作品データ
恋の話がしたい
ヤマシタトモコ
刊行年月:2008.12.15
出版社:東京漫画社
どんな作品?
ヤマシタトモコ先生は「さんかく窓の外側は夜」で知った。絵柄も人間味のあるそれだし、かつ、かっこいい。たまたま中古屋さんへ足を運んだ時にこの作品を見つけたんです。
こちらは連作集。
タイトルも素敵だし、なんといっても英題に惚れた。
英題は「I want to talk about you」。ジャズのスタンダード曲。このタイトルを見た瞬間、頭の中にはコルトレーンの曲が流れました。☺️
ヤマシタトモコ先生の『恋の話がした』の見どころ
短編、連作って読みやすいですね。最近ではBLでも5巻以上のシリーズ物もあるようですが、やはり1巻完結が読みやすく、また先生のクセや雰囲気が自分の好みと合うかどうかを確認するためにも、短編が好きな私…
作品の魅力1:dialogueシリーズ、そして短編や描き下ろしを収録した1冊
連作集のようなものです。dialogueシリーズは4話続いているので、これがメイン。
基本的に、どの作品もあまり動きがありません。室内での会話、とでもいいましょうか。そして会話も飾りのない、ポエティックではないもので、妙に生々しい。ヤマシタ先生の作品はさんかく・・・以外読んだことがないので、比較できませんが、このキャラ設定はすごくリアリティがある。絵柄も、妙になまなましい表情があったりで、とにかく彼らの日常を覗かせていただいている感じ。
作品の魅力2:本当に、日常の一コマ
あまり、動きがない。dialogueは4話あるので、カフェに行ったりお仕事したりが若干あるのだけど、1冊を読んだ感じでは、瞬間の会話が切り取られているので、室内での会話が多い、といった感じです。(実際読み返してみたら、結構外に出たりしてるのだけど・・・w)それを退屈に思う方もいるかもしれない。でも自分は、これこそがBLの面白さ、というか・・・。学校で友達とわいわい・・・ではなく、寝室での会話、とか、そういうリアリティあるフィクションが好み。なので、自分にはすごく楽しめたし、描く方も難しいのかな・・・なんて思いました。
作品の魅力3:激しい絡みなし
これを魅力と取るかどうかは、BLに何を求めているかによりますが、BL初心者の方にも読みやすい、ということです。BLをやらしいジャンルと勘違いされていらっしゃる方にはぜひ読んでほしい。
ネタバレ!?レビュー・感想
dialogue。少し動きがあって、一緒に食事したり、出かけたりしているのだけど、やはり会話中心のお話。こういう心情に特化したのって、大好きです。
冒頭で、ゲイの美成(みなり)がノンケの真川と両思いになっちゃったっていうところからスタートする。
おめでたい話なのに、美成は初めての恋愛に動揺する。ランチを食べに行った二人。他愛もない会話をしているだけなのにどうしていいかわからなくなる美成。いきなり逃げ出してしまう。このシーンがすごくいい。
美成は、自分がゲイだということに気づくまで、時間があったようですね。何度か女性と付き合ったみたいですし。ゲイのコミュニティにも馴染めない彼にとって、誰かが自分を好きになってくれる、両思いになるなどとは想像したこともないことで・・・。実際に想いを寄せられ、それにどう対応していいかわからず、涙さえこみ上げてくる。人に打ち明けることもできなかった自分の状況を、真川にも当てはめ、申し訳なくさえ感じてしまうのでともす。
ベッドに行った時も、
「おまえから俺に触らない。見ない。嫌われたくないから。」
って、真川の目を押さえつけるシーンとか、妙にリアルなんですよ。
こういう、人間味に溢れたキャラ設定に惹かれました。
飾ってないし、美成は暗いし。w 目つきもちょっと悪い感じ。
このdialogue以外にも、短編で「Re: hello」も切ないお話です。
全体的にBLなんだけれども、性別に限らず、人に恋すること、想うことの切なさが表現されたものが多く、どなたでも楽しめると思う。絵柄は男くささがあって、やっぱりリアル。少女漫画のようにキラキラ輝いてるわけでもなく、イケメンでもない。多分、そういうフィクション系に疲れた人にもいいかもしれない。
ヤマシタトモコ先生の『恋の話がしたい』を今すぐ読む方法
ヤマシタトモコ先生の『恋の話がしたい』を今すぐ読む方法は、電子書籍です。
最初の数ページをサンプルで今すぐ読むことができます。
私がよく利用する電子書籍サイトは「コミックシーモア」かレンタル本が豊富な「Renta!レンタ」です。(どちらのサイトにもサンプルがあります。)どちらのサイトもBL作品の品揃えがよく、ほとんどの作品はサンプル立ち読みができます。また、無料で読めるBL作品がたくさんあります。
コミックシーモアは頻繁にクーポン割引があり、また同人誌や特典冊子の作品もたまに読めたりします。
Renta!は、レビューを書くとスタンプがもらえる機能などあり。レンタルも豊富です。
まとめ
漫画はエンタメ、萌えがほしい。そういう作品ではないです。
もっと(いい意味で)生活感のあるお話。大人向けかもしれません。
ちなみに、この作品を読んで思い出したのが、ちょっと古いが「おとなのけんか」という映画。ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレットなどが出演していました。豪華キャストが部屋でずーっと会話してるだけっていう映画。あまり動きがなかったので・・・。笑
会話で惹きつける作品として、ぜひ読んでみてください。
p.s. 読む際には、ぜひジョンコルトレーンの「I want to talk about you」と共に♪
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