
(2)追われる男 uomo che e stato inseguito
3つ目のエピで登場した秘書のお話。どうやらゲイであることに問題があるようです。ジェラートを通じて追われる男が追う男に。
(3)昼下がりの部屋 la camera del promo pomeriggio
二人の男たち。
愛し合う男たち。
ジェラートでクールダウンする男たち。
ジェラートを介してマルチェッロの愛情を感じる男たち。
グッとくるお話です。
5. シーガロ sigaro
4ページの小品。4ページで描けるのってすごいな… お話も楽しめましたが、「sigaro」という単語を覚えました。w
6. 金持ちと修理工 ricco e riparatore
この1冊で、実は個人的にこの作品が一番好き。
「ricco」はお金持ちの意味。
あ、このお話は書き下ろしです。
あとがきによると、NYのお話らしいですね。だとすると、こういうことって結構アメリカではあります。アメリカにはチップ文化がありますし、どんな仕事でもがんばりを見ていてくれる人が必ずいる、不思議な国。感謝をはっきり態度で示してくれる国でした。
自分の経験もあってか、妙に共感してしまいました。w
7. 黒山さんのニオイ
急に日本〜!w
『黒山眼鏡店 2004』という同人誌に掲載された作品。
同人誌は詳しくないので詳細がわかりませんが、このお話は可愛らしお話ですね。
しかし日本が舞台の作品は初めて読んだので、「焼肉」の文字がなんとも… この先生の文字とか、実はいしいひさいち先生を思い出すんですよ。ジャンルは全然違うのに。
興奮する面白さというよりも、世界観や作品全体に漂う雰囲気をじっくりと堪能する。そんな感じです。
basso先生『クマとインテリ』を今すぐ読む方法
basso先生『クマとインテリ』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
最初の数ページをサンプルで今すぐ読むことができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアは頻繁にクーポン割引ありで、オススメです。
Renta!は、レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。
ところでこの作品、中古屋さんでもたまに見かけます。私のように紙本が好きな方は、ぜひお近くの中古屋さんでもチェックしてみてください。basso先生の絵はアートなので、絵を練習したり、部屋のインテリアなどに使ったりすることもできますよ。
まとめ
今回はbasso先生の『クマとインテリ』の勝手な個人的な感想を語らせていただきました。
大人の漫画なので、手に汗握る興奮!面白さ!という作風ではありません。が、普段なかなか覗けない政界を舞台にしたお話で、個人的にはそこがツボでした。世界のどこかで起こっていそうな日常の瞬間。あなたもぜひ覗いてみてください。
コメント